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ヤンデレ男の娘の取り扱い方  作者: 下妻 憂
ヤンデレ男の娘の取り扱い方2~デタラメブッキングデート~
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44.コウモリ日傘

「やっぱり、暑い……」


 ゴミ出しをした時より気温が上がっていた。

 大気の含有水分率が妙に高く、呼吸をするだけでスチームを吸い込んだ心地になる。

 まるでミストサウナだ。


 体感的に35度くらいありそうだ。


 この短時間でここまで気温が上がるだろうか。

 それも8月も終わるというこの時期に。


「涼しい家の中にばかり居るからだよ。冷房病、夏バテ、体力低下。日射病や脱水症は気を付けなくちゃいけないけど、危険は身近に潜んでる。日頃の生活習慣がいかに大事か。夜更かしして涼しい所と暑い所を出入りしてたら、自律神経だってブッ壊れちゃうんだから」


「日傘を差してる人に言われても……」


 いつ買ったのだろう。

 紺色でフリルの付いたコウモリ日傘を差している。

 いわゆるロリータデザインに属するのだろうが、落ち着いたシックでオシャレな雰囲気が世俗的な街中でも浮かない。


「何言ってるの。これこそ、その夏場対策じゃない。それにボクは病気になるから日傘をしてるんじゃないの。汗掻いたり肌荒れしたり日焼けするのが嫌だからしてるの」


「なるほど」


 化粧も崩れるしね、という一言をぐっと呑み込む。

 その傘の先端で打突でもされたらたまらない。


「ふふん、羨ましいなら一緒に入っても良いよ、特別に。相合傘」


「……遠慮しておくよ」


 被ってきた野球キャップのズレを指で直す。

 日差しが強いのを承知していたから、僕もまた帽子という手段で日焼け対策を講じていた。


 ……それでも、この暑さでは焼石に水であるが。


「それ小学校の時の? 新しいの買えばいいのに。デザインも子供っぽいし。買ってきてあげようか?」


「気に入ってるんだよ。それだけ。それより、結城も随分と暑そうじゃないか。なんで制服を?」


 自宅のラフな恰好から一転、化粧も含めて全身バッチリ決めている。

 バッチリ過ぎて、気圧されそうなほどに。


 髪は左右で二つ結び。

 靴は硬そうな厚底の、お気に入りの編上げブーツ。


 服は何故か、学校指定の制服を着用していた。

 ティーン向けのストリートファッションのような、ともすれば古風な外国を思わせる少々風変わりな学校制服。

 コウモリ傘と妙に似合っている。

 機能美はほぼ完全に無視していた。


「知らないの? うちの制服着てると、地域の特定のお店で学割きくんだよ。それに可愛いでしょ、このデザイン」


「納得したよ」


 学割は学生証でも効く。

 わざわざ制服を着用する必要などないが、彼が気に入っているというならそれでも良いだろう。


 だが1つだけ解せない。

 彼の制服は冬服である。

 日光を遮る日傘があるのだから、厚手の長袖で肌を守る必要などないのではないか。


 なにより、気温の高さは変わらない。

 幾ら日光対策をしているといっても、彼の肌に汗1つ浮いていないのは……。


 ……いや、そんな些細なことはどうでもいい。

 この暑さの中で余計な思考を巡らすのも疲れる。


「早く行こうか」

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