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エルフの里は焼かれがち  作者: 北川やしろ
1. エルフと私
29/58

1-29. そして物語は続く

 「これですべてが終わったんだよね?」

 「そうなってくれるといいけど」

 

 遠くから燃え盛る洞窟の様子を見ながらアイリスは心配そうに訊ねた。

 正直想定通りに行き過ぎている感は否めない。

 もしかして政府側は私達がすることを知っていたとしたら…。

 そんな不安が頭をよぎった。


 まぁ、さすがに考えすぎだろう。

 そもそもエルフ達はあまりにも人間達のことを知らなさ過ぎていた。

 受信機の存在といい、私が聞いていた情報からは程遠いものが存在していた。

 まさかこの世界に機械というモノが存在していたとは思っても見なかった。


 それもそのはず。エルフ達はすでに100年以上人間達との交流を断っているのだ。

 エルフの100年はあっという間だろうが、人間はそうとはいかない。

 おそらく人間達はエルフの技術に追いつけと必死に努力を続けていたのだろう。

 そして気付いたときにはエルフを追い抜いていた。

 しかしエルフはそのことに気付いていなかった。

 人間達がそんなにも成長しているとは夢にも思わず、自らと同じように何も変わらない日々をのんびり過ごしていると思い込んでいたのだ。


 もしかしたらこの世界の人間達は私が思っている以上にもっと高い科学技術力を持っているのかもしれない。

 だとしたら炎竜の棲み家に居住地を移したとて安全とはいかなくなる日もすぐに訪れるかもしれない。

 それに、偵察で訪れたラグナシティには受信機ようなメカメカしい機械を製造している工場はなかった。

 そして販売している店もなかった。

 ではあの機械は一体どこから来たのだろう?


 「一度、人間達の国をもっとしっかり見てみたいな」

 「えっ、どうしたの急に?」

 私の独り言にアイリスが驚きの表情で私を見つめた。


 「あぁ、ごめん。ちょっと考え事。この世界の人間達ってよく知らないからさ」

 「確かに私もちゃんと見たことないかも?」

 「一度ちゃんと見に行ってみようと思うんだ。人間達の国の首都へ」

 「首都?近くの町じゃダメなの?」

 アイリスは驚きの表情をした。


 「うん。受信機みたいな機械はあの町にはなかった。あんな機械が他にあるとしたら首都ぐらいだろうから」

 「でも危ないよ」

 アイリスは心配そうに訊ねた。

 「まぁ、そうだろうね」

 私は苦笑いしながら答えた。


 実際私一人だけではそんなところまで行くことは出来ない。

 アイリス達の力を借りなくてはいけないだろう。

 私の我侭で彼らを危険に晒すのはいかがなものかと思う。

 それにエルフは滅んだと人間は思っているはずだ。

 もし見つかってしまったら今までの努力が水の泡となってしまう。

 それでも私は見に行きたいと思ってしまった。


 「それを見て、リーナはどうするの?」

 アイリスは私の目を真っ直ぐに見つめて問いかけた。

 その瞳に彼女の覚悟を感じた。

 「そうだね。新しいエルフの里作りに活用するとか、かな?」

 私は笑顔をアイリスに向けた。

 「そっか…」

 アイリスはポツリと私に聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。


 「ところで、リーナの考える新しいエルフの里ってどんな感じ?」

 何事もなかったかのようにアイリスは笑顔で私に問いかけた。


 私の考えるエルフの里かぁ…。そんなこと考えたことなかった。

 人間達によるエルフ壊滅作戦も終了し一段落した今、ちょっと考えてみるのもいいだろう。

 それでも、すぐに考えは出せない。

 けれど一つだけ答えられることがあった。


 「う~ん、そうだなぁ…。とりあえず、焼かれないような里かな?」


 何と言っても、エルフの里は焼かれがちなのだから。




 ■■■




 ソルガム王国の首都ニードルの夜空に大きな花火が打ち上がった。

 人々はそれを見上げて一斉に喝采を上げた。


 「先日ついに憎きエルフの討伐に我ら王国軍は成功した!」

 王城のテラスから国王は国民に向けエルフ討伐の成功を報告した。


 「お~、ついにエルフが!王国万歳!国王万歳!神聖教会万歳!」

 国民は国王の演説を聞くと万歳三唱で王国の実績を称えた。


 「エルフはひそかにラグラシティの経済に裏から介入し、保有している能力を使い、傍若無人に悪事を働いていたことが判明した。長らくラグナシティはエルフ達によって苦しめられいたのだ。彼らを救うため我らとラグナシティの人々は戦った。エルフの抵抗により多くの関係ないラグナシティの市民が犠牲になってしまった。しかし彼らは自らの命と引き換えにエルフから町を守ったのだ。彼らの勇敢な行動は王国の歴史に刻み込まれることになるだろう」

 国王はラグナシティでの戦いを語った。

 その内容に多くの国民が涙を流した。


 もちろんこの内容は嘘だ。

 悪事を働いていたのは自国民であり、政府と王国軍が商業ギルドを抹殺したのだから。

 しかし、遠く離れた首都の人々はそんなことを知る由もなかった。


 「これでラグナシティは平和になった。これからあの町は今よりもより発展を遂げることになるだろう」

 国王の演説に集まった国民は一斉に拍手した。


 「王国万歳!国王万歳!神聖教会万歳!」


 ニードルの町に国民の声が響き渡った。



 ◇◇◇



 明かりの消えた王城の最も端にある部屋の中。

 一人の少女が国王の演説とそれに集まった市民の反応を見ていた。


 腰まで伸びたストレートな銀髪、朱色に輝く瞳、浅黒い肌の色。

 髪からちょこんと僅かに尖った耳が突き出す。

 月明かりに照らされた姿はまるでこの世の生き物とは思えないほど妖艶な雰囲気をかもし出していた。


 「アイリス様、どうかなさいましたか?」

 暗い部屋の窓辺に佇む少女に初老の男性が声をかけた。


 「ねぇ、セバスチャン。私、ラグナシティに行こうと思うの」

 少女は振り返ると微かに口元に笑みを浮かべた。




 【一巻・完】つづく

ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。

これにて第一巻、完了となります。

「読みにくい」を意識して書き始めた作品ではありましたが、やはり見やすさは大事ですね(汗)


物語はまだまだ続きます。

続編は現在執筆中です。

完成しましたら随時公開を予定しておりますが、現在のところ期日は未定です。

ブックマーク登録などにて、ご確認よろしくお願いします。

また多くの皆様の目に止まりますよう、がんばります。


2024.04月 北川やしろ

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