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いちばんおいしい、その瞬間を

作者: 谷岡ペトロ

小説は初めて書きます。駄文ですがよろしくお願いします。


"食材は鮮度が命"である。この言葉を聞くと魚介類を連想する人も多いと思う。だがこれはどの食材にも当てはめることができる。

例えば野菜である。採れたてはみずみずしくそして甘い。スーパーで売れ残っている何日もたっているものと比べれば断然違う味となる。だから私のレストランでは鮮度がいいものを業者に頼んでいる。

だが矛盾するようだが、一部例外も存在する。

それは肉である。肉は熟成することにより、味や香りがよりよくなる。

では"肉は仕込みが命"ということになるのでは?と思うが意外とそういうわけでもない。鶏肉は腐敗が早く、時間が経つと臭みが出てしまうのだ。肉の種類によっておいしいタイミングは違うのだ。


さて、今日は特別な日である。一か月に一度のすごく特別な日。

その日は限ってお得意様が店にやってくる。それを私は待ち望んでいる。

お得意様の彼は必ず、ラストオーダーぎりぎりに来店して、外から見えない奥のテーブルに座る。

私は彼に特別な料理を二人前用意し、テーブルの向かいに座りいただく。


時間は9時を回っていた。ラストオーダーは10:40なのでそろそろ彼がやってくる。

私は冷蔵庫から肉を出し、調理しやすいように脂肪はすべて切断する。皮の厚さは5mmほど。

味付けは塩と胡椒をたっぷりふり、表面を弱火でじっくり焼

いていく。




カラン




玄関が開いた音がした。お得意様の彼がやってきたのだ。

私はやっていたことをやめて、彼に歩みよる。


「いつもの席。空いてるか?」


「ええ、空いていますとも。」


彼はどうやら仕事帰りのようで、漆黒のスーツ上にコートを羽織っていた。


「あ、そう。じゃあいつもの料理たのむよ。」


「もうできていますよ。もうたべますか?」


「ああ」


「ワインは開けますか?あなたのために特別なものを仕入れましたよ。」


「ほほう、それは楽しみだ。いただこう。」


彼はそう言って、奥のテーブルに座った。





私は出来上がった料理と特別なワインをテーブルに運ぶ。


「料理を届けに参りました。」


「ああ」


私はワインと料理をテーブルに運ぶ。彼は私に気付くと読んでいた本を閉じ、私の料理に向かう。


ポトポトとグラスに注がれるワインとおいしそうな香りを放つ料理。


「どうぞ。今日はセックスオフェンダー、赤身のローストです。」


彼の向かいに座り、私も料理をいただく。


「うむ、うまいな。」


彼は上品にナイフとフォークを使い、口に運ぶ。私はその所作に興奮を覚える。

自慢の料理を一番のお客に食べてもらえる。これほどうれしいものはない。


「ワインもいかがですか?まだ飲んでいないでしょう」


「そうだな。いただこう。」


そう言って彼はワイングラスを片手で持ち、揺らし香りを楽しむ。


「少し血の匂いが香るな。これどうした?」


「食材の血をワインに再利用しました。いい香りがするでしょう。先ほど試しに飲んだのですが、下品に一気飲みしてしまいました。」


思い出しただけで興奮が止まらない。私は今、どんな表情をしてしまっているだろうか?

表情筋が緩んで仕方がない。だってあんなにおいしそうなにおいがするのだ。悪いのはあの男だろう。



昨日の夜。あの男は暗い公園で女を犯していた。私は男の後ろに立つのだが、犯すのに夢中で気づいていなった。女は虚ろな目をしながら私を見ていた。男はそれに気づいたのかすぐに振り向こうとしたが私がすぐにアイスピックで首を刺したので叶わなかった。

血がピューと出る。それを見た女はすぐ立ち上がり、声にならない悲鳴をあげながら逃げていった。

助けてやったんだから少しは感謝の一言くらいしてほしいものだと考えながら私は食材をすぐにかついで、車のトランクに押しこんだ。

レストランまでは運んでいる途中で私は血の付いたアイスピックの存在を思い出した。

なんだか気が引くような思いをしたが、好奇心を抑えられず私は血を舐めた。


「そういうことがありまして、ワインに影響がない程度に血を入れてみました。」


「なるほど。君がそこまで興奮するようなものなら口にいれてみたいものだ。」


そういって彼はグラスワインに口をつけ、飲み込んで少し口に含んだあと、のどぼとけを動かして飲み込んだ。


「あぁ・・・これは美味であるな」


「そうでしょうそうでしょう!」


私は彼が共感してくれたことがうれしくてたまらず笑みをこぼした。


「では食事を続けましょう。」





「ごちそうさまでした、」


「お粗末様です。」


「では次の食材の調達を依頼してもいいかな?」


「はい」


「次はこいつで頼む。強盗殺人を何度も犯してる悪人だ。次はこいつを食いたい。」


そう言って彼は私に写真と分厚い茶封筒を渡してきた。わたしは一礼して、感謝しながら受け取る。


「次はまた一か月後にくる。それにまで頼むよ。」


「ええ、ええ。わかっております。とっておきの食材を用意して待っていますよ。」



肉のおいしいタイミングは種類によってちがう。私が思うに人間の肉がいちばんおいしいタイミングはきっと興奮をしているときに違いない。今日の食材だって、あの瞬間が一番興奮していたから。あの瞬間が一番絶頂していたから。











時間は深夜2:30頃、食材は強盗を終えて家で祝勝会をしていた。


「ッハハー!今夜の仕事も最高だったな!やっぱ高級住宅街に住んでる富裕層は金になるものが出る出る!」


きっと今だ。この食材の興奮の瞬間。絶頂の瞬間は今に違いない。確信した。

私は右手に持ったアイスピックを強く握り、食材の首に思いっきり刺した。






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