少女の記憶
私には幼馴染がいた。
名前は関原隼人、小さい頃からず~っと一緒だった。
それもそのはず、私の母親が彼の母親と関係があったからだった。
それも、かなり仲が良かったらしい。
そのため、私と彼はずっと一緒だったって訳だった。
小学生のころまでは一緒に遊んだり、雑談をして笑い合ったりして、いわゆるに親友のような立ち位置だった。
まぁ、時々彼が他の女の子と話しているところなどを見て、少し嫉妬していたこともあったが、その嫉妬という名の感情が、後に恋愛感情に発展するとは知らなかったため、無邪気に彼と遊んでいた。
中学校ではすんでいた場所が近かったため、同じ中学校に進学できた。
正直に言ってしまえば、この時期から彼に対する感情が、友情から恋心に変わっていたのだろう。
内心では、彼と同じ中学校に行けなかったらどうしよう、などという焦りの感情もあった。
中学校からは、彼と遊ぶだけではなく、振り向かせるためにいろいろなアプローチをしていた。
今思い出すだけで、死にたくなるほど恥ずかしいものだったけど、悔いはなかった。
まぁ、それは見事に彼の鈍感パワーによって無意味となってしまったが。
その彼の鈍感なところも好きだった。
彼は誰にでも優しくて、頭もよくて、モテモテだった。
私は誰かに彼を取られるのが怖かった。
それ故に、積極的なボディータッチや彼の隣にずっと張り付いていた。
今に思えば、その頃は本当に彼のことしか頭になかったんだと思う。
まぁ、今もそうなんだけど。
私は結構独占欲の強い女だと思う点が何個もある。
いわゆるにヤンデレ?のような部類に入っているのだろうか?
そもそもヤンデレとメンヘラの違いってなんなんだろう?
メンヘラは自己承認欲求が強くて、他人からいっぱい褒めてほしいくせに、平然と裏切るらしい。
私は彼以外にはなんにも興味がわかないし、彼から一方的に褒められたいという欲もない。
どっちかと言えば、褒め合いたいということだろうか?
お互いに好きなところを褒め合って、恥ずかしがって...
あ~、何妄想してんだろ、私...
あれ?中学生の時の私って結構やばかったんじゃないかな?...
客観的に見たら、もう恋人だったんじゃないかな?...
まぁ、今はもうそんな関係には微塵も見えなくなってしまったけど...
.....何やってんだろ私..
中学生の頃に、彼からもらった唯一の物。
ハートのネックレス。
箱の中に丁寧にしまってある状態。
そんな結婚指輪のように扱っているアクセサリーをずっと見ながらも、過去の記憶を思い出す。
あれは確か、中学3年生のころだっただろうか?
いつもどうりに、バレバレのアプローチをしながらも、彼と放課後に遊ぶ予定を提案する。
彼はバスケ部に所属しているため、休みを把握していなきゃいけない。
まぁ、そんなものは別の部員から予定表をもらえばいいんだけどね。
緊張しすぎて、何日もかけて組み立ててきたデートプランを全てど忘れしてしまって、なんにもできなかったのが今でも、記憶にコべりついている。
でも、そんな私を彼はやさしく受け止めてくれた。
「穂香は何がしたいの?」
「う~ん...買い物かな?」
そういうと、彼は私の手をやさしく包み込むようにして、恋人つなぎをしてくれた。
「ふぇ?...」
脳内が急な、いや急すぎる出来事に対応できなくて、混乱する。
視界が回っている。
まるでジェットコースターに乗った後のような感覚に陥る。
だが、彼はそんな私の状態を気にも留めずに歩き出す。
「どうしての?顔真っ赤だよ?」
混乱しながらも、自分の顔に手を触れる。
うん、めっちゃ熱い。
沸騰したやかんよりも熱い気がする。
「それじゃ、どこから行こうかな?」
考え込む彼、横顔も最高!
あぁ..テンションが上がっていくばかりで、全身の血管が破裂しそう。
さすがに、自分の命が持たないと思った私は、
「ちょ!ちょっと休憩しよ!」
「え?まだ何もしてないよ?」
ネコのように首をかしげる彼。
それによって、私の心拍数は爆発的に上がっていく。
----
はい、正直に言ってしまえば、ベンチで長時間休憩してしまって、時間を無駄にしてしまいました。
本当に何やってんだろ...私...
こんな状況なんて!?一体何回も妄想してきたじゃない!?なに死にそうになっちゃってんのよ!?
少し落ち着いてきたころに、彼が視界の隅に映る。
「結構時間すぎちゃったね?..てか本当に大丈夫?」
こんな無駄な時間に付き合わせたくせに、私の心配までしてくれる。
「ごめんね?...もう時間なくなってきたし、帰ろうか...」
今回のデートは失敗。
今のところ、彼と一緒に遊びに行ける日はない。
久しぶりに失敗してしまった。
大きなため息をつく。
大好きな彼の前なのに。
「ちょっと待って」
そう彼は言うと、腕に持っていたバッグから箱を取りだした。
「はい、これ」
中身には、ハート形のネックレスがあった。
「ふぇえぇ?へ?」
はい、もう完全に狂ってしまいしました。
「前から渡そうと思ってたんだけど、時間がなくてさ、まぁよかったらつけてくれると嬉しいかな」
座っている私に満面の笑みで笑いかける。
そうすると、彼はその箱を私の太ももの上に置いてから、
「それじゃ、また遊ぼうね?」
始めて、彼から何かを誘われた気がした。
ブクマ、ポイントお願いします!