2-3. 陰口
「ミーシャさん、昨日はすいませんでした」
翌日、ミーシャの元を訪れた私は彼に直接謝罪をした。
「私エルフのことよくわかってなくて…。でもエルフが自然を大切にしていたということを思い出したんです。何も考えずに発言してしまって申し訳ありませんでした」
頭を下げた。
「リーナはまだ記憶が定かではなかったんだったな。それを忘れて大声を出してしまってこちらこそ申し訳なかった」
意外とあっさりミーシャは私の謝罪を受け入れた。
そして逆に自らの言動を詫びた。
すっかり忘れていたが、私は里の中では未だに記憶が完全には戻っていないダークエルフの生き残りなのだ。
転生者ということは限られた一部の者しか知らないことで、ミーシャはそのことを知らない。
こうして私とミーシャは和解した。
しかし私の昨日の発言は私の知らないところでエルフ達の間で知れ渡るものとなっていた。
「木を切るなんてとんでもない」
「そんなこと言うなんて…」
「やっぱりよそ者は信用ならない」
「本当にエルフなの?」
エルフ達から私の陰口をささやく者がすでに出始めていた。
人間達の攻撃からエルフ族を守ったという功績と信頼があると思われていた私の評価はあっという間に下落した。
◇◇◇
「知らなかったって言ってるのに、どうしてこんなこと言うの!」
アイリスは陰口に激怒していた。
「しょうがないんじゃないの?みんなコイツの本当のこと知らないんだから」
私達の元を訪れたエライザはアイリスを宥めた。
「でもリーナは里を救った最大の功労者だよ。ひどくない!」
アイリスはなおも憤りを隠さなかった。
「洞窟に引き篭って震えている間はそうだったのかもね。でも外に出て自由に動き回れるようになると、感謝はあるだろうけど敬意を払うとかいう対象ではなくなったんだろうね。もう逃げなくてもいいわけだし、誰かに従う必要はないしね」
「みんな都合良過ぎじゃない…」
アイリスは口を尖らせて不満を漏らした。
「ちょっと安心しきってるってとこじゃない。ずっと緊張感が続いていたわけだし、それから開放されて調子乗ってるんだよ」
エライザは呆れたように遠い目をして外を眺めた。
「そのうち痛い目に遭うかもね」
そしてポツリと呟いた。
「痛い目?何それ?また人間が来るとか?」
アイリスが聞き返した。
「わかんないけど、それはないんじゃないの?どうなのさ?」
エライザは難しい顔をすると私へ話題を振った。
「外の様子がわからないから何とも言えないけど、それはないと思うから安心していいと思うけど」
「だってさ」
エライザは私の意見を聞くとアイリスを安心させようとした。
アイリスはそれでもなお、複雑そうな顔をしていた。




