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エルフの里は焼かれがち  作者: 北川やしろ
2. ラグナシティ編
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2-24. 英雄(ヒーロー)

 「た、助かった…」

 最後の避難者となったユリウスが郊外の畑の中に大の字に倒れこんだ。

 

 子供、老人、女性、成人男性の順に私とアイリスは避難者を風上にあたる町の外の畑まで何往復もした。

 全員の救助が終わると、地面に座り込んだ。

 もうヘトヘトだ。


 「もうちょっと体力が必要だね」

 一方のアイリスはピンピンしていた。

 さすがは諜報部隊。鍛え方が違う。


 「ありがとな、リーナ。それと、もう一人の方」

 体を起こすとユリウスは私達に頭を下げた。

 「俺達からも言わせてほしい。ありがとう」

 「ありがとう」

 「本当に助かりました」

 ユリウスに続いて救助された人達が口々に感謝の言葉を述べた。


 「えっ!?これ、どうしたらいいの?」

 突然のことにアイリスは困惑して私に助けを求めた。

 「私からも言わせて。手伝ってくれてありがとう。イリスがいなかったらここまで多くの人を助けられなかったと思う」

 「そんなことないよ!リーナだってすごく頑張ってたじゃない!?」

 アイリスは照れくさそうにして言った。


 「イリスさんって言うのか。本当に助かった。やっぱりエルフってすごいな!」

 ユリウスはアイリスに向けて笑顔を見せた。


 「本当ね。やっぱりエルフってすごいんだな」

 「格好よかった!」

 「やっぱりエルフは頼りになるな!」

 その場にいた全員がエルフに対して賞賛の言葉を口にした。

 その言葉に私は少し誇らしい気分になった。



 私達への賞賛の時間が終わり、人々が今後のことについて相談を始めたころ、黒いローブを羽織った人影が私達に近づいてきた。

 「リーナ様!イリス様!ご無事でしたか?」

 聞き覚えのある声だった。


 「アリス!?無事だったんだ。よかった…」

 ホッと胸を撫で下ろした。

 最悪の場合も想像していただけに、彼女との再会は何よりも嬉しいことだった。


 「セバスチャンさんは?」

 「無事です。すぐ来ると思います。ほら来ました!」

 ゆっくりと一人の男性がこちらに近づいてくるのが見えた。


 「お二人とも、よくぞご無事で」

 「セバスチャンさんも。本当によかったです。市場へは行っていなかったんですか?」

 「少し混雑が酷いようでしたので、落ち着いてからにしようと話していたところだったんですよ。お陰で命拾いしました」

 「そうだったんですね」

 確かにあの混雑はアリスには少々酷だっただろう。

 それに何かあってからではセバスチャン一人だけでは対処の仕様もなかっただろう。


 「命は助かりましたが、家の壁は一部壊れてしまいました。再びあの家に住むのは難しいでしょう。安全な場所に避難しようとしていたところ、屋根伝いに飛んでいる人影が見えましたので、もしかしたらと思って追いかけてみたのです」

 「なるほど。それでこの場所に来たんですね」

 「えぇ。まるで正義のヒーローのようでしたよ。あっと、お二人は女性なのでヒロインでしたね。失礼しました」

 セバスチャンはニコッと笑った。

 まだ緊張感が漂うだけに、少しでもリラックスしようという気遣いだろう。

 軍で出世していたと言っていたが、本当によく出来た人だ。

 出世するのもよく理解できた。


 「あら?お二人ともローブは脱いでいてよろしいんですか?」

 アリスは目ざとく私達の変化に気が付いた。

 「あぁ、これ?避難させるのに被ってたら邪魔だったから脱いだんだ。幸い、みんなエルフだとか関係なく接してくれて助かったよ」

 エルフ族は滅亡したと信じられているとばかり思っていたのだが、意外なことにこの町の人たちはみんな私達エルフがいるのがまるで当たり前のようだった。


 もしかして、この町の人達は国の発表を信じていなかったのだろうか?

 いずれにせよ、エルフを受け入れてくれる人ばかりで本当によかったと思う。

 「アリスも脱いで大丈夫かもしれないよ?」

 アイリスが私の肩越しにひょっこりと顔を出して言った。

 「そうですか?では私も失礼して…」

 そう言うとアリスもローブのフードを脱いだ。


 私と同じ銀髪が風になびいた。

 「何だ?まだ仲間がいたのか?」

 アリスの登場に近くにいたユリウスが気付いた。

 「そんな。仲間だなんて…」

 アリスは謙遜しながら少し恥ずかしそうにして答えた。


 仲間。

 人間ともエルフとも違う彼女はこの言葉をどう受け止めたのだろう。

 『人間でありながらダークエルフとして見られる運命を背負っておられる。しかし姿はそうであっても中身は人間なのです。人間でもダークエルフでもない。』

 昨夜のセバスチャンの言葉を思い出した。

 アリスは仲間と言う言葉を聞いて何を思っただろう?


 チラリとアリスの様子を覗こうとしたが、それよりも気になるものが視界に入った。

 ユリウスの表情だった。

 目を見開き、何故か驚いたような表情をしていた。

 一体どうしたんだろう?


 「お、親父!?」

 「何だ、ユリウスじゃないか?どうしてお前、こんなところにいるんだ?」

 「俺はこの町に半年前に移動になったんだ。それより、親父は何でここにいるんだ?王城にいるんじゃなかったのか?」

 「私はお仕えしている方がこの町に来たいとおっしゃったのでこの町に来たんだ」

 「そうだったのか…」

 ユリウスはセバスチャンと何やら会話を交わした。


 「あの、もしかしてお二人って親子だったりします?」

 私は衝撃の事実を恐る恐る確認した。

 「えぇ。この子は私の一人息子のユリウスです」

 セバスチャンはそう答えた。

 なんと、ユリウスとセバスチャンは親子だったのだ!

 「まぁ!ではあなたがセバスチャンがよく話してくれた息子さんなのですね!」

 アリスは目を輝かせてユリウスを見つめた。

 「えっ!?親父。この子、誰?」

 ユリウスは困惑の表情でセバスチャンを見た。

 「失礼だぞ。そのお方は私の主従アリス様だ」

 「主従だって!?」

 ユリウスは驚きの声を上げるとセバスチャンとアリスを交互に見た。


 「はじめまして。アイリス・ニードル・ソルガムと申します。アリスとお呼びください」

 アリスは私達に会ったときと同じように華麗な仕草で自己紹介をした。

 「あっ、どうも。ユリウスです」

 ユリウスは完全に呆気に取られ呆然としていた。

 おそらく彼はまだ状況を正しく理解できていないだろう。


 ユリウスが目を白黒とさせていた、そんなときだった。

 「お~い!誰か生きてるか~!」

 遠くから軍服を着た人が2人、こちらに向けて叫びながら手を振り近づいてきた。

 「エヴァン、ルーニー!ユリウスだ!」

 二人の声にハッと我に返ったユリウスは近づく人影に返事を返した。

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