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エルフの里は焼かれがち  作者: 北川やしろ
1. エルフと私
10/58

1-10. 疑念、そして…

 「だって、あんたがさっきから言ってることって人間達の世界の常識だし。エルフはそういう考え方は持ってないんだけど」


 「なっ!」

 盲点だった。

 思わぬところからの突然の反撃に言葉が出ない。


 「あんた記憶喪失なんでしょ。なのに、何で人間達の世界の常識はそんなに知ってるの?」

 「それは…」

 エライザはなおも私を追及する。

 それに私はすぐには答えられない。


 「どういうことだい?」

 さすがにタマラも口を挟んてくる。


 「なんかねこのダークエルフ、無駄に人間達のことは知ってるの。記憶喪失のはずなのにね。そしてエルフのことはまったく知らない」

 嫌味のようにエライザはねっとりとした口調で糾弾する。


 「それにずっと私達のこと「人」って言うんだよね。エルフは絶対に相手のことを「人」だなんて言わない。口が裂けても。タマラさんもそうでしょ?」

 「それはそうだけど…」

 タマラもどうやら引っかかるところがあるらしい。

 疑いとも心配とも言えるような視線を私に向ける。


 「そんなわけないよ!エライザだって私のスキルは知ってるでしょ!」

 アイリスがたまらず叫んだ。


 「知ってるよ。私は何もあんたのことを疑ってるわけじゃない。ただ、あんたのスキルを騙せるほどのスキルを使われたらわからないじゃない」


 「『神眼(しんがん)』を騙せるスキルって…。そんなのあるの?」

 私を含めて三人が一斉にエライザを見た。

 「そんなのは…知らないけど…。あるかも知れないじゃない!」

 「知らないって…」

 タマラがつぶやく。

 どうやら見切り発車だったようだ。


 「あのね、確かにあんたの言うことの理屈は通ってるところがいくつもあるよ。だけど、肝心のところが抜けてる。まだ推定無罪を覆せるほどじゃないね」

 「でも、おかしいじゃない。なら私の疑問にはちゃんと答えてよ!」

 エライザは私に向かって指を差す。

 「……」

 私はどうしていいのかわからず、うつむき黙ることしか出来なかった。


 本当のことを言ってしまうのが一番楽なのだろう。

 しかし、そんなことを果たして彼女達は信じてくれるのだろうか。


 「確かにちゃんと答えることは必要。モヤモヤした状態では何にもいいことなんかないからね」

 タマラは私の様子を気にしながら声をかける。

 確かに彼女の言う通りだった。

 このままではただ私に対する疑惑が深まっただけになってしまう。

 何とかエライザを納得させることが必要だ、そう考えていたときだった。


 「まぁしかし、今までのすべての事実が何の疑いもなく一つに繋がることなんて『異世界からやって来ました』くらい、ぶっ飛んでないと成り立たないけどね」

 「確かに異世界転生者には『神眼(しんがん)』が効かないなんて言われているけど、さすがにそれは。御伽噺(おとぎばなし)じゃあるまいし」


 タマラの仮説をエライザは瞬時に否定した。

 しかし、


 「リーナ?どうしたの?」

 アイリスが心配そうな声を上げた。

 「どうしたんだいリーナ!真っ青じゃないか!」

 タマラはすぐさま私の元に駆け寄ってきた。

 ところでダークエルフってすでに地黒なのだが、真っ青になっているとか違いはどうやってわかったのだろう?

 えっ、今はそんなことはどうでもいいって?


 「いえ…。あの…」

 私は声にならない声を返した。


 死ぬかと思った。

 全身の血が沸騰するような感覚に襲われ目の前が真っ白になる。

 冷や汗が止まらない。

 全身が震える。

 立っていられず膝から崩れ落ちた。


 「と、とりあえず医者だ!医者を呼んでおくれ!」

 タマラが叫び緊急事態を知らせる。


 「リーナ、しっかりして!どうしちゃったの!」

 アイリスが泣き叫んでいた。


 『今までのすべての事実が何の疑いもなく一つに繋がることなんて『異世界からやって来ました』くらい、ぶっ飛んでないと成り立たないけどね』


 頭の中にタマラの言葉がグルグルと駆け回り、私の意識は途切れた。

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