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ヤンデレ男の娘の取り扱い方  作者: 下妻 憂
ヤンデレ男の娘の取り扱い方2~デタラメブッキングデート~
160/238

157.同人

 反対側の三郎に目を移す。

 彼は意外にも大人しく巫女舞を見物していた。口を少しだけ開けて、巫女が神楽鈴を振り回す様子に見入っている。

 彼の気性なら、お宮の神事を抹香臭いと一蹴する印象があった。

 静と動、真逆の性質だ。


 古神道に造詣や興味があるとも思えない。

 何を考えているのか。

 その胸中はいかほどばかりか。


「巫女舞、好き?」


 そんな月並みな呼びかけしかできなかった。

 三郎が気づき、頭だけ振り向く。

 その顔に浮かんだ表情は、僕のイメージする彼の荒さと比べ、どこか切なげでドキリとした。


「ううん……えっと、懐かしいなって」


 懐かしい? 三郎が?

 彼の住んでいる地域はどこだったか。

 僕らと同じく子供舞を体験していたのか。

 記憶を探っても、町内会で三郎と面識はなかったはず。

 範囲内の、別の会に所属していたということか。

 他の児童に混じって舞う姿など想像もつかない。


「そっか、さーやも子供舞に出てたんだね」


「え? こども……まい?」


「あれ? 違った?」


「あ……うん、そうそう。子供舞。さーやも出てたよ」


 なんだ、今の反応は。

 ……違った?

 僕と結城の会話を聞いて話を合わせただけとか。


「ねぇ、あーちゃんあーちゃん」


 ふいに結城に袖を引かれる。

 指先で二の腕をつつかれた。


「なに?」


「あれ」


 彼が小さく指を差している。

 その方向には、神楽殿を遠まきに眺める2人の女性がいた。

 遠目には判別しづらいが、浴衣を着た僕らと同世代の少女のようだ。


 結城が僕の手首を取ってそちらに歩き出してしまう。

 知り合いなのか。

 地元のお祭りであるから同級生と遭遇するのは珍しくない。





 ベンチ付近の広場の外れ。

 植林樹が植えられ、照明の照射範囲外でわりと薄暗い。

 背後は山から流れる小川があり、ちょろちょろとせせらぎが聴こえ、水の匂いがした。


「や、久しぶり」


 結城が少女らに親しげに声をかける。

 彼女らは一瞬驚いたが、すぐに笑顔になった。


「結城ちゃん! 久しぶり」


 小柄な方の少女が結城の手を取る。

 彼女らもこちらを知っているようだ。

 声量は意図的に抑えているものの、若い女性特有のテンション高ぶる交友だった。


「戻ってたんだね。会えると思ってなかった」


「うん……まぁ、ちょっとだけ。里帰りついで。お祭りくらい来たかったし」


 少女のうち片方は小柄。

 身長は150あるかないか。

 三郎よりは高いものの、どんぐりの背比べだ。

 紺色でアネモネ柄の浴衣を着ている。

 降ろせば背中ほどにありそうな長髪を後頭部で団子にしていた。


 目はタレ気味。小粒な全身と相まって、対比的に瞳が子供のように大きい。

 涙袋の下に、キラキラ光る星型が曲線の星座を作っている。ラメと呼ばれるきらめき塗料だ。

 僕も結城も三郎もしていないが、若い祭り客には珍しくない。

 彼女は大人しそうな外見をしているが、結城への応対や振る舞いの余裕さから芯の強さが垣間見える。

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