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想いの声  作者: 友川創希
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第6話   ただ話すだけの会【僕side】

  昨日よりも体が軽い――つまり気持ちが楽。きっとこれは三織のせいなんだろう。僕を支えてくれる君は一体なんだろう。


 いつものように冷たい水で顔を洗い、高校の制服に着替え、朝ごはんを摂る。今日はトーストを焼きマーガリンをつけて食べた。僕はけっこうマーガリンをつける派だ。今日の夜からは三織がご飯を作ってくれるのか……。なんか申し訳ない気持ちもするし、少しずるいことをしてる感じもする。でも、楽しみでもある。


 いつもより3分だけ家を出て、バス停まで歩き、バスに乗る。バスは混んでいるけど、いやな混みではない。高校最寄りのバス停に着くとバスを降り、校舎に入る。教室にはまだ3分の1くらいの人しかいなかった。


「おー、おはー」


「うん、おはよう」


 頼希が登校してきた僕に気づき声をかけてきた。それを僕は返す。


「今日放課後空いてる?」


「まあ……」


 放課後特にやらなければいけないことはないのでそう答える。


「じゃあさー、世も一緒に参加しない? ただ話すだけの会」


「えっ?」


 頼希が何か僕に意味のわからないものを誘ってきた。


「蒼佳が言い出したんだけど、部活今日ないやつで集まってただ話すだけの小さなイベント。まあ楽しいんじゃないかなーってことで俺も参加する。あと月っていう人も参加するらしい」


「そうなんだ。じゃあ、参加するよ」


「おっけー」


 たしかに小さな楽しみというのも大切だし必要かもしれない。せっかく誘ってくれたならのるかと思いオーケーした。


 僕は自分の席に座ると、昨日交換したばかりの三織のラインに、『少し帰るの遅れる』と送る。するとすぐに既読がつき、『いいよ、ご飯作って待ってるね』と返ってきた。このラインの内容だけ見てると親子とか夫婦とかのラインのやり取りにしか見えない。でも、僕と三織はそういうのではない特別な関係なのだ。


「誰に連絡してるの?」


「えっ、誰でもいいでしょ……」


 隣の席の蒼佳さんが僕のスマホを覗こうとしていたので、慌ててスマホを横によけた。あやうく蒼佳さんをスマホ覗いた罪で裁判で裁かなきゃいけないことになるところだった。


「その……家族だよ」


 なんて言えばいいのかわからず、とりあえず家族ということにした。実際今日からそういうような形になるんだし、決して間違ってはいない。


「そうか、家族かー」


 なんだーという感じで蒼佳さんはそう言った。一体誰だと思ったんだ。


「なんか見たことない表情だったから」


 そう言うと蒼佳さんは何事もなかったかのようにスマホを見始めた。僕も覗きたかったけど、覗いた罪に問われても嫌なのでそれはやめておいた。




 いつものように授業が終わり、放課後呼ばれた時間になると呼ばれた場所に入る(それまでは図書室で時間を潰した)。ここは隣のクラスの教室だが今日は部活等では使わないらしいので使えるみたいだった。


「あ、世くん」


「いらっしゃい」


「来たか」


 僕が入ると3人が僕の方を向く。頼希と蒼佳さんと月さんがいた。


「じゃあそこに座って、三織ちゃんも来ればよかったのにね」


 僕は蒼佳さんにそう言われて椅子に座る。僕らは今4つの机を合わせて、その周りを囲むようにして並べられている椅子にそれぞれ座っている。


「しょうがないよー、忙しいみたいだし」


 まさか、夕食の準備とかのために三織は断ったのか? それなら少し申し訳ない。僕だけこういうことして。


「まあ、ドーナツでも食べてお話ししよう!」


 月さんはそう言って机の真ん中にあったミスタードーナツの箱を開いた。


「ちょうど4つあるから、ストロベリーリングとハニーディップ、ポンデリング、そしてオールドファッション!」


 月さんは指差ししながらそれぞれのドーナツの名前を紹介していく。まじか! 名前全部覚えてるんだ。僕はあんまりわからない。けどミスドは好きだ。


「どうやって決める? アミダ?」


「でもそれだとフツーすぎない?」


 月さんの言ったことに対して頼希がそう言う。そうか? 別にアミダでもいいと思うけど。


「じゃあこれは? 面白いエピソードを言えた順に選ぶって」


「うん、それでいいと思う」


 決まらなさそうだったし面白そうだったので、僕は蒼佳さんの意見に同感した。すると月さんと頼希もそうだねという感じになったのでそれで選ぶ順番を決めることにした。


「じゃあ、俺から。んー、まあこれは1年前くらいの話なんだけど、ジョギングしてたら地面にバナナの皮があって滑って、その後また同じ皮で滑ったんだよ。あれまじで滑るんだなー、尻に絆創膏ばんそうこう貼ったよ」


 まず始めに頼希が面白いエピソードを言った。本当にバナナの皮で滑るんだ。ただの噂だと思ってた。尻に絆創膏!? それは! おもろしろい!


「キャハハ! アニメなら分かるけど、実際にあるんだ」


「ほんと!」


 蒼佳さんと月さんは面白そうに笑っていて、僕もそのときの頼希の絵が見えて少し笑ってしまった。確かにアニメならよくありそうだけどほんとにあるんだ。今度から気をつけよう。


「まじで気をつけたほうがいいからなー」


「うん。じゃあ次、私。んー何かないかなー。あ! 1週間くらい前の夜に目が覚めて喉渇いたなーと思ってコップに注いだのが賞味期限切れのドレッシングだった」


「蒼佳ちゃんそれ寝ぼけすぎ!」


「ドレッシングはないだろ、それも賞味期限切れの。飲んでもうまくないよ」


「結構面白い!」

 

 次は蒼佳さんが面白いエピソードを言った。間違えてもドレッシングもないでしょ! それも賞味期限切れの。さっきと同じくらい面白い話だ。


「んー、じゃあ私か……。そうだな。私が前にコンビに行ったときに小さな男の子が靴下買っててレジで『お父さんに暖かいもの履かせたいからレンチンしてください』って言ってて笑っちゃったよ!」


 次に月さんが面白いエピソードを言った。


「かわいいけど、面白い!」


 そう、頼希の言う通りかわいいけど面白い! レンチンして暖かいもの履かせたいなんて子供は発想力が豊かだな。


「ほんとだよ! 月ちゃんいいところに遭遇したね」


 こういうほっこりする話、好きかもしれない。僕がコンビニでこう言ったら店員さんはどんな反応をしてくるだろうか。たぶん目が点になるだろうし、僕もそのコンビニにはいけなくなるくらい恥ずかしくなるだろう。


 で、最後は僕の番か……。

 

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