2-19. 雨の予感
「この町からの情報は正直もう取れないと思うんだ」
アリスの家を出て二人になったところで私はアイリスに伝えた。
「もうないってどうゆうこと?」
「うん。どうやらこの国はとんでもなくすごい技術があるみたいなんだ。でもこの町はこの国の中でも外れにあって、なおか少し特殊な事情がある町みたいなんだ」
「特殊って?」
アイリスは不思議そうな顔をして訊ねた。
「さっき言ってた教会っていうのが関係していてね。それの影響力がこの町は強くないんだ」
「強くなるとどうなるの?」
「教会に異を唱えたりしたら追い出されたり…。あとはエルフみたいに殺されたり」
「エルフみたいにって何?」
追い出されるとか殺されるとかよりも、「エルフみたいに」のところにアイリスは引っかかったようだった。こういうときに勘が鋭い。
「エルフ達の里が襲われたのは、どうやら教会の指示だったみたいなんだよ」
「えっ!?どういうこと?」
「彼らは多種族や他宗教を排除しているんだ。その一貫でエルフも排除対象になったみたいなんだ」
「でも人間がやってるんだから一緒でしょ?」
確かにそうなのだけど。と私は心の中で苦笑いを浮かべた。
「セバスチャンさんみたいにエルフを敵対視しない人間もいるんだよ。そしてこの町はそういう人がまだたくさんいるみたいなんだ。だから、本当にエルフに攻撃を仕掛けるのなら、軍よりも教会の動きを見たほうがいいみたいなんだ。だけどこの町ではまだ教会の施設が出来たばかり。町自体も最近急発展したけど、まだまだ王都ほど開発が進んでいないんだ。だから本当に偵察すべきはおそらく王都・ニードルだと思うんだ」
アイリスはどこか難しそうな表情で私の話を聞いていた。
「ゴメン。ちょっと何言ってるのかわかんない」
理解出来ていなかったようだ。
「まぁ、簡単に言えば悪の大本である教会の本部がある王都に行かないとこれ以上の情報を得られないっていうこと」
「あぁ、そういうことか!」
手をポンと叩いてアイリスは理解を示した。
「じゃあもうこの町には来なくなるってこと?」
アイリスは少し残念そうに言った。
「町が大きくなれば王都からの影響も大きくなって、この町にも変化があるだろうから、まったく用なしというわけではないかな」
「そっか。じゃあまだアリスとは会えるんだね!」
すぐにアイリスの表情が明るくなった。
ドンドンと再び空砲が空に向かって打ち上げれらた。
しかし空砲が打ちあがった空はどんよりと厚い雲で覆われていた。
「一雨来そうだね」
アイリスが呟いた。
「雨が降ると人足も減っちゃうから、その前に行こうか」
私達はそう言うと黒いローブを被り街中へ足を向けた。




