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エルフの里は焼かれがち  作者: 北川やしろ
2. ラグナシティ編
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2-23. 救出作戦

 まず子供を屋根の上に乗せた。

 背中に一人両腕に一人ずつの3人を抱えると、一気にジャンプした。

 2~3回繰り返し、子供達をずべて避難させることに成功した。


 次にお年寄りを避難させる。

 子供とは違い、こちらは一人ずつおんぶして運んだ。

 その後女性、最後に成人男性の順に屋根の上に避難させた。


 さすがに大人数を抱えてジャンプを繰り返すのは重労働だった。

 太腿はすでにパンパンだ。

 避難させた建物は、周囲のものとは異なり石造りで出来ている。

 そのため燃え落ちる心配はない。

 

 改めて周囲の状況を確認した。

 大きな火柱のようなものがものが複数、渦を巻いて竜巻のように立ち上っていた。


 「炎の竜だ…」

 誰かがその様子を見てポツリと呟いた。


 火災旋風。

 関東大震災の際、多くの犠牲を出したと言われる現況だ。

 今、それがこのラグナシティでも発生していた。


 「まずい!あっちは軍の駐留地だ!?」

 ユリウスは炎の進む先を見て何かに気付いたようだった。

 「何か問題でもあるんですか?」

 「駐留地は避難先として指定されている。だからこの町の人は皆あそこへ避難しているはずだ」

 「それじゃあ、早く逃げるように伝えないと」

 しかしそんな連絡手段はなかった。


 どうすることも出来ず、私はただ炎を見つめるしか出来なかった。


 煙がさらに酷くなる。

 先ほどまでいた地面はすでに瓦礫と炎に包まれていた。

 ここに留まっているのも危険だ。早く移動しなくては。

 そう思っていたときだった。


 「リーナ!」

 微かに私を呼ぶ声が聞こえた。

 慌てて周囲を見回すと、すぐ近くの屋根の上に黒い人影が見えた。

 「イリス!」

 私は人影に向けて手を振った。



 「よかった!無事だったんだね!」

 アイリスは私に抱きつくと安堵して胸を撫で下ろした。


 「イリス。急で悪いんだけど、頼みたいことがあるんだ?」

 「頼みたいこと?」

 私はアイリスの肩を掴んで頭を下げた。

 「お願い!ここいる人達を安全な場所まで運びたいんだ。協力してくれない?」

 「ここにいる、人達?」

 アイリスはそう言うと、私の背後を見た。

 そこには不安げに怯えた様子で火の海を見つめている人間達の姿があった。


 「イリスにとっては受け入れられないことだと思う。でも、私はこの人達を助けたいんだ!お願い!力を貸して!」


 エルフにとって人間は憎むべき相手。同胞を躊躇なく殺した卑劣で残忍な生き物だ。

 むしろ目の前からいなくなってしまったほうが、エルフにとっては好都合だ。

 それを助ける。

 アイリスはどういう気持ちで私の願いを聞いているのだろう。


 私は元人間だ。だからどうしてもアイリス達とは違う。

 怒っているかもしれない。

 幻滅しているかもしれない。

 失望しているかもしれない。

 軽蔑しているかもしれない。

 顔を上げることができなかった。


 「わたった」

 「えっ!?」

 「リーナがそうしてほしいのなら、私は協力する」

 「ほ、本当に!?」

 「うん」

 「あ、ありがとう!」

 思わずアイリスを抱きしめた。

 涙が出そうだった。


 「今回は特別だからね。後でちゃんと私のお願いもきいてもらう!それが条件」

 「わかった!何でもきくから!」

 何を言われるかは知らないが、今はそんなことを言っている場合ではない。

 二つ返事で返した。


 「じゃあ、何したらいいの?」

 アイリスはそう言うと私と同じように被っていたローブのフードを脱いだ。


 金色の長髪がキラキラと光り、風になびいた。

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