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語り継がれる詩《ウタ》  作者: アルエルア=アルファール
第二章 刻まれる詩
36/63

少女の願い


膝をつき、肩で息をして、

それでも剣を支えに、倒れることはしなかった。


――アーヴァンを縦に別つ剣閃の跡。


それを踏み越えて歩む――剣神。


オルネアとは対照的に、息の一つも上がってはおらず。

微塵も衰えない体力と気迫で以て剣士を見下ろす。


と……。



「立てるか?」



投げかけられた言葉と、差し伸べられた手。


それは戦闘の終わりを告げており、

安堵と共に湧いてくる感情は覆しようのない敗北を表していた。


九合の絶刀を掻い潜り、未だ軋む手と――。

九合の戯れを放ち、未だ神髄を湛える手が触れる。



「名を聞こう、救国の剣士よ」



「……オルネア」



「お前がオルネアか。

其処な魔女に知識を叩き込まれた故、お前の事は知っている。


その願いの事も、な。


案ずるな。

この身は人の為にある。

重畳たる成果は、万雷の戦果を以て報せよう」



踵を返して王城を去って行く剣神。

あれだけ固執していた王へはもはや目もくれず。


その背を見つめ、掛ける言葉を探すオルネアだったが……。


――敵わなかった。


その事実がいつまでも付き纏う。


それは喜ぶべき事で在る筈が、

それは望んでいた事で在る筈が、


――何故こんなにも……。


軋む手と身体。

その先で握られた、軋む事も歪む事もない剣。


去って行く剣神の、その姿が見えなくなるまで。

終始無言で剣を握りしめるのみであった。



破壊され尽くした王城で、最早何もかもが静けさを深める場所で。


激情した王の言葉が突き抜ける。



「ルファシアッ!!」



畏敬に伏していたリトヴァークの剣は今やただの鋼に戻っていた。


鋭く首を狙う剣を杖で受けたルファシアだったが、

怒りに身を任せたリトヴァークは形振り構わず、

もう片方の手でルファシアの首を締め上げる。


全力で首を絞められながら、それでも表情ひとつ変えずに微笑んだままの至法。



「貴様……、この俺を騙したなッ!?」



「騙した?そう?

約束なんて、ただのひとつも、していなかったと、思うけれど?」



「この魔女がぁッ……!!」



怒りに歪む顔、首を絞める手に更に力が込められる。



「あら、そんなに動いてしまって……、()()()()()?」



一度騙した者の言葉を真に受ける者など居ない。

それが油断を誘う甘言であれば尚のこと。


だが。


その言葉を信じる他ないほどに。


己の首筋に、致命的な違和感が奔る。


取りこぼす剣――。

首を絞める手を大急ぎで自身の首へと持って行き、

有らん限りの力で抑えつけるリトヴァーク。



「いつ、切ったの、かしら?全く、視えなかったわ……。


でも、そうやって、しっかり、抑えておけば、大丈夫よ。

じゃあ私は、剣神様のお見送りに、行ってくるわね」



蒼白となったリトヴァークの傍らを通り抜け、

オルネアへと微笑み、アルアの頭を撫で、

至法ルファシアは悠然と王城を後にした。



降り注ぐ月光の下――。


白装束を凜と輝かせながらアーヴァンの正門へと差し掛かる剣神。

その傍らに顕れた魔女を一瞥するも歩みは止まらない。



「あら、剣神様、刀はどこへ?」



()()()()

些か強すぎる剣気を放っていたのでな。


……して、何用だ?」



「ただの、お見送り、よ」



「見え透いたことを……。

吾が身が何で出来ているのか、忠告しに来たのだろう?」



「わっ、流石ね。

でも、知ってるなら、話が早いわ。


永くこの世に居たいなら、今夜の様な事は慎むべきよ?」



微笑むことを辞めた魔女の、その真剣な顔を見つめ返す。



「如何に召喚者と言えど、その理ごと切って伏すなど造作も無い。

……それを知っていながらの忠言、か……。


――良い。

此度の戦、貴様が手綱を取れ。


さあ願え。吾に何を望む?」



「うふふっ。私はね――」


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