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想いの声  作者: 友川創希
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第22話   景色が作るもの【私side】

私たちは15分後、2人と再会し、どこに行くか聞いたけど2人は「行き当たりばったりだから」って言われたので、私たちが行こうとしていた箱根関所に行くことになった(2人が気を使ってそう言ったのかもしれないけれど)。


 関所につくと、売札所で観覧料を支払い、江戸の世界――箱根関所の中に入る。


 入り口には大きな門(5メートルぐらいはありそうだ)が堂々と来た人を見守るかのように立っていた。『京口御門』という看板。私たち4人はそこで記念写真を撮る。さっきよりも自撮りはうまくいった。


「ここで昔の人は身支度を整えたのか」


 頼希がそう言う。彼の得意教科は歴史。なのでこういうことについては詳しい。世によると特に江戸時代と平成時代が好きらしい(江戸時代は武士が好きだからみたいけど、頼希が平成時代はなぜ好きなのかは世もよくわからないみたいだ)。


 関所の中をカメラに収めていく。私はあまり歴史には詳しくないけど、興味深いものばかりだった。さっきとは違うけれども同じように楽しさを感じている。


「あ、獄屋!」


「月ちゃん入れるみたいだよ」


「へー、じゃあ一緒に三織ちゃんも入らない?」


「うん」

 

  月ちゃんは箱みたいに四角いスペース――獄屋(牢屋)を見て少し喜んでいた(?)。私が入れるみたいなことを言うと、月ちゃんはそこに入った。昔、悪いことをしたり強引に関所に入った人が入れられたんだろう。私も月ちゃんと一緒に少し入ってみることにした。牢屋にしては居心地がいい気がする。昼寝もできそうだ。


「ねー、世くん写真お願い」


「りょーかい」


 世は月ちゃんにそう言われて牢屋にいる私たちを撮った。


「なんか私、牢屋でピースしちゃったな」


「そうだね、おかしいね」


「僕も入ろ。頼希は?」


「じゃあ、俺も」


 私たちが牢屋から出た後、次は世と頼希が牢屋に入った。意外とお二人さん牢屋がお似合いだな。


「意外としっかりしてるな」


 頼希が周りを確かめるように触り、感心しているようだった。


「世は何の罪でここに?」


「えっ僕? んーいつも美味しいご飯食べちゃってる罪」


 世の罪に何だか私は嬉しくなってしまう。直接じゃなく間接的に言われるのも私、弱いんだよな。昨日の焼きそばも美味しそうに食べてくれたし(野菜を切って、焼きそばを炒めただけなんだけど)。世も少し前より料理が上達してきた。焼きそばのキャベツを切ってくれたけど、そのスピードも上がってる。それに前より全然きれいに切れていた。


「おー、俺はな、まあ人生頑張ってる罪?」


「そうか、そんな頑張ってる?」


「まあ、世の見えないところで」


 頼希の言ってること本当かなと思うけど、人は見えないところで頑張る生き物。知らないうちに頑張ってしまうものだ。


「三織ちゃんは何罪?」


「んー私は月ちゃんのこと好きすぎる罪かな」


 月ちゃんに言われて素直にそう答える。


「私も三織ちゃんのこと好きすぎる罪」


「皆、いい罪でここにいるんだね」


 そう、私たちは日々《《いい》》罪を犯してしまってるんだ。だから、人にしてもらったらその分、罪を返さなきゃいけないな。


 2人が牢屋を満喫した後は、頼希があそこからなんかいい景色見えそうじゃないと指さして言ったので、そこの小高い所まで階段を登り、広い丘みたいなところに出た。


「お、いいじゃんー」

 

 先頭の頼希が一足早く着いたようだ。


「富士山が見えるよ!」


 私たちもそこに着く。そこに広がった壮大な景色は大きなキャンパスに書いた絵のように綺麗だった。どこか遠くの国のよう。富士山が本当に目の前にある。


 近くにある青いまるで空みたいなのはきっと湖。自分が夢の中にいるみたい。でも、その景色が鮮明に私の瞳に記憶される。私の瞳を潤わせてくれる。


 ――自分もこの景色のような道を君と作りたいと思った。

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