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God Bless You !!  作者: 灰色狼
第一章 嵐の港町 ~ストームポート~
13/90

11:港湾管理者 ≪ハーバーマスター≫

25/02/18 誤字脱字の修正、および表現の見直しを行いました。

25/04/22 ターニングアンデッドの漢字表記を変更しました



 僕は大急ぎで洞窟の奥に向かう。そこには10人弱の人が集まっていた。

 人間やハーフフット、男女を問わず、皆このスラムに暮らす者たちだ。


「お力添え、ありがとうございます。今日お願いする作業の説明をしますね」


 そう言って穴を埋める作業を指示する。昨日は簡易的に石を積んでもらっただけだが、残りの部分はしっかりと埋めておきたい。

 なので、土を敷き石を積み、また土を乗せ、と隙間を埋めるようにお願いする。それをこの扉の50センチくらい前まで続けてもらうよう言った。


「お忙しいようでしたら、途中で抜けてもらって構いません。日当を先にお支払いしておきます」


 少し寂しくなった財布から銀貨を取り出し、一人2枚を渡していく。


「もし、お手伝いしてくださる方がいれば、声をかけてください。後払いになりますが、その方たちにも日当は出します。

 この周辺の安全を確保するために、とても重要な作業です。よろしくお願いします」


 そう言い残してその場を去る。

 速足で桟橋を抜けようとしていると、巡回中と思われるオーガスタに出会う。これ幸いと僕は彼女に声をかける。


「隊長さん、おはようございます」


 僕の声に彼女は足を止め、にこやかにおはようと返してくれた。


「すみません、ちょっと教えてください」


 そう切り出すと、何なりと、と話を聞いてくれる。まずはコンクリートの手配について尋ねる。

 桟橋の基部や港湾地区の整備にコンクリートが使われているのは見て分かっている。補修用にどこかに備蓄があるはずだ。それを少し入手したい。

 そう告げると、ああそれならと桟橋の入り口付近にいる作業員に聞くと良い、と教えてくれた。

 続けてもう一つ、今日のメインイベントに関して尋ねる。


港湾管理者(ハーバーマスター)に面会したいのですが、上の門のところに行けばいいんでしょうか?」


「…そういう事なら少し時間をくれるかい?巡回はしとかなきゃならないんでね。15分ほどくれるなら、一緒にゲートまで行って話をつけることができると思うよ」


 余計な回り道を避けられて話がスムーズに進むならその方が良い。彼女にお願いして、僕は<気まぐれロブスター>で待っている旨を伝えその場を後にする。

 前金で払っているから一晩戻らなかったくらいで荷物を処分されることはない、はずだが、絶対はないので宿に向かう。

 金額的には大したことなくても、無くしたらちょっと痛いものはあったりするのだ。礼拝服とか。

 桟橋から繁華街につながる道の所で港湾労働者にコンクリートの話を聞いたところ、運よく資材を取り扱う業者もそこにいた。

 オーガスタの紹介であることを告げて手配を頼むと彼の言った金額に少し色を付けて手渡して立ち去る。

 宿に戻ると宿のお姉さんが、出迎えてくれる。


「おや、遅い朝帰りとは、神官さんも隅におけないね」


「誤解の無いように言いますが、神様は一夜の恋(ワンナイトラヴ)を禁じておられませんよ?

 もう一つ誤解の無いように言っておきますが、僕は艶っぽいこととは縁遠いみたいです」


 第一声がこの調子なら部屋の荷物はそのままだろう。お願いして朝食を出してもらう。

 戻ったのは、礼拝服に着替えようかと思っていたからなのだが、ゲートの通行許可を出す条件を考えると、この装備のままでも問題ないだろう。

 もちろん、不意の襲撃が無いとは限らないから、この装備でいる方が正解だとも思う。

 冒険者の心得でもある。食事は取れるときに取る。これは生き抜くためには重要なことだ。


 優雅さは度外視して食事を摂り、薬湯で少しリラックス気分になったころにオーガスタがやってきた。

 お姉さんに、ごちそうさまでした、行ってきます。と声をかけて、「行ってらっしゃい」の声を背に受けながら店を出た。

 オーガスタと話しながらつづら折りの坂を上っていく。

 まず彼女の方から黒マントの身元が確認されたそうだ。ジラントと言う名の闇司教で、手配書も出ていたそうだ。賞金もそれなりに掛かっていたらしく、どうする?と聞かれた。正直言うと金欠気味なので、受け取りたいが、昨日の時点で向こうの領分と決めていたので、それはオーガスタに受け取ってもらうことにした。

