1-26. 蠢く陰謀
私が全ての真相を把握したのはちょうど一カ月ほど前のことになる。
レノンからの依頼を受けアイリスを含む偵察部隊と共に人間達の町を訪れたときのことだった。
その偵察の結果、ある重要なことがわかった。
それはエルフの里から最も近い位置にある都市ラグナシティで進められているある計画の存在だった。
ラグナシティ。
かつては数十人ほどの小さい田舎町だったが、数年前に行われたという祭りに必要な大量の大木の切り出し拠点として使われることになった。
すると多くの労働者が各地から町に派遣されることとなる。
木材の切り出し際、エルフとの交戦の可能性があるとして政府は軍を町に派遣することにした。
というのも、この国ではエルフはあらゆる災いを人間にもたらす邪悪な存在であるとして恐れられてたのだ。
この事実は今回の調査ではじめてエルフ達も知ることとなった事実だった。
もちろんそのような事実はないのだが、人間達にとってエルフ討伐は国としても重要事項として取り扱われているということが判明した。
エルフ族に最も近い町への軍の派遣は当初警護目的だったのだが、いつの間にかエルフ討伐のためへと目的が変更され、軍はそのまま町に定住することとなった。
すると軍人やその家族が相手の商売が行われるようになる。
何もなかった小さな町の経済が急に動き出す。
次第にそこに新たなビジネスの可能性を感じた商人が次々に進出しだし、町は数万人が暮らす一大都市へと急発展を遂げることとなった。
しかし発展には必ずしも明るい面ばかりではなく暗い面も存在する。
それが盗賊集団の暗躍である。
急速に発展する町に彼らが目をつけないわけはなかった。
暴力や賄賂、略奪など様々な悪事で元々いた商人を追い出すと独自に商業ギルドを結成し、この町の商業の実権を握るようになった。
商業ギルドの裏活動として行われていたのがエルフ狩りだった。
エルフの地肉は「万病に効く」や「摂取すれば不老不死になれる」といった眉唾物の迷信を信じる一部の貴族や成金は未だに多くいる。
彼らは迷信を信じ、エルフ原料の怪しげな薬に惜しげもなく大金を払った。
エルフが金になるということを知った商業ギルドはまず、はぐれエルフになっていたノースフォレストの里が焼き討ちすることにした。
捕らえたエルフのうち、一部はスキルが利用価値として使える可能性があるとして捕虜として捕らえられたが、その大半は薬の原料としてあっけなく次々と殺されてしまった。
エルフ薬の売れ行きは好調で、これに味を占めた商業ギルドはいよいよ森の奥地に集団で潜んでいるというエルフの里を狙うことにした。
しかしどこにエルフの里があるのかがわからない。
森は険しく、場所によっては猛毒ガスが漂っている。
人間が無闇に立ち入るにはあまりにも危険だった。
そこで捕らえて残っていたノースフォレストのエルフを使うことにした。
ノースフォレストのエルフは協力すれば残りのエルフを返してやるという嘘を信じ、人間達に協力することを選んだ。
商業ギルドの目論見通りノースフォレストのエルフ達はエルフの里に潜り込むことに成功した。
そうして人間達はついにエルフの里の場所を特定することに成功したのだった。
ちょうどその頃、人間の国の内部では国民のエルフに対する排斥感情が高まっていた。
政府はこれまで国内で起きる全ての災いをエルフの仕業であると一方的に決め付けて責任転嫁することで国民の支持を受けてきた。
しかしこのところ災いが相次いで発生する以上事態が起こっていた。
首都から離れた場所の災害について政府の行動は遅く、被害の拡大が相次いだ。
明らかに政府の対応の悪さが事態の悪化に拍車をかけていた。
自らの失態によって招いた結果生じた怒りの矛先が政府に向くのを恐れ、災いが起こる度にエルフの仕業だと言い続けることにした。
結果、国民のエルフへの憎悪は膨れ上がり、ついに爆発した。
このままエルフを野放しにしていれば、エルフに対して何もしない政府に批判の矛先が向かいかねないと考えた政府は、エルフ対策の最前線であるラグナシティの商業ギルドと共にエルフ壊滅作戦を実施することにしたのだ。




