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God Bless You !!  作者: 灰色狼
第一章 嵐の港町 ~ストームポート~
15/90

13:ハーバーの日常 ≪デイリーライフ≫

25/02/18 誤字脱字の修正、および表現の一部変更を行いました。



 ストームポートに来てから、何日目だろう。

 忘れるほどの日数は経っていないはずだが、曖昧になってきた。

 僕はよく周囲の人間(ヒューマン)から言われる。『時間の感覚が雑だ』と。あるドワーフに言わせれば『ボケ』らしい。

 エルフに言わせれば『せっかち』だそうだ。ああ、『せっかち』は人間に言われることもある。

 人口比率で言えば圧倒的に人間が多い世界で、実際に人間の多い地域で育った僕は変わり者の自覚はある。

 窓を開け、白み始める東の空を眺めながら、海風を浴びる。

 窓際に跪いて手を組み、頭を垂れる。

 祈りを捧げよう。今日がまた始まる。


 いつものように朝食を食べ、宿を出ようとしたときに、おかみさんに声をかけられた。


「明日の晩までの約束だけど、どうする、追加で部屋を押さえるかい?」


 ああ、そうだったか。と思い少しだけ考える。

 レイアさんたちはまだ来てないし、数日とは言っていたけども…そこで考えるのをやめて、


「ごめんなさい、今の段階では予定が立たないもので。当日に再度お願いすることになると思います」


「そうかい、わかったよ。気を付けて行っておいで」


「いってきます」


 宿を出て薬類を多めに仕入れると、それを担いでスラムに向かう。

 桟橋付近ではすっかり顔なじみになったので行き交う人と挨拶し、時に祝福の詞を述べながら、スラムへと入る。

 するとあっという間に子供たちに囲まれてしまう。その中にアナスタシアやエリーの顔もあった。


「ごめんね、今日は食べる物は持ってきてないんだ」


 そう言いながら子供の群れから離れて、近くにいた、たぶん子供たちの誰かの母親であろうご婦人に、


「治療に来たので、皆さんに声をかけていただけますか?」


 と、お願いする。彼女はその場で軽く会釈をしてくれると、立ち並ぶ小屋の方に向かっていった。

 取り留めのない会話子供たちとしながら、治療のための荷物を広げて準備を始めると、ほどなくして人々が集まり始めた。

 その中に昨日作業をお願いした人がいるのに気づき、まず声をかける。


「事故かなにかあったのですか?」


「いえ、言われてた作業が終わったんで、お知らせしようと思いまして」


「そうですか、もう少しかかると思っていました。仕事が早いですね」


「あの後結構な人手が集まりましてね、夜通し作業した奴もいるんですよ。

 で、その、言いにくいのですが…そいつらに手間賃を出してやってはいただけないかと思いまして」


 そういう事だったのか。僕は納得してから満面の笑み(ビッグスマイル)を浮かべて


「正当な労働は対価で報われないといけませんね。作業に来てくれた人を集めていただけませんか?」


 そう伝えてから、集まり始めた人たちの診察を始める。

 聖職者が訓練を通して自動的に治療や薬草に関する知識を身に付ける訳ではない。聖職者が医療技術を身に付けていることは確かに多いが、それは必要に迫られて身に付けるケースが殆どだ。

 僕の脇にはエリーが座って僕のすることを黙って見ている。僕は薬の瓶をエリーに指示して取ってもらう。

 その時に「ドクダミの油脂軟膏を取って」とか、「ユキノシタの煎じ薬を」とか、具体的な薬の名前を挙げるように心がけた。

 全てを彼女が覚えるとは思っていない。でもここで一つでも覚えれば何かの役に立つかもしれない。これを機に医療技術を身に付けようと思うかもしれない。

 いつもよりも多めに薬を渡し、もう大丈夫と思っても、渡された薬は最後まで飲むようにと伝え、塗り薬も使い切る事、当て布や包帯は綺麗に洗って日光に当てて乾燥させること。少し口うるさく、伝えていった。聞かせたい相手がいるからでもある。

