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エルフの里は焼かれがち  作者: 北川やしろ
2. ラグナシティ編
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2-15. エルフと禁断の食事

 カブのスープにサラダ。豚肉のワイン煮と硬めのパン。

 暖かで豪華な料理が食卓に並ぶ。

 「お口に合うかはわかりませんが」

 老紳士セバスチャンはそう言うと笑顔を見せた。


 失礼ながら、こんなにもちゃんとした料理を食べるのは一体いつ振りだろう。

 高級店の匂いを鼻で感じ、よだれをが出るのを押さえてナイフとフォークを握り締めた。

 しかしアイリスはどこか浮かない顔をして戸惑っていた。


 「どうしたの?」

 その様子に思わず声をかけた。

 「あっ、うん。これって肉だよね?」

 「うん、そうだね…って、あっ!?」

 すっかり忘れていた。

 エルフは肉や魚は食べないのだ。

 しかし私はというと、がっつり豚肉にフォークで切れ目を入れていた。


 「これは失礼しました。エルフの方にはご法度でしたね」

 セバスチャンは慌てて皿を下げようとした。

 あぁ…、私のお肉……


 「リーナは食べたことあるんだよね、お肉?」

 「えっ!?」

 お皿を名残惜しそうに見つめる私をアイリスは真剣な目で見つめていた。


 「それは…うん。あるけど…」

 「どんな感じだったの?やっぱり美味しいの?」

 「うぇっ!?」

 グイっと顔を近づけて詰め寄られる。

 もしかして、市場で軍人達から串焼きを貰っていたところを見ていたのだろうか?


 「ゴメン。ご好意で貰ったものだったので。ほら人ごみに紛れての偵察中だったから、変に断るのも怪しいじゃない?」

 必死に弁明した。


 「市場で貰った?何のこと?」


 しかしアイリスは何を言っているんだという表情をした。

 しまった。違ったようだ。

 余計なことを言ってしまった…。


 「もしかして、こっちの世界でも食べたの?お肉?」

 アイリスは私の肩を掴んで前後に揺らした。


 こっちの世界でもという発言から、おそらくアイリスは転生前の世界で私が肉を食べていたということ指して最初に聞いたのだと今更ながら理解した。

 「食べたのは今日が初めてだから。これまでは一度もないから」

 「本当に!?」

 アイリスは私を揺らすのを止めるとジト目で見つめた。

 私は黙ってうんうんと何度も頷いた。


 「お腹とか壊してない?呪いとかも大丈夫?」

 「お腹壊す?呪い?どういうこと?」

 何やら急に物騒なことを言い出した。

 私はアイリスに事の真偽を訪ねた。


 「だって動物や魚の肉にはその生き物の魂が残ってて、無理やりその命を奪うと元の生物の魂が食べた者に悪さをして仕返しするって。エルフの有名な言い伝えだよ」

 「何それ?初めて聞いた」

 正直エルフが肉や魚を食べないのは知っていたが、何故なのかはうろ覚えだった。

 どうやらこの世界ではそのような理由があって肉や魚を食することを避けていたらしい。

 食べものの恨みは恐ろしい。って意味が違う!


 「本当に大丈夫なの?美味しくないのに無理やり嫌々食べたりしなかった?」

 なおもアイリスは心配そうに聞いてきた。

 「そんなことないよ。美味しくいただいきました」

 「そう…なんだ」

 アイリスはそう言うともと居た席に腰を下ろした。


 「どうかなさいましたか?」

 私達の小競り合いにアリスは心配そうな表情で見ていた。

 「わかった。リーナがお肉食べたっていうなら、私も食べる!」

 アイリスは高らかに宣言した。

 「はっ!?」

 そんな宣言するようなことでもなかろうに…。

 しかしアイリスにとってこれは大きな一歩であることに違いはなかった。


 「無理はしないでくださいね」

 お皿を下げようとしていたセバスチャンも心配そうにアイリスに声をかけた。


 フンと鼻息荒くフォークを握り締めると肉の塊にぶっ刺した。

 そのまま持ち上げると齧り付いた。

 何とワイルドな食べ方だろう。

 でもお嬢さん、行儀が悪いぜ。

 とか何とか思っているうちにアイリスは口をもぐもぐ動かしゴクリと飲み込んだ。


 「う、…美味い」


 アイリスは目を閉じて唸った。


 「こんな美味しいものがこの世界にあったなんて…」

 腕組みして考え込んでいた。


 そんなエルフの姿を私達は微笑ましく見つめていた。

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