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エルフの里は焼かれがち  作者: 北川やしろ
2. ラグナシティ編
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2-10. アイリス・ニードル・ソルガム その2

 (わたくし)はソルガム王国現国王の父と第4夫人の母との間に生まれました。


 母は中部の貴族出身でその容姿と知力を父に認められ側室として王城に入ることとなりました。

 するとすぐに双子の子宝に恵まれました。

 順調に成長し、出産のときを迎えました。

 最初に姉が、そしてすぐに(わたくし)が生まれました。

 通常であれば、新たな王族の誕生に国中が大盛り上がりとなるはずでした。

 しかし私達(わたくしたち)の誕生は祝福されることはありませんでした。

 何故なら、生まれてきた赤子の姿はダークエルフそのものだったわけですから…。


 すぐに父と側近が病室に呼ばれ、今後について話し合いが行われました。

 ご存知のように、この国ではエルフは災いを連れてくる憎むべき存在と信じられています。

 なので徹底的にエルフを排除してきました。

 にも関わらず、王家にエルフが生まれたということは、父達にとってとても許容できるものではありませんでした。


 ろくに調べることもせず私達(わたくしたち)をエルフと決め付けた両親達が出した結論は、私達(わたくしたち)を殺処分し、そもそも母の妊娠・出産の事実はなかったことにするというものでした。

 母もそれに同意し、まず姉の処分が実施されました。


 そして次に(わたくし)の番になったときでした。

 突然王都に大きな地揺れが起こったのです。


 地揺れによって王都は大半が壊滅し、多くの市民の命が奪われました。

 この地揺れは王城にも被害を出しました。

 出産に使われていた部屋の壁が崩れ、母は生き埋めになりました。

 発見されたときにはすでに亡くなっていました。

 多くの死傷者を出しながら、どういうわけか(わたくし)は無傷でした。


 父達はダークエルフの姉を殺害したことにより、エルフの呪いで地揺れが起こったと本気で信じたのです。

 その結果、(わたくし)の処分は取りやめることになりました。

 その後、(わたくし)はその容姿から忌むべき存在として出生すら明かされることはなく、王城の中に幽閉され育つことになったのです。


 ◇◇◇


 王女は淡々と話した。

 「酷い話ね。お姉さんがかわいそう」

 アイリスは耳を垂れさせてポツリと呟いた。

 同じく姉を失った過去があるアイリスにとってはどこか共感できるところがあったのかもしれない。

 そう思った。


 「ありがとうございます。姉のことをそう言ってくださる外の方は初めてです」

 王女は少し嬉しそうに言った。

 しかし彼女の話を聞いてもなお、私には大きな疑問が解決されることなく残っていた。


 「あなたの生い立ちはわかりました。しかし、どうしてあなたはそのような姿なのですか?そこについて話してもらえますか?」

 私は訊ねた。

 どうしてダークエルフなのか?

 この問いかけって、少し前に私がやられていたことじゃないか?と少し懐かしく思う。

 何と言うめぐり合わせなのだろう。


 「確かにおっしゃる通りですね」

 私の問いかけに王女はそう言うと表情を引き締め直し、私の方を見つめると話始めた。


 「それは母の先祖がエルフを原料にした薬を摂取したからだと思われます」

 「エルフを原料にした薬!?」

 それに心当たりがあった。


 万病に効く、若しくは不老不死になれると謳った薬。

 それはエルフを原料にして作られたモノだ。


 もちろん実際にそのような効果はない。

 ノースの里に起こった悲劇。

 人間達の金儲けのために行われた蛮行。

 それらのことが私の頭の中を駆け巡った。


 「この世界に生きる人間の先祖達は皆エルフの力を得ようとした時代がありました。エルフの力はとても魅力的ですばらしいものだったからです。そのため人々は自身にエルフの血肉を取り込むことでエルフの力を得ようと考えました。当然、そんなことは出来るわけもなく、副反応で逆に命を落とすものが多く出たと聞きます。まさか、何世代も後になって悲願が成就するとは思っていなかったでしょう…。そして、それが叶ったときにはむしろそれが逆に邪魔なものになるなんて、皮肉にしてもあんまりです」

 王女は悲しげに話した。

 わずかに目元には涙が滲んでいた。


 「なるほど。それであなたは自分が人間だと言ったのですね?」

 私は改めて彼女に訊ねた。


 「はい。人間から生まれた(わたくし)はお二人のように魔法を使うことが出来ませんし、人間を超えるような身体能力もありませんでした。せめて何か少しでも使うことが出来れば、エルフとして名乗っていたかもしれません。見た目はエルフなのに中身は人間なんて、この国では何の笑い話にもなりません」

 王女の話に私は何とも複雑な感情を抱いていた。


 「一応確認した方がいいよね?」

 アイリスが少し身を乗り出して私に訊ねた。

 「そうだね。それが一番安心だ」

 私はアイリスの提案に賛同した。


 「確認ですか?」

 王女は私達のやり取りに不思議そうな顔をした。


 「あなたのことを信じていないわけではないんですが、少し調べさせてもらいます。すぐに終わりますので、そのまま楽にしていてください」


 私はそう言うとアイリスに後を託した。

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