一晩寝たらデートに誘われた件
6月16日
これまでのいざこざが全て終わり、俺達の物語は終止符をうった。けれど、これで人生が終わるわけではなく、物語が終わるわけではない。終止符をうっても文はまだ続くように、物語も続く。そして、俺の青春も終わったりはしない。そうだろう?
さて、この日の俺はその身体不規則症候群である女体化の後始末も終わり、平和が訪れている今、だらだらと朝を迎えていた。朝だらけているというのは至福な時間でもあり、その至福の時間を過ごしていたのだから、携帯が鳴ったときにはちょっととりたくはