表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフの里は焼かれがち  作者: 北川やしろ
2. ラグナシティ編
51/58

2-22. 覚悟と決意

 屋根伝いに移動をしアリスの家へ向かうことにした。

 彼女達も市場へ行くと言っていた。心配だ。

 煙をかき分けて進んだときだった。


「必ず助けが来るから、みんな諦めるな!」

 男性の叫び声が聞こえた。


 足を止め、下を見ると40~50人ほどの人達が炎と煙で動けずにいた。

 一箇所に集まり、咳き込みながら助けを待っていた。


 そんな人達を、軍服に防具を着けた男性が一人が必死に声を張り上げて鼓舞していた。

 長い棒のようなモノで前方の瓦礫をどかしながら炎を振り払い、必死に逃げ道を作ろうとしていた。

 「もうダメだ」

 「熱いよぉ~」

 しかし絶望的な状況に、人々からは弱音が出る。


 「諦めるな!絶対何とかなるから!」

 それでも軍人の男は声を張り上げ、必死に道を切り開こうとしていた。

 が、現実は実に残酷なものだった。


 男が切り開こうとしていた前方の道沿いの建物が音を立てて崩れ落ちたのだ。

 崩れた建物からは炎が勢いよく噴き出した。


 「クソ!」

 万事休す。

 軍人の男は怒りを滲ませ手にして棒を地面に投げつけた。


 「もう終わりだ…」

 「何でこんなことに…」

 「嫌だ!まだ死にたくないよ~」

 人々は最後のときを覚悟しているようだった。

 しかし、軍人の男は諦めていなかった。


 「俺が飛び込んで瓦礫をどかすから、あんた達はそこを通って逃げてくれ!」

 自ら火の海に飛び込もうとしてた。


 「何言ってるんだ!そんなことは無茶だ!」

 「死にに行くつもりか!?」

 逃げろと言われた人達は口々に男を引き止めた。


 「それしかもう手がないんだ!市民を守るのが俺達軍人の仕事だ!」

 男は叫ぶと人々の制止を振り切って炎の中に飛び込もうとしていた。

 ふわりと風が吹く。あたりを覆っていた煙がはれる。

 男の顔がはっきりと見えた。

 凛々しくも、覚悟を決めた顔だった。

 そして、私には見覚えのある顔だった。


 「ユリウスさん!」

 思わず屋根の上から呼びかけてしまった。


 「!?」

 男は足を止めた。

 キョロキョロと周りを見渡すと、屋根の上にいる私の姿を発見した。


 「ユリウスさん!私です!リーナです!」

 「リーナ!?何故そんなところにいるんだ!?」

 ユリウスは驚いたように叫び返した。

 何故声をかけてしまったのだろう?


 「そっちはダメです!逃げるなら風上に行かないと!」

 「わかっている!だが、そっちにはとても行けそうにないんだ!」

 ユリウスは悔しさを滲ませながら叫んだ。


 「今あんたのいる場所なら炎も来ない。子供だけでもブン投げるから受け止めてくれないか?」

 「はい!?」

 とんでもない提案に思わず変な声が出た。


 「俺達は…、もう無理だ。だから、せめて一人でも助けられそうなら助けたいんだ!」

 悲痛な表情でユリウスは言った。

 逃げ遅れた人々もみんな同じような表情をしていた。


 「頼む!俺の最後の願いだ!」

 最後の願い。

 この言葉がズシリと胸に刺さった。


 自らの命を犠牲に他人を救う。それが最後の願いだと言う。

 そんなこと言わないで欲しい。まだ諦めないで欲しい。

 私はどうしたらいいんだろう?

 いや、そんなことは考えるまでもなかった。 

 

 「お断りします!」


 私はユリウスの願いを断った。



 「どうしてだ!?」

 ユリウスは驚きと怒りの表情で私をにらみつけた。


 ふぅっと深呼吸をすると私は屋根の上から地面に飛び降りた。

 音もなく軽やかに着地した。


 「おい!何やってるんだ!?あそこにいたら安全だろうが!何一緒に死にに来てるんだ!」

 ユリウスの怒号が飛んだ。


 「私は死にになんて来てません」

 「何だと?」

 私の言葉にユリウスは怪訝な顔をした。

 そんな彼に私はこう言った。


 「今から全員を助けます!」


 そして被っていたローブのフードを脱いだ。

 銀色の髪が風になびいた。

 耳の先に炎を熱を感じる。


 「あんた…、もしかして!?」

 ユリウスは呆然とした様子で私の姿を見つめていた。


 「逃げ道ならまだあります!諦めないでください!」

 私は力強くそう告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