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エルフの里は焼かれがち  作者: 北川やしろ
2. ラグナシティ編
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2-4. 決意

 新たな里の建設は順調に進んでいた。

 森の奥から倒木が次々に運び出される。

 そしてみるみるうちに加工が進むと、あっという間にツリーハウスが一棟完成した。


 今にして思えばエルフの里には鍋や部族標といった金属加工製品が存在していた。

 ある程度モノを加工するという技術がこの里にはあるということを再認識させられた。




 そんな作業を私は里の外れでこっそりと見守っていた。

 あの件以降、私は里作りに参加することを控えていた。


 別に参加してもいいのだが、周りのエルフ達の視線は冷ややかなものだった。

 いうなれば、いじめみたいなものだった。

 普通にあんな空気の中にいたくなかった。

 しかし私がいようがいまいが、新たな里は着々と出来上がっていく。


 「私がいなくてもいいじゃん」

 つい愚痴が出た。

 別に先頭に立ってやりたいというわけではない。

 新たな里は皆で作る。

 洞窟を出るに当たり、エルフ達は全員一致でそう決めた。

 しかし、今その皆に私は含まれていなかった。


 「別に私がいなくても誰も気付いてないみたいだし、外でも行ってみようかな」

 私がいなくても順調に里作りは進んでいる。

 みんなそれぞれの作業で忙しそうにしている。

 何もしていない私がいなくなったところで作業に影響は皆無だ。

 であれば、好き勝手に過ごしてもいいのではないだろうかと少しやけになって思った。 

 そんな本音がついポツリと口から出た。


 「外に行くの?」

 「きゃっ!」

 どこからともなく突然声がかけられ、私はみっともなく悲鳴を上げてしまった。




 「あっ、ごめん。姿が見えたから」

 振り返るとそこにアイリスがいた。


 「こっちこそビックリさせちゃったね、ごめん」

 何だか最近謝ってばかりな気がする。

 そんなマイナス思考なことばかりを考えてしまう自分が少し嫌になる。

 きっとアイリスにもそんな私のやさぐれた態度は伝わっていたのだろう。


 「それはいいけど、外に出るってどういうこと?」

 彼女は心配そうな顔で私を見つめて訊ねた。


 「いやね、やることもないしさ。洞窟を出たときに言ってたじゃん。一回人間の国を見てみたいなって。ほら、今の私は何の仕事もしてないし。今だったら行けそうだなって思ってさ」

 すべての問題が完全解決したようにエルフ達は振舞っているが、人間達に対する謎は依然として残されたままだった。


 もっと人間達について知る必要がある。

 そのためには彼らの国に行く必要があると私は最近強く感じるようになっていた。


 「一人で行くつもり?」

 「どうだろう。誰かいてくれれば安心だけど、さすがに今みんな忙しそうだし、私について来てくれるような物好きなんて…」

 そこまで言ったところで次の言葉が出てこなかった。

 そんな物好きが今目の前にいたからだ。


 「私じゃダメかな?」

 真っ直ぐな瑠璃色の瞳が私を見つめていた。


 「ダメ、じゃないけど、アイリスは仕事あるんじゃなかったっけ?」

 アイリスには今、倒木の運び出しの警備という仕事があるのだ。

 普段は行わない地上での作業。

 獣や魔獣との遭遇の可能性があるため、警備が必要なのだ。


 「大丈夫。ちゃんと説明してくるから」

 アイリスは何故か自信満々に答えた。


 「でも、里長(さとおさ)が許してくれないんじゃない?イリスは大切な戦力なんだし、あえて危険なことに足を突っ込む必要なんてないわけだし」

 「それを言うならリーナだってそうじゃん。リーナだってもうこの里の一員なんだから」

 「私は…」

 それ以上言葉が出てこなかった。

 今の私は本当に里の一員と言っていいのだろうか。


 「それは確かにそうかも知れないけど、私とイリスとじゃ格が違うから」

 何とかひねり出すように言った。

 と同時に何故そんなことを言ってしまったのだろうととも思った。

 今の私はやはり少しおかしかった。


 「何それ?格って何?そんなものは関係ないじゃん!それとも、私と一緒じゃ不満なの!?」

 アイリスは少し怒っていた。

 本当に最近いろんな人を怒らせているような気がする。


 「ゴメン。今のは言い過ぎた」

 私は素直に謝罪した。

 本当に最近の私はどうかしている。

 さすがに精神的に相当参っていると実感させられた。

 唯一といって味方のアイリスも怒らせてどうするんだ。

 心から情けなく思った。


 「イリスがついてきてくれればそれほど心強いことはないよ。だけど今の私は里から嫌われてるし、里の一大事業を抜け出してまで私と一緒っていうことになると、イリスの印象も悪くなっちゃうし」

 「そんなこと気にしてるなら最初からリーナのこと助けてないよ!私は私がやりたいことをやってるの。誰が何を言おうとね」

 真っ直ぐで純粋な瞳に吸い込まれそうになった。


 『私がやりたいことをやる』

 アイリスの言葉に覚悟を決めた。


 「わかった。私は里の外へ行こうと思う。だから一緒についてきて欲しい」

 私はアイリスに頭を下げた。


 「うん、わかった。一緒に行こう!」

 アイリスは笑顔で快諾した。

連休が明けるので、明日以降19時~20時の投稿になります。

引き続き、よろしくお願いします。

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