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想いの声  作者: 友川創希
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第42話   漫画日記【私side】

「隆先輩たちから贈り物、もらえてよかったね」


「うん、ありがたいよ」


 世の嬉しそうな顔を見るとこっちも嬉しくなる。明日もまた、こんな感じの幸せに包まれた顔、見えるといいな。


「実はおばあさんからもいただいたんだ」


 おばあさん――確か前に世が常連さんのおばあさんがいるって言ってたな。その人のことだろう。


「なにもらったの?」


「お抹茶。僕、意外と好きなんだ」


 へー。そうなんだ。意外と渋い系(?)もいけるんだ。私もお抹茶好きな方かな。和菓子とお抹茶とかいいよね。旅館とかで出てきそう。


「そういえば、どうして今日三織の家なの? 今日金曜だから本来だったら僕の家だけど……」


 そう、今日は金曜なので本来なら世の家に帰る。でも、世の家は今パーティー仕様になっている。明日の世の誕生日に向けて。だから帰えられると困るのだ。やっぱパーティーはサプライズにしたいし。


「なんか、世の家の近くで工事が入るらしいから、うるさくなるかなーと思って」


 元々決めていた理由を世に言う。もちろん工事があるのは嘘。工事なんて本当はない。


「そうなんだー」

 

 あまり興味がないのか、気にしていないのか、そんな感じだった。でも、それなら疑われなくていいだろう。


「明日の夕方には工事が終わるみたいだから、夕飯前に世の家に行こうか」


「わかった」


 午後に帰るのも午後にパーティーを予定しているから。私がそう仕掛けた。明日衣海ちゃんがやってくれたインタビューカードーで知った世の好きなもの――イチゴを使ったケーキも出る予定。まあ、取りに行くのは月ちゃんだから落とすことはないだろう。


 今日の夕飯は明日が豪華だから、簡単なもので世には悪いけど済ませた。でも、世は私の作った質素なご飯(豆腐丼と卵焼き)をいつも通り美味しいと言ってくれた。まあ、世にとってはご飯が食べられるそのこと自体が嬉しいのかもしれない。


 私がお風呂に入ったあと、世がお風呂に入った。今、私はいつもどおりの漫画を書き留めている。


 今日の出来事ではなく、今日までの出来事を漫画にしてみよう。


 まず1コマ目にはやはりあの日――世と暮らすと決まった日。その日の君の瞳を描く。そのたくさんの気持ちを含んでいる君の瞳を。


 君の瞳を大きく、はっきりと書いた。


 2コマ目には、なにを書こう。やっぱり君との世界を歩いた――箱根への旅行のことかな。家族だから行きたいとか言ったけど、本当はただ君と行きたかったんだけど。なんか、世と行ってみたかった。私は雲みたいな白いものが湧く大涌谷の景色を描いた。


 3コマ目はやっぱり雨の中の少女――衣海ちゃんとの出会いかな。


 衣海ちゃんの寝顔を私と世が見ているところのシーンを描く。温かい空気とともに。


 最後のコマには『ありがとう、世』という文字を7色の虹がかかる描写とともに書いた。


 本当の気持ちを。本当のありがとうを。


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