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エルフの里は焼かれがち  作者: 北川やしろ
2. ラグナシティ編
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2-26. 昔取った杵柄

 「生き残ったのは今のところこれだけだな」

 「予想以上に少ない。あとは街中で生き残ってくれているのを祈りたいが…」

 エヴァンとルーニーに案内され、私達は別の場所に避難している人達と合流した。


 町の西部。

 農民と職人の人達、それに遥々遠方からやって来たサハラン族の人達が多く暮らすエリアは火災による被害を免れていた。

 合計およそ6000人の無事が確認された。 



 エヴァンとルーニーはこの場所の責任者と見られる上官に私達のことを説明した。

 「そうか。市民を救ってくれてありがとう」

 上官の男が頭を下げた。

 この光景は今日何度目のことになるだろう。

 何度されても慣れることはなかった。

 この上官も特にエルフを毛嫌いする様子は見えなかった。


 「このあとはどうするんですか?」

 私は今後のことを訊ねた。

 私とアイリスは森の中にあるエルフの里へ帰ればいい。

 しかしこの町の人達はそうはいかない。

 さすがに乗りかかった船だ。

 あとは知りませんという気にはなれなかった。


 「みんな家を失ってしまったからな。残っている家もいつ壊れてもおかしくない。まずは雨風をしのげる場所が必要だ。復旧復興はそれからだ」

 先のことを考える余裕はまだなさそうだ。

 とりあえずは今日明日のことで精一杯といった感じだった。


 「しかし今から建物を建てるなんて出来るんですか?」

 エヴァンは上官に訊ねた。

 「空模様もまだ怪しいし、明日晴れるとも限らない。出来ることをやるんだ」

 上官はそう言った。


 「しかし、材料がありません。あと人手も足りません」

 ルーニーともう一人別の軍人はそう上官に伝えた。

 上官は周囲を見渡した。

 見えるのはとても使えそうにない瓦礫ばかりだった。


 「困ったな…」

 上官は困り果てて、頭を抱えた。

 エヴァン達軍人もどうしてよいものかと天を仰いだ。

 「あの。簡単なものでよければ出来ると思いますよ」

 「何!?」

 私は恐る恐る手を挙げて提案した。



 「出来ました」

 私とアイリスは手際よくテントを組み立てた。


 逃げた洞窟の中、新たに作られる里。

 いずれの場所にも複数のテントをエルフは用いてきた。

 人間達によるエルフ壊滅作戦の偵察をするため、私は簡単なテント作りを学んでいた。


 壊れた建物から梁や柱など、比較的長い棒状の木材を部分を引っ張り出す。

 3本から4本の棒を斜めに立てかけお互いを頭上で交差させ、交差部分を紐で結ぶ。

 周りを布で覆えば簡単なテントの完成だ。


 「これなら雨風を防げそうだ!」

 上官はテントの中に入ると歓喜の声を上げた。

 「しかもこんな短時間で出来るなんて…」

 私達のテント設営を見ていた周囲の避難民の人達は舌を巻いた。


 「使えそうな材料を集めてみんなで設営をするぞ!」

 上官の号令にその場の人間達が一斉に「オー」と声を上げた。

 


 「そこはもうちょっときつく締めた方がいいです」

 「こうですか?」

 「はい。そうです」

 私とアイリスは手分けして人々にテント設営の手ほどきを行って回った。

 全員で手分けして作業を行ったことで、日没前には避難者全員が入れる分のテントの設営に成功した。


 「まったくエルフの知恵には驚かされることばかりだよ。こんなものを建てるなんて、思いつきもしなかったよ」

 一番手際よく作業をしていた大工の職人達から声をかけられた。


 「私達が出来るのはこれくらいです。本格的な復興に必要なのは皆さんの力ですよ」

 新しいエルフの里でも必要とされているのはテントを建てる技術ではなく、ツリーハウスを建てる技術の方だった。

 だからこの町にも本当に必要なのはしっかりと丈夫な建物を作ることが出来る彼ら大工の仕事の方だろう。

 しかし、まさかこんなところでテント生活が役に立つとは思わなかった。


 「本格的な復興か…。そんなことがあるといいな」

 「だな」

 大工の男達はどこか投げやりに言い放つとため息をついた。

 「どうかしたんですか?」

 大工達の言葉と様子が気になった。


 「王都や周辺の北部以外の被害はまるで無視だからな」

 「エルフを倒したから災害は起こらないとか宣言してたって話しだ。なのにこんな大災害が起きて、おまけにエルフに助けられたなんて、口が裂けても言えないだろうな」

 「あぁ。だから多分見捨てられるだろうし、むしろ証拠隠滅で口封じされるかもな」

 大工の男達は口々に物騒なことを言い出した。


「なぁ、ダークエルフの姉ちゃん。何とかならないか?」

 「そう言えば、昔ダークエルフが村の危機を救ってくれたって、じいさんから聞いたことがある。ならこの町もなんとかしてくれよ!」

 「俺達を助けてくれよ!頼む!」

 懇願するように見つめられた。

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