2-29. 暗躍
ラグナシティ大火災から5日。
ソルガム王国、王都ニードルにあるニードル城内の会議室。
国王、神聖教会の教会長、軍の最高責任者、国王側近。
4人の男が集まり緊急会議が開かれていた。
「報告によると、ラグナシティで大火災が起きたそうだ」
「何だと!?ではすぐに救援を出さなくては!」
「いや。それは控えた方がよいかと…」
「何故だ?多くの民が苦しんでいるのだぞ!」
「報告では教会に落雷があり、その後燃料に引火したと思われる火が町を焼いたそうだ。つまり、教会が原因ということになる」
「つまり教会が悪いと?」
「そう受け止めるものもいるでしょうな」
「しかし落雷が原因であるというのなら何とでもなるのでは?」
「それではまた新たな災いがこの国を襲ったと言うことになります。災いを運んで来るエルフはすべて滅びたのに…」
「確かに、それでは国民に説明がつかん」
「左様。しかも逃げ出した軍団長が街中の屋根伝いに飛ぶエルフを見たと言っている」
「エルフだと!?ヤツラは皆殺しにしたはずではなかったのか!?」
「そう慌てなさるな。確かにエルフはすべて皆殺しにしたことが確認されている。そうですな、ザイン軍曹?」
「いかにも。私が直接この目で確認した。間違いはありません」
「エルフ共に作戦が見破られていたということはないのか?」
「それはありえない。教会長が認めたこの私がそのような愚かなことをするわけがないでしょう。ですよね?教会長?」
「その通りだ。ザイン軍曹が間違うなどと言うことはない」
「では、何故エルフの姿が確認されたんだ?」
「国王陛下。アイリス王女は今どこに?」
「アイリスだと…?王城の自室に閉じこもっているはずだが?」
「ハァ…。まったく、あなたは本当に使えない人ですね?」
「なんだと?」
「アイリス王女は一カ月ほど前から、ラグナシティで商人ごっこを始めておられるそうです。そんなこともご存じないと?」
「ラグナシティで商人ごっこだど?そんなこと許可した覚えはないぞ!」
「でしょうね。黙って出て行かれたそうですよ。当然、そんな勝手なことをしないように、認可を与えないよう組合に指示を出したので、まだ何も出来ていないようです」
「だから『商人ごっこ』というわけか」
「その通りです」
「ということは、ラグナシティで確認されたエルフはアイリス王女だということですか?」
「おそらく。銀色の髪に黒い肌色をしていたと言っていますので、間違いないかと」
「確かにエルフの髪は金色、肌は白い。では間違いないですな」
「ザイン軍曹。あまり驚かせないでくださいよ。ハハハ」
「これは失礼。あぁ、でも私が若い頃、もう20年ほど前になりますかね。一度銀髪のエルフを殺したことがありますよ。私もまだ若かったのと珍しかったのでつい必要以上にいたぶってしまいましたがね」
「なんと。軍曹はエルフの扱いがお上手なことで」
「それほどでもありませんよ」
男達の笑い声が会議室に響いた。
「して、アイリス王女はご存命で?」
「さぁ?それはわかりません。セバスチャンも一緒のようです」
「セバスチャンだと…。それは厄介ですね」
「軍曹とセバスチャンは確か出世を争った間柄でしたね?」
「ええ。腕は立つが綺麗ごとばかりの優等生でしたよ。本当に汚らわしい」
「その彼がいるとなると、王女はご無事ということですかな」
「その可能性が高いでしょうね」
「なるほど。では最悪、王女には悪いエルフになってもらいましょう」
「悪いエルフですと?」
「これまで通り、ラグナシティへは貧民や教会を信じない馬鹿者達を送り込みましょう。そして彼らに復興作業をしてもらえばいい。火災のことが王都や北部の民にバレたら、王女に勤めを果たしていただきましょう」
「勤めとは?」
「文字通りその首を差し出してもらえば皆納得するでしょう。王女は見た目はどう見てもエルフなのですから。生き残りが隠れていて、復讐のために火災を起こしたとすればいい」
「素直に従うとは思えませんが?」
「陛下、ご自身の娘を信じなさい。優しい言葉をかけてやればいいんです。初めて国の役に立つのですから、きっと彼女も喜んで引き受けるでしょう。セバスチャンも陛下の命令とあれば従わざるを得ないでしょう」
「では、それでいきましょう」
「「異議なし」」
国王はどこか納得のいかない表情を浮かべた。
しかし誰もその抗議に耳を傾ける者はいなかった。
【二巻・完】つづく
ここまでお読みいただきましてありがとうございます。
これにて第2巻(第2部)完結となります。
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