1-18. 森は危険がいっぱい
薬草などの採取はまた今度ということになり、私達はリーゴンを中心に収穫を行った。
いつもは見向きもしないカーキンも今回は収穫した。
「今日はこれくらいにしましょう」
シュモライザは収穫の終了を告げると私達は来た道を引きかえす。
道と言っても樹上移動なので目に見える道はない。
来たときとは異なり収穫した果実を抱えている。
当初、私は収穫物を持たない予定だったのだが予定変更となった。
慣れない樹上移動に持ち物まで追加され、私は3人について行くのに必死だった。
「あっ!?」
戻り始めて少したころ、持っていたカーキンを一つ落としてしまった。
しまった、取りに行かなきゃ。
そう思い、私は足を止めると木から下りようとした。
その時だった。
「ダメ、リーナ!」
後ろにいたアイリスが叫ぶと同時に私の体を掴んだ。
「えっ、何?」
突然のことに戸惑う。
私何かやっちゃった?
「今、木の下に下りるのは絶対にダメ!」
「どういうこと?」
アイリスにきつい口調で注意された。
「この下は炎竜が出した猛毒なガスが充満してるの。一吸いでもしたら、たちまちあの世行きよ」
「ええっ!?」
何と恐ろしいことを言うのか。
そんなことは先に伝えておいて欲しかった。
「何それ?炎竜の猛毒ガス?」
詳しいことを聞かせて貰おうじゃないか、とアイリスに詳細を訊ねる。
「この辺りは『炎竜の棲み家』って言われているの。あの山見える?あの山に炎竜が住んでいるって言われてるの」
アイリスは木々の間から見える山を指差した。
そこには切り立った岸壁が特徴的な山がそびえ立っていた。
「その炎竜が昔この辺り一帯で暴れまわったの。そのときに炎竜が出した毒ガスがまだこの森のいたるところに残ってるの。その一箇所がちょうどこの場所なの」
アイリスはそう言うと地面を指差した。
「そんな危ない場所があるんだったら先に教えておいてよ」
私は少し涙目で訴える。
「ごめんごめん。私達は地面に降りることはあまりないから。それに危ない場所かどうかは木を見ればわかるし」
「木を見れば?」
改めて今いる木を見てみるが、他の木と同じように見える。
どこか違いがあるのだろうか?
「ほら、ここら辺の木は葉っぱが尖ってて青い色をしてるでしょ。でもさっきまでいた木の葉っぱは緑色で丸い形をしていたじゃない。この木たちは炎竜の猛毒に耐性があるんだ。ほかの植物は一切育たないだけど、この木は耐性があるおかげでこの一帯で繁殖することが出来てるの。だからこの木が生えているところは地面に猛毒があるっていうことになるんだよ」
「なるほどね。覚えておくよ」
何気ない森が一面に広がっているだけだと思っていたが、実はところどころで違いがあるようだ。
もっと勉強しなくては。
「でもこの毒のおかげで人間達はこの森にまでは来れないの。私達は安全な上から木の種類を判断することが出来るけど、人間達は毒の中に入らないと木の種類が確認できない。でも毒の中に入っちゃったらすぐに死んでしまう。だからそもそもこの森には近づかないんだ」
危険な猛毒ではあるが、その見分け方を使えるエルフにとっては逆に安全をもたらしてくれるというのは何とも複雑な気持ちになる。
しかし話を聞くとふとある疑問が浮かんできた。
「あれ?じゃあ、洞窟の中じゃなくてこの森の中に逃げ込めばよかったんじゃない?」
エルフは危険な場所がわかる。
人間はこの森に来ない。
となると、この森がエルフにとっての一番安全な場所になるはずだ。
にも関わらず、彼らがここに住まないのは何故なのか?
「それはこの森が『炎竜の棲み家』だからだよ。炎竜はエルフも食べちゃうからね。人間も厄介だけど炎竜のほうがもっと厄介。昔この森に住んでいたエルフもいたみたいなんだけど、炎竜によってなすすべなく里ごと焼き払われちゃったらしいんだ。炎竜相手じゃさすがに戦いようがないしね。だからあんまり炎竜を刺激しないようにしているの」
まさか炎竜というモンスターまでいるとは…。
ますますファンタジー要素が強まってしまった。
確かにエルフの里は人間にも焼き払われがちだが、ドラゴンにも焼き払われがちだったのを思い出した。
本当にどこまで行ってもエルフの里は焼かれがちである。
「毒ガスだけじゃないから他にも気をつけてね」
私のことを心配してシュモライザが声をかけてくれた。
「もっと山に近づくと突然熱湯の泉が吹き上がってきたりするからね。木の上だから安全と思っていたら痛い目に遭うこともあるから」
突然吹き上がる熱湯の泉に吸うと死んじゃう毒ガス…。
何だろう?どこかで聞いたような気がする。
「どうかした?」
少し考え込む私を見てアイリスが心配する。
「いや、何でもないよ」
今考えても仕方がない。
考えるを止めることにした。
「ねぇ、日も暮れてきたし早く帰ろぉよ!」
エライザが催促する。
すぐに行くと答えると私達は足早にエルフの里に帰還した。