 悪いね、と短く答え、彼女は上機嫌だ。

 その勢いを借りて、港湾管理者(ハーバーマスター)に関して色々と聞く。


「一言で言うと…腹黒? 悪い人ではないんだけどね、何考えているか分からないし、何処にいるのかわからなくなることもある。ああ、あと地獄耳とも呼ばれてるね。ハーバーでの出来事はかなり詳しく知っている節がある」


 この規模の港湾地区を預かっている訳だし、育ちのいいお坊ちゃんではないだろうと思っていたが、こりゃ、一癖も二癖もありそうだ。

 足早に坂を上りゲート脇の詰め所にオーガスタが何か言いに行った。そしてすぐに戻ってくると


「今すぐにお目通りだってさ」


 カラッと言い放ち、ウインクした。

 来ることを知っていた、って事か。

 少しだけ背筋を正すと、オーガスタに別れを告げ、案内の衛兵に続く。

 詰所脇の扉から階段を上っていく。あまり広くなく、窓もない。壁の中に作られた通路だろう。らせん状に続いてかなり上る。

 少し息が切れ始めるころに、城壁の上に到達。真上に上がってきたのでゲートの上って事になる。

 そこからは180度ほどに海が広がる絶景。桟橋の先に灯台と、その先には黒雲が立ち込める海が見える。

 反対側は市街地になっており、巨石の遺跡と現代的な建物が入り組んでいる複雑な街並みが見えた。


「こっちだ」


 衛兵が進むことを促してきたのでそれに従う。

 歩きながらも周囲を見るとゲートの内側には小さな囲われたスペースがあり、その内側にもう一つゲートがある。こっちは扉は大きいが壁はそれほど高くない。

 人の手によって後から作られたものだろう。

 ゲートの真上部分、シティ側に張り出すように屋敷がある。これ建設には結構かかってるはずだそんなことを思っていると、その建物に入っていく。

 建物内部はどちらかと言えば実用的な造りだが、適度に調度品が並べられており、床には絨毯が敷き詰められている。

 金持ってるぞと言わんばかりではないけど、十分豪華ともいえる。

 ホールのようなところを抜けて、大きめの両開き扉の前で衛兵が立ち止まり


「面会希望の冒険者を連れてまいりました」


 と少し大きめの声で言った。


「中に入れなさい」


 たぶん中年男性、の声が中から聞こえると、衛兵は扉を開けて、僕に「入れ」と短く言って扉を閉める。

 中はこれまでよりも少し上質で豪華な品が並べられている。貴族趣味の匂いがする。一方で壁際に飾られている武具や、本棚に並ぶ書籍類は、実用的なにおいがする、少し異質な感じだ。

 突き当りに大きな窓があり、シティ全域が見渡せる。その窓の前に大きめの執務机、その手前に応接セットとお約束の配置だ。

 僕は一歩進み、椅子の背に向かって一礼。


「突然の訪問にも関わらずお目通りお許しいただきました事、感謝申し上げます。閣下。

 私はアラン・ディープフロストと申します。旅の聖職者でございます」


 僕が再度頭を垂れたタイミングに合わせるように椅子が回転して、こちらに向く。


「私が街の統治者(シティ・ローズ)の一人、港湾管理者(ハーバーマスター)ジン・ラグストフだ」


 若干芝居がかっているな、そんなことを思いながらゆっくりと顔を上げる。ハーフフットの中年なのか(注:僕はハーフフットの年齢は見分けられない)。という事は領主の血筋ではない。

