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想いの声  作者: 友川創希
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第19話   新しい本屋【僕side】

「ねー、月、これは?」


 ポップみたいのを貼り終え、この店の様子が大きく音楽がかかり変身したかのようになった。でも、最後に四角い抽選箱みたいなのが残った。


「これねー、小さい子が結構来てくれるって言ってたでしょ。だからおみくじ的なの作ったら少し喜ぶかなって思って。でも、なに吉とかは書いてないから気持ち崩すことはないと思う」


 なんだそれ、この方はどこかの社長さん!? 彼女は天才!? 本屋でおみくじなんてすごいこと考えたな。


「すごいな……」

 

 頼希と同じようなことを考えていたようだ。頼希も感心している。


「三織ちゃんとかにも手伝ってもらったけど」


 そういえば前に月さんたちのクラスの前を通ったとき月さんとか三織たちが何かしていた。あのときこれを皆で楽しそうに作っていたのかもしれない。


「なくなりそうだったらいつでも言って! いつでも作るから」


 こういう小さな事が人が楽しめることにつながるんだろうな、と感心してしまう。


「なんか、豪華になったね」


 店の奥から少し太い声がした。おじいさんみたいな声だ。


「あ、店長」


 頼希は出てきたおじいさんをそう紹介した。ザ・本屋の店長さんという感じの75歳くらいの男の人だった。


「すみません勝手にやっちゃって……、大丈夫でしたか」


 月さんがやりすぎちゃったんじゃないかと少し心配そうにその人に聞く。


「全然いいよ。若い人たちが頑張ってくれるのは嬉しいよ。若い人には未来を作って欲しいからね。ん、これは?」


 おじいさんはさっき僕らの話題になっていた箱を指差し、なにか尋ねた。月さんはさっき僕らに説明したようにこのおみくじについて説明した。


「へーそうなのか。じゃあ1ついいかな?」


「どうぞそうぞ。2人もいいよ、たくさんあるから」


 月さんのお言葉に甘えて、おじいさんと、僕と頼希は順番におみくじを引いた。


「えっと、お! 願いが叶いますだって! やった」

  

 おじいさんは月さんたちの作ったおみくじの結果に喜んでいて、それが少し大げさ(本人にとってはそう思ってないだろうけど)だったので少し笑いそうになってしまう。僕も自分のを見る。そのおみくじにはラッキーカラーやラッキーアイテムとか、今後の運勢について書かれていて、思ったよりも本格的だった。ちなみに僕のラッキーカラーはピンクで、今後の運勢は伝えたいことを伝えればきっといい未来が待ってるよで、ラッキーグッズは……。


「どうだった? 俺は『誰かのためになることをすれば自分にもいいことが起こるよ。人の役に沢山たとう』だった」


 このおみくじはなんかいいことばっかり書いていて、全員が嬉しい気持ちなるように作られているみたいだ。こういうおみくじの形もいいのかもしれない。


「なんか、ありがとな、これ報酬。まあ、月のほうが頑張ってくれたから金額は多くしてあるけど」


 そう言って頼希は僕と月さんに図書カードを渡してきた。僕のが500円分だったので、月さんのは1000円とか2000円だろう。


「僕はいいよ」


「そんな遠慮するな。遠慮するならはもっと他のことにしろよー」


 まあ、遠慮する必要もないかと思い、このカードで今度好きな本でも買おうかな。500円だけど小さなプレゼントをもらえた。


「あのさ、これ報酬とは別なんだけど、お酒が飲めるランチビッフェの食事券なんだけど、どっちかもらってくれない? うちの親、お酒飲まないから」


「私のお父さんが健康のために今禁酒中で……」


「そうか、世は?」


「僕も大丈夫かな」


 飲みますけど、母は病院のベッドで寝ていますし、父は行方不明なんですよね……とは流石に言えない。つまり無理だな。せっかくのところ悪いけど。


「そうか……あっ、いらっしゃいませ」


「こんにちは」


 あれ――


「あ、先生ですか」


 頼希の言った通り僕のクラスの担任の女の先生の彦坂ひこさか先生、月さんとか三織のクラスの担任の男の先生の飛地とびち先生が一緒に来ていた。


「ここ、矢島やしま君のバイト先なんだ」


 彦坂先生がそう言う。そうなのです、この矢島頼希少年は本日もここで頑張っております。本屋のバイト中なのです。


「先生待って待したよ!」


「待ってた?」


 頼希はふいに月さんに問いかける。


「あ、私が先生呼んだの。なんか本屋さんに行きたいって話てたから、ここオススメしたの!」


「なんか、オススメされて。教科に関する本でも買おうかなと」


 ちなみに彦坂先生は英語、飛地先生は社会の先生だ。この2人は隣のクラスだし、年齢もどちらも20代だし、けっこう仲もいいのかもしれない(まあ飛地先生は結婚してるから恋には発展しないと思うけど)。


「ねえ、頼希、彦坂先生は飲まないけど、飛地先生は飲むからそれ、あげれば」


 僕はさっきの食事券のことを思いだし、頼希の耳元でそう言う。飛地先生は入学式の自己紹介のときに一番好きな瞬間は仕事の後のお酒って言ったのを今思い出したから、もらってくれるかもと思ったからだ。


桑本くわもとさんは、なんか買うの?」


 彦坂先生が桑本さん――月さんにそう聞く。


「いや、今日は頼希くんのお手伝いに来たんです」


 月さん少し威張るように言う。


「そうなんだ。前にも来たことあったけど、雰囲気変わったね」


「実は私たちでやったんです!」


「すごいじゃん!」


 月さんと彦坂先生の相性いいな。なんか盛り上がっている。僕も2人の会話に入ろうかと思ったけど、2人のほうがよさそうだからやめておいた。


「あ、先生よかったらどうぞ。これ奥さんと。うちの親、お酒飲まないんで」


 一方あっちは飛地先生に頼希がさっきの券をあげようとしていた。


「えっ、食事券? いいの?」


 先生はその件を見ると(バレないくらいに)目を輝かせていた。やはりお酒好きなようだ。


「はい。これでお小遣い減額ももしかしたらなくなるかもですね!」


「それはありがたいけど、それうちのクラスの人しかそれ教えてない気がするんだけど……」


「あのボードけっこう他の人も見ますし、広がってますよ」


 僕も昨日三織がとった写真でそのボードを見たし、けっこう話題になってるぽい。


「え、ほんと、それは早急に阻止しないと」


「もう無駄だと思いますけど、まあ頑張ってください」


 飛地先生は少し諦めたような感じだった。まあ、いまさら止めても意味ないよな。もう広がってるし。そういう些細なことって広がるから今の時代は怖いんですよ。いや、これはボードだしスマホとか関係ないからどの時代にも通用することかもしれない。


 彦坂先生と飛地先生はそれぞれ1冊ずつ本を買って行った。僕も三織がご飯作ってくれてるだろうし、そろそろ2人にバイバイを言って帰えることにした。


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