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ヤンデレ男の娘の取り扱い方  作者: 下妻 憂
ヤンデレ男の娘の取り扱い方2~デタラメブッキングデート~
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125.順位付け

 そもそも僕は異性に順位を付けるのが苦手だ。

 クラスの女子の誰々が何番目に美人だとか、それに類する下品さを感じてしまう。

 美醜の判断がつかないのでなく、深く吟味したくないだけだ。

 結城も三郎も男性であるが、この場においてポイント付けするのは同級生女子への格付けと大して変わらない。


 それに、自分が他人に点数を付けられるような高尚な存在だとも思わない。

 自分自身だって高得点が付けられる人間でもないのに、どうして他人を品定めできるというのか。


「ま……まだ秘密。軽々しく発表するものじゃないからね」


 などと言ってしまったものの、自分の発言が適正か自信がない。

 それは最後には答えを出す、という意味に取られかねない。

 もっとボカした言い方をすべきだったか。


 本当に答えなんて出せるのか?

 結城の時ですら、関係性を曖昧にしたまま現状維持に落ち着いた。

 今度はそうはいかない。2人のうち片方を断ることは、片方を選ぶことに他ならない。


 その時、起こり得る片方との離別をどう穏便にするか。

 どうしたって、片側を立てれば片側に角が立つ。両者を傷つけずに上手く軟着陸できれば最上。

 口先三寸でどこまで誤魔化せる……。


「そっかぁ、秘密かぁ。じゃあ、楽しみにしておくね」


 嬉しそうな小声で、そう三郎。

 唇の前に人差し指を立て、さも親密で内密な関わりがあるとする表現。

 そんなつもりはなかった。意図せず曲解させてしまったかもしれない。


「…………」


 結城は、いまだに体を背けたまま目だけでこちらの様子を伺っている。

 心なしか、その視線に冷ややかさが混じっている、気がした。

 それは三郎を喜ばせてしまったことに対する嫉妬か、はたまた僕が人へ点数付けなどいやしい行為に手を染めている蓋然性がいぜんせいへの侮蔑か。


 ……誤解だ。

 是非ともそこは分かっていて欲しい。

 きっと理解してくれている。産まれた頃からの付き合いなのだから。

 例え、僕が彼の理解できない部分を持っていたとしても。

 最近、少し遠く感じている。





「お待ちどう様です!」


 やがて先のウェイトレスとは別の店員が料理を運んできた。

 少々肉付きの良すぎる、若い女性。

 彼女に苛立ちはなく、自然体で健康的な笑顔を振り撒いていた。内から人柄の良さが漏れ出てくるほどの快活さ。


「和風卸しハンバーグの方……特製海鮮丼の方……きつねうどんお揚げ特盛の方……ですね。ご注文は以上でしょうか!」


 料理と食器がテーブルに置かれていく。

 一番近い結城が1つずつ受け取り、ハンバーグを僕へ、海鮮丼を自分へ、きつねうどんを三郎へ分配した。


「はい」


「ではごゆっくりどうぞ!」


 竹を割ったようなサッパリした声でそう言うと、ウェイトレスは去っていった。

 ハンバーグも海鮮丼もきつねうどんも調理時間が全然違う。

 それが一度に運ばれてきたということは、客の入りに対してホール店員の業務遂行量が飽和しているのかもしれない。


 幸い、ハンバーグもきつねうどんも熱を失っておらず、海鮮丼もぬるくなっていない。

 それぞれに大きく完成時の時間差はないようだ。

 ハンバーグは直焼きしていることに間違いない。

 きつねうどんは事前に冷凍してあった、麺とお揚げとスープを解凍しただけかもしれない。海鮮丼も冷凍を戻し、盛り付けただけ。

 厨房を上手く立ち回れば、ほぼ同時刻に提供するのも無理ではないのか。


「さて、いただこうか」


 パキリ。

 結城が浴衣の袖を捲り、割り箸を裂く。小皿に醤油とワサビを投入し掻き混ぜる。

 赤と桃色のマグロ切り身を軽く浸し、白米に乗せて口に入れる。

 切り身はシミ(血線)がなく綺麗に色が整っている。

 チェーン店ではあるものの、魚介類の仕入れは街の港から買い入れているという。なので決して安くないが、内陸部の店舗よりは良質な素材が使われやすい。


「うぅん、おいしい」


 結城が嬉しさのあまり頬を押さえる。えくぼが華やぐ。

 実に美味しそうに食べている。

 ハンバーグを前にして、自分も海鮮丼にすれば良かったなと後悔しなくもない。

 いまだ気温の高い夏場に肉食は重かった。

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