 10人ばかり診察と指導をしてから集まってもらった労働者たちにねぎらいの言葉をかけて銀貨を手渡していく。

 労働者は20人弱。なるほど、交代しながら仕事をしていたとして、そりゃ早く埋まっていくわな。

 最後に今日最初に声をかけてくれた人に、周囲に聞こえるように話しかける。


「明日かそのあとか、手配してあるコンクリートが届くと思います。

 そのコンクリートと石を積んでもらって、隙間なく最後の部分を埋めてください。

 その時に必要になる労務費を先にお渡ししておきます。

 この件についてはあなたに一任しますので、責任をもって完了させてください」


 そう言って金貨2枚を手渡し、小さい声と笑顔で「神は見ておられます」と言い、今一度周囲に聞こえる声で


「ここの安全を確保するために必要な事ですので頑張ってください」


 そう言って解散させた。薬や道具類を片付けると、最後までそこに残っていたエリーに


「お手伝いありがとう。これは君のお給金だ」


 そう言って銀貨を一枚渡す。

 エリーはにっこり笑って「ありがとう、神官様」と言い残すと、奥の方に走っていった。


 さて。


 まだ昼前だ、<きまぐれロブスター>に戻り掲示板を眺める。

 そうすると近くにいた男に声をかけられた。

 重装鎧(プレートメイル)長剣(ロングソード)大型盾(ヘビーシールド)。装備からするに戦士(ファイター)系の冒険者だ。

 僕的に少しうらやましい体格に髭面。ただ声の感じからするとまだ若そうだ。


「これから倉庫の地下に潜るんだが、うちのパーティには癒し手(ヒーラー)がいない。手を貸してくれると助かるんだが」


 近くのテーブルからこちらを見ているのは3人。合計4人のパーティーか。前衛がもう一枚、残りの二人は中衛職かな。ありがちな構成だ。

 仕事の内容を聞くと倉庫街にある古い倉庫の掃除で、蟲の類の駆除らしい。この間の話にもあった、よくある依頼のようだ。

 恐らくはそれ程難易度は高くないと思われるが、不測の事態は常にあり得る。

 

「差し支えなければですが、パーティーメンバーのレベルを伺ってもよろしいですか?」


 僕は手伝っても良いと思っていたが、最終確認の意味で聞いてみた。


「僕は戦士でレベル4、もう一人が遊撃手(レンジャー)で同じくレベル4、後は探索者(シーカー)暗殺者(アサシン)で多分レベル3だよ」


「私はレベル5の聖職者です。レベル的には問題にならない範囲ですね。お手伝いさせてください」


 比較的近いクラスが二人づつ。話の内容から2人組同士で構成されたパーティーっぽい。4人になったのは比較的最近だな。

 声をかけてきた戦士の後に続き、他のパーティーメンバーの所にむかう。


「手伝ってくれるって」


 戦士の男が仲間たちに声をかける。そこにいた3人に少し安堵の色が見える。そりゃそうだな。クレリックがいるのといないのとじゃ、かなり状況が変わってくる。

 命にも収入にも直結するのだから。


「私はアレンと申します。聖職者のレベル5です」


 軽く会釈する。


「ああ、ごめん。失礼した。僕から声をかけたのに。

 僕はグラント、ファイターだよレベル4」


「僕はレンジャー/ファイターでレベル4、マクゲインと言います。よろしく」


 革ベースの軽装鎧に短剣(ショートソード)小ぶりな盾(スモールシールド)を装備している。狭い所でも扱いやすい短弓(ショートボウ)と矢筒を背負っている。

 軽めの武器を使うオールラウンダーかな。体も軽そうに見えるし、技巧派(テクニシャン)タイプの戦士だろう。人間で、グラントよりは少し若く見えるが、誤差の範疇だろう。雰囲気的にもグラントと長い付き合い、言葉の感じからすると同郷の出身者という印象を受ける。


「俺はローグメインでレベル3、リアーだ」


「俺もローグメインでレベル3、プローラだ」


 二人とも同じくらいの背格好で、マントを羽織っている。プローラと名乗った方は皮鎧を身に付けているが、リアーと名乗った方はマントの下はローブっぽい。

 何て言うか、ローグの二人組で、名前が嘘つき(ライアー)うろつく者(プラウラー)って、文字ってるけどさ。まあ、なんというか怪しさ満点だね。

 恐らくだが、ローグ系がメインなのだろうけど、少なくとも嘘つき(ライアー)の方は魔法使い(ウイザード)職能(クラス)を持ってるだろう。

 と、仮定するなら、もう一人の方は純粋に戦闘系の職能(クラス)を持っていると推測できる。

 大きさ的には人間かな。僕と同じくらいの背のようなので、人間にしては小柄で、恐らく二人とも男。

 雰囲気的にファイターの二人は善人寄り、ローグ二人組は中立か、悪人寄り。まあ、悪人寄りだろう。何の根拠もないんだけど。

 まあ、言っちゃなんだけど行き摺りのパーティーだ。尻尾を出したり爪を伸ばしたりしなければ、咎める立場にはない。

 ローグの事を考えていたからだろうか、ふっと港湾管理者(ハーバーマスター)の顔が思い出される。

 ああ、怖い。


「報酬は頭割りで、あと、戦利品と必要経費が出た場合も基本は当分って事でいいか?」


 僕がいろんなことを考えてるとリーダー役なんだろう、グラントがそう言ってきたので「問題ありません」と答える。


「では、早速だけど行こうか」


 あ、本当に今から行くのか?

 僕は少し驚いた。聖職者的には状況を予想して奇跡の準備はしておきたいのだけども。

 ん、まあいいか。

 何とかなるだろう。

 僕は彼らの後ろについていく。


 なんか、こっちに来てから初めて冒険者らしい事してるよな。

 そう思いながら倉庫街に向かう道を進んでいった。





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