 顔には絶対に出していないはずだが、彼はお見通しだと言わんばかりに


「かつては私も冒険者だったのだよ。5人の街の統治者(シティ・ローズ)のうち、港湾管理者(ハーバーマスター)は唯一世襲ではない」


 そう言ってこちらに向かって歩いてくると椅子に向かって右手を差し出してから


「君が来るのは知っていたよ、スラムの聖者君。まずは掛け給え」


 僕は彼の勧めに従い一礼してソファに腰かける。


「聖者と呼ばれるのは分が過ぎます。お戯れはご容赦下さい。

 でも、よろしいのですか?謁見に当たり帯刀を許可されて」


 僕はささやかな苦情を述べ、最初の疑問を遠慮なく彼に投げる。


「構わないよ、先ほども言った通り私も元冒険者だ。まず私まで刃は届かない。不意を突いて届いたとして、最後に立っているのは私だからね」


 大した自信だ。佇まいや物腰から察するに、ローグ、おそらくは暗殺者(アサシン)探索者(シーカー)かだろう。戦士の技能も持っているかもしれないし、魔法も使うのかもしれない。


「早速ではございますが…」


「ああ、分かっているよ。堕落した司祭オースティン・ヘイワードの件だね?」


 言葉を遮られ、彼から告げられた言葉に、僕は硬直し、戦慄を覚える。そして最悪の事態を覚悟した。


「なぜ、それを?」


 僕はやっとの思いで彼に問う。僕が想定した最悪の事態…彼が闇司教と繋がっている…を覚悟する。

 少し呼吸が早くなり、じわっと汗ばむ。意識はしていないが、たぶんピリピリした雰囲気を漂わせていたはずだ。


「君は頭は回るし優秀だが、世間慣れと言う意味では経験不足だな。そんなに殺気を垂れ流しては為すことも為せなくなる。

 ああ、君は聖職者だからね、それは仕方ない事なのかな」


 完全に場を支配されて、こちらが打つべき手を探っていることを彼は察知している。まずい。打つ手がない。


「まあ、落ち着き給え。君の想像は間違っている。私は奴を追っていたのだ。

 飲み物でも用意させよう。お好みはあるかな?」


「いえ、お任せいたします」


「そうか、では」


 彼はテーブルの上にあるベルを鳴らす。程なくして執事と思われる人間の男性が入ってきて、一礼すると、ハーバーマスターはお茶を用意してくれ。私に恥をかかせないでくれよと、彼に告げる。彼は今一度深々と礼をすると承知しましたと言い残して去っていった。


「君が教会を頼らずに、私の元に来たのは正解だ」


 ゆっくりと足を組み替えて僕に告げる。この人、どこまでこちらのことを知っているのだろう。

 僕は固まる以外の手が思い浮かばない。彼の言っていることを完全には信用でいないからだ。

 僕は幾分冷静さを取り戻していた。彼は初手で闇司教の話をしてきたのだ。常識的に考えれば愚策。

 普通なら僕の話を黙って話を聞きながらタイミングを見計らって口を封じればいい。理由も狼藉を働いた、で十分だろう。

 いつでも殺せるという自信故かもしれないが、優秀な冒険者はそんなリスクは負わない。

 彼はたぶん僕の考えを見通しているのだろうが、そのまま話を続ける。


「私も今回の件は内定していたのだよ。情報があったのでね。それに気が付いていないようだが、私は君に2度だったかな。すでに会っているよ」


 僕は記憶をたどるがハーフフットにあったのはブットバルデ家の話をしたと言っていたハーフフットだけ。ん。まさか?


「思い当たったかい?ほら」


 彼は右の指にはめられた指輪をこする。すると、彼の姿はスラムで話したあのハーフフットに変わった。もう一度見えない指輪をこする動きをすると、元の姿に戻る。


「便利だろう?勿論高位の呪文では破られてしまうが、見た目だけでなく印象操作の心術も発揮してくれる。突然その場に現れても、違和感を持たせないのさ。

 あの時の君は聖人と呼ばれるにふさわしい行いをしたと思うよ」


「つまり、あの場でわざわざ演技をしていた、という事ですか?」


 意味が分からない。彼が事件に加担していることを臭わせてから、注意を引いて…隠し扉に導く。ああ、そういう事か。


「気づいたようだね。その通りだよ。君に奴の手下を片付けてもらうことにしたんだ。

 失敗したら自分で片づけるつもりだったのだが、君は僕が思っていたよりも戦場慣れしているようだ」


 戦場慣れ、という言葉に僕の過去まで調べているのか?それとも僕の記憶を探った?いや、どちらでもない。荒事に対しての揶揄で深い意味は無い。僕は自分の中で完結させて、彼に問うことにした


