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我が世誰そ

「入室したのは藤代、横谷、山柴。そして煙草盆を片付けた人物」


 とつとつと語り始める、解答を始める小山田佳凛。

確かに背景的な情報は開示した。だが彼女が視線を向けるのは手帳に書かれた箇条書きだった。これだけで順番がわかるというのだろうか。

岸山はその自身の手帳を、彼女の手元へと置いた。


「その人物とは」

「アタリはついてるでしょ? 岸山さん」

「……、ユキシロか」


 考えるまでもなく彼女は「お付き」なのだ。煙草盆を片付けたのは彼女で間違いないだろう。


「そしてキーワードは懐中時計、煙草、花、山高帽

 入出順に考えると……」


 トントンと、佳凛が手帳を細い指先でたたく。

促されるように万年筆を差し出した。受け取った万年筆で手帳の箇条書きの下に数字と文字を書き込んでいく。


『藤代、懐中時計、最後の客である可能性は皆無』

『山柴、煙草の男の直後』

『横谷、最初の客ではない。花を活けたのも横谷ではない』

『三番目は山高帽の男』


 1、

 2、

 3、山高帽、

 4、



「藤代、つまり懐中時計と煙草は、4番目は無いわ

 つまり花は4番目」


 1、

 2、

 3、山高帽、

 4、花、


「懐中時計と煙草は、1番目か2番目の二択

 煙草が1番目だった場合、懐中時計が2番目になる

 と同時に山柴が2番目になる」

「ん? なぜだ?」

「だって山柴の直前の人物が『煙草の男』なんでしょ?

 でもそれはあり得ない、もちろん藤代が()()()()()()()()()当てはまるけど」


 確証はないがそれは無い。藤代の店を訪れたが煙草の匂いもしなかったし、店でも扱ってはいなかった。


「一応、その裏を取っておくよ」

「じゃあ仮定の話で進めるけど」


 そう言って佳凛は追記する。


 1、懐中時計、藤代

 2、煙草、

 3、山高帽、

 4、花、


「3番目は山柴と確定し、同時に山高帽であることがわかるわ

 横谷は花ではないから煙草、4番目の人物は、」


 1、懐中時計、藤代

 2、煙草、横谷

 3、山高帽、山柴

 4、花、



「白桜さんが自殺か他殺かはわからないけれど、

 彼女なら何か知っているのじゃないかしら」


 佳凛が万年筆と手帳を差し出す。

岸山が受け取ると彼女は、傍らに積んであった本から一冊を取り、そして何事も無かったかのように読み始めた。


「ありがとう

 じゃあ行ってくるよ」


 岸山は席を立ち『小山田古書店』を後にした。

外は夕日で赤く染まっている。花街は今宵もいつもの通りに目覚める。

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