まさかの?
語彙力が欲しいと思う今日この頃です。
私の一方的な運命の出会いからはや四週間。あれからあの男性を見かけることはなかった。今まで見たこともなかったし、たまたまあの店に寄っただけだったのかも。
あんなにも自分好みの人が世の中にいるとは思ってもみなかった。声をかけられて動揺したとはいえ、惜しいことしたなぁ。
「だからってお近づきになる勇気なんてこれっぽっちもないけどね」
なんて呟く。それにあの端整な顔立ちなら、彼女がいてもおかしくはないな。分かりやすく左手薬指に指輪があったら、既婚者だって分かるんだけどね。
そんなことを思いながら、買い物かごに鍋の材料を入れていく。今日はうんと寒いから、キムチ鍋にするつもりだ。
必要な物を揃えレジに向かう途中、思わずわが目を疑った。なんと、私の運命の人が目の前にいるのだ。
高く積み上がった乾燥椎茸の袋がバラバラと落ちていくのを前に、
「え?あ、どっ?!」
と、あたふたしながら。
気持ちはわかるよ。
押さえるのが先か、拾うのが先か。それが問題だ。
予想外な事が起きると、判断が鈍るよね。
しかし、これは私にとって最大のチャンス。ここで颯爽と手助けすれば、自然と会話の糸口がつかめるのではないか。よし、そうだ。そうし―――――
「まぁ!あなた盛大にやらかしたわねぇ」
「え?いやっ、あぁ―――はぁ」
「ふふ」
「…ははは」
えぇ!苦笑いかわいい!っじゃなくって!
そこのおばさま、横取りしないでぇぇえ。
そして、何も出来ずに眺めるしかない私。だって、その後近くにいた素敵お姉さまや可愛い女の子をつれた優しげなママさんも手伝ってすぐに終わったから、私の出る幕なかったのよね。
「ありがとうございます」
「いえいえ、お正月が近いからってちょっと多めに積みすぎよね~」
なんて、アハハウフフと楽しげな会話が聞こえてくる。あぁ、私が生み出したかった会話(理想)があんな近くに!と、側にある商品を選んでいるふりして悔しがる私。その間に皆さん「どうも~」と会釈して自分の買い物に戻ったようだった。
「「はぁ」」
思わずといったため息。
好機を逃した私と、何となく押しに弱そうなあなたの視線が絡む。
「何よ」
「……」
ちょっとイライラしてたのは認める。でも、だからって、だからって。そんな態度はないよ、3秒前の私ぃい!
読んでくだってありがとうございました!
今、お正月用品がたくさん陳列していますよね。店の中が賑わっていると、ワクワクします。