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語り継がれる詩《ウタ》  作者: アルエルア=アルファール
第一章 紡がれる詩
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中央都市国家アーヴァン


――中央都市国家アーヴァン。


前線、城塞に続く各種主要な都市国家を束ねる人界の要。

貿易、物流の中心地でもあるこの都市は王城リトヴァークを中心に城下町が立ち並び、

人の往来が増えるにつれ増設された商業施設や住居が円形に都市を形作っていた。



「いつでも活気があっていいところですよね~!」



「まずは宿探しだ……、流石にくたびれた……」



「いいところ知ってます!案内しますよ~」



背に乗って楽をしていたとは云え、微塵も疲れを見せないエルフに僅かな称賛を送る。

侮っていた心持ちを改めることにしよう。


……しかし。

案内された宿は高台に設置されたただの物置小屋だった。


折角改めたものを振りかぶって遠くに投げ捨てる。



「なんとここ、無料です!!」



「よし分かった。たたっ斬るからそこに直れ」



「ちょいちょいちょぉおおい!待ってくださいって!!」



慌てたアルアが指を鳴らす。


物置小屋だった空間は一瞬にして広がり、

綺羅びやかな調度品とフカフカなベッドが現れ、暖炉の仄かな暖かさが室内を満たした。



「アルア謹製高級宿、ジ・アルファール本店にようこそおいでくださいました~」



備え付けのベランダからは夕暮れ刻の街が一望でき、街の背景に流れる大河川ヌフロゥドまでも見渡せた。

普段から野営が常のオルネアにその景色がもたらす癒やし効果は半減してはいたが、肩の力を抜くには十分なものだった。



「調度品は全て魔法か?」



「いいえ、実物を魔法で呼び出してます」



「そうか」



暖炉の火に手を翳すオルネア。


装備品を解いて身軽になったところで夕暮れの街に繰り出す。


消耗品の買い足しに武具店に立ち寄り。

投擲用の短剣や火起こし用の油。

外套、剣留の革紐を買い足す。


――そして美味い屋台で買い食い。


冒険者ギルドで掲示されている依頼の確認。

酒場での聞き込み調査。


――そして美味い屋台で買い食い……。



「煩わしい」



「ぐぇらッ!!」



次の屋台に疾走するアルアの襟を引っ掴む。


物置小屋改めアルア謹製の宿に戻る頃にはすっかり日も暮れ、それでも街の活気はひとつも衰えてはいなかった。

引っ切り無しに訪れる物資と、それを搬入するために開閉を繰り返される門の音が遠くで響く。

高台まで続く上り坂には食堂が何件も並び、その芳ばしい香りが時折鼻腔をくすぐっていった。



「良いところだ」



「良い、じゃありません。最高に良いのです!えへっへ~」



そう言いながらアルアは、ずっと張り詰められていたオルネアの気が緩んでいくのを感じ取っていた。

オルネアもまた自身の緩みを気取られたことを感じ取り、アルアに向き直る。



「オルネアさん、貴方の基礎情報は大方記述し終えました。

間違ってたら言ってください、訂正します」



名前、オルネア。

一人称、オレ。

種族、ヒト。

年齢、25。

身長、186。

体重、87。

黒髪、前髪は目に掛からず、後髪は肩まで無造作。

眉間に二本の皺。

瞳の色、灰。

虹彩、黒。

右利き。

硬い物は左奥歯で噛む。


装備品。

右腕、軽魔獣殻装甲。

左腕、重魔獣殻装甲。

上半身、可変式装甲。背部変形機構有り。

下半身、脚部可変式装甲。大腿部変形機構有り。

背部、革紐留、両手剣一本。

腰、革紐留、短剣七本。

外套。

装備品重量67。



「……で合ってます?」



「怖い」



戦闘中、背に乗った時、野営の仮眠。

ありとあらゆる隙を突いて手に入れたであろう情報に身震いする。



「やだなぁ引かないで下さいよ~」



得意顔なエルフは尚も続ける。



「冒険者ギルドでは何を?」



「主に大型魔獣の依頼を探っていた。酒場でも同じだな」



「ドラゴンと思しき仕業を見抜いて依頼を受ける……その繰り返しなんですねぇ。

アーヴァンへは補給と休息の為に?」



「それもあるが一番の目的は、王への謁見だ。

そこでドラゴン飛来の報告と対抗手段の模索を願い出る」



「知らせないのが優しさだったのでは?」



「リトヴァーク王ならば話は違ってくる。

彼の王であれば対抗手段を持ち合わせているかも知れない」



四半世紀前に突如として樹立された新帝国カザリア。

皇帝パシダル・ラヌ・カザリアはこの世界の真なる継承者として名を上げ、世界に宣戦布告。


しかし、それを真に受けるものは誰ひとりとして居なかった。


兵力まかせの奇襲によって幾つかの都市国家を手中に収めるも、その全てで防衛に失敗。

都市国家奪還作戦が立案され滞り無く遂行。

その総指揮を執ったのが当時傭兵のリトヴァークであった。


その後、都市国家それぞれに纏め役となる王を配置し、有事の際の指揮を取らせるよう促したのも彼である。



「では、リトヴァーク王の命でドラゴン狩りを?」



「いや、そういう訳じゃない。


ドラゴンは……オレの個人的なものだ。

襲撃があれば彼の王を尋ねる気だった。それだけなんだ」



重要な事を濁された。


・突如として出現したドラゴンの謎。

・ドラゴンと類似するオルネアの耐性。

・圧倒的などという段階をとうに越えている強さ。

・強さに反比例する知識、経験の不足。


いつもなら。

構わず質問攻めにして相手が答えるまでやめない筈だったのに。

それで嫌われようが何されようが構わない筈だったのに。


でも何故か。

オルネアさんにはそんな行動を取れずにいた。


怖さ。苦さ。黒さ。渦巻く炎のような何か……。

その全部が混じったような心持ちを見上げて。


これは一体何の感情なのかと。


言語化に時間を掛けるあまり、百と九日ぶりに眠りに落ちた。


目覚めた瞬間、誰の気配も無いのを感じて。

慌てて謹製宿屋を閉じ。


王城リトヴァークへと駆けるのであった。


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