「お茶のご用意が出来ました」


 僕よりもわずかに早く、先ほどの執事が声をかけてきた。

 ハーバーマスター:ジンは目を瞑り、お茶が注がれる音と臭いを確認しているようだ。


「うん、良いチョイスだセヴァスチャン」


 そう言うと執事は深々と頭を垂れて、恐縮です。と一言残して出て行った。


「せっかくのお茶だ。冷めないうちに」


 彼は口数の多い男だった。口数なら僕も負けてないと思うのだが、立場もあり控えめだったのは事実だ。

 そんなことよりも彼はシティの現状や、彼が知り得る限りの聖なる血サンクトゥム・サングィネムに関する情報を教えてくれた。


「つまり、現段階で差し迫った脅威ではない、ということですか?」


「そう認識してもらって構わないよ。ただ、教会は厄介だ。かの者の手が回っているのは間違いないが、決定的な証拠がない。

 君に内情を調べてもらえば、状況も変わるかもしれないが…リスクが大きいな。内定することはお勧めしない」


 僕は少し考え込む。

 教会の内部に腐敗があることは許すことが出来ない。だが、新参の1クレリックが何かできるとも思わない。

 そして僕の思考を遮るように港湾管理者(ハーバーマスター)は言った。


「教会をスルーする事は立場上できないだろうから、何食わぬ顔で挨拶にでも行き、何事も無いように、普通に助力を仰ぐのが正解だろうよ。

 もちろん闇司教の件は伏せてね」


「僕はどうすればいいのでしょうか?」


「君には時が来たら助力を請うよ。その時まで精進して地力を付けると良い。冒険者君」


 つまりは普通に冒険者として過ごし、力を高めて、来るべき時に備えよ、と。


「わかりました。ご助言感謝いたします。あと、これらなのですが、私が持っていてもなんの役にも立たないので、お預かりいただけますか?」


 そう言って押収した書類や日記をテーブルに出す。


「ああ、君が持っていても荷物になるだけだろうし、ここに置いて行ってくれれば悪いようにはしないよ」


 そう言った後に、「そうだ」と短く告げると執務机に向かい、何かをもって戻ってきた。


「君にはこの書類にサインしてもらわなければならない」


 その言葉に書類を受け取り、目を通す。

 誓約書のようだ。


「シティに入る許可を出すものにはこの誓約書にサインしてもらうのが決まりでね。

 目を通して異議が無ければサインをしてくれ」


 誓約書の内容は要約すると

  ・街の統治者シティ・ローズの権威に礼節をもって接すること

  ・南の大陸サウザンランド内での取得物に関しての権利は取得したものに認められること

  ・得したものに関しては街の統治者(シティ・ローズ)の指定した商人においてのみ売却が許されること

  ・シティ内においては適切にガードの指示に従う事

  ・南の大陸サウザンランドを離れる際は土地やその他権利等は失効すること

  ・南の大陸サウザンランドを離れる際に個人で持てる範囲の荷物に関しては持ち出しが許可されること

  ・その他貿易、誓約書に書かれていないが、誓約書に抵触する可能性がある事象に関しては、街の統治者(シティ・ローズ)の許可を求めること


 ざっくりとこんな感じだ。

 他にもいくつかの誓約文が並んでいるが、秩序を乱すなとか、シティ以内での殺傷能力がある魔法を禁ずるとか、常識的な範疇だ。

 この誓約書の内容は筋が通っている。

 僕は一通り目を通したのちにサインをした。


「では通行許可書を渡そう。これを持っていくと良い」


 彼は僕に、ハーバーマスターの印章指輪を手渡した。


「一般の冒険者は証書を持っているわけだが、これは特別だ。聖者君への私の友好の証と思ってくれればいい。役立ててくれたまえ」


「格別のお計らいに感謝します」


 一礼して受け取ると、ジンは一本の短刀(ダガー)と小さな革袋をテーブルに置いた。


「これは今回の件の正当な報酬だ。受け取ってくれ」


「過分とは存じますが、謹んで頂きます」


「君は本当に正直だな、今回の件で、かなり自腹を切ったのだろう」


 僕の顔に何か書いてあったのだろうか?図星過ぎる。この人に隠し事は出来ないと思った方が良い。うん。絶対に。

 港湾管理者(ハーバーマスター)は愉快そうに笑い、つづけた。


短刀(ダガー)魔法の込められた(+2)手元に戻る(リターニング)付きだ。十分役に立つだろう」


 確かに僕の持っている無印ダガーなど比べようもない高級品だ。


「改めて感謝申し上げます」


 僕は改めて礼を述べる。そして席を立ち暇を告げようとすると、


「ああ、いけない、もう一つ忘れていた。もう少しだけ座って待っていなさい」


 そう言ってベルを鳴らし、先ほどの執事を呼ぶ。そして短く「彼らをここに」と告げると執事は一礼して出て行った。


「君がオーガスタを呼んで来るまでの間に、実はあそこを一回り見て回ったんだ。

 君の眼では見つけられなかったものが残っていてね。回収して来たんだが」


 ノックの音と共に扉が開く。

 執事と彼に連れられた男女が入ってきた。


「簡単に手当てはしてあるが、君の方が本業だろう?」


 そう言われて、二人に軽度の治療(キュアライト)の奇跡を用いる。

 そして僕は港湾管理者(ハーバーマスター)の言葉に驚愕した。


「彼らはブットバルデ夫妻。君も知っているよね」


 僕は固まることしかできなかった。

 やっとの思いで口から出た言葉は


「あなたたちが…はじめまして。エリーも無事です」


 これだけだった。

 黒マントの部屋で対峙した生ける生ける屍(ゾンビ)、ゾンビは比較的新しい死体が用いられること、それが男女であったことから、僕は彼らの遺体だと思っていた。

 そして容赦なく神告浄化ターニング・アンデッドで破壊したのだ。魂の輪廻と言う点では正しい行いだし、それを悔いることもない。

 だが、今目の前に助けられなかったと思っていた、見ず知らずの二人が立っていて、エリーの無事を知り、泣いている。

 僕も自然と涙が流れた。

 良かった。心から思った。




 二人と共に港湾管理者(ハーバーマスター)の館を出て階段を下ると、オーガスタが待っていた。

 彼女はブットバルデ夫妻の顔を知っていたようで、まさに幽霊を見たような表情だったのは、隊長の威厳のために黙っておこう。

 帰り道でオーガスタに話しかける。


港湾管理者(ハーバーマスター)、怖い人ですね」


「ああ見えて、気さくな人だったりするんだよ。ふらっと詰所に現れて、酒を置いて行ったりね」


 成程。普段から港湾地区(ハーバー)を見回ったりしてるんだ。

 何という遠山左衛門尉(金さん)


 二人を連れ帰ったスラムは、大騒ぎとなった。

 固く抱き合う親と子。それを見て大泣きする友人。

 僕は速足で宿まで戻ると、ワインを二樽、料理を何でもいいから200人分頼んだ。

 残念ながら料理は断られたので、なんでもいいから食べるものをたくさん頼んで、財布に残っていた金貨20枚程をカウンターに置く。

 出来上がり次第デリバリーしてもらうように言って、これでお願いしますと告げ、ワイン樽を一つ先に受け取って荷車を引いて持って戻る。

 その間15分、戻ったころには落ち着きを取り戻し始めていたが、


「酒を持ってきたぞー」


 と、息も切れ切れに僕が叫ぶと歓声が上がった。

 祝わずにはいられない。こんなに嬉しい日は、滅多にない。

 

 僕は月の神(デミムア)に感謝の祈りを捧げるとともに、飲んだくれる許しを頂いた。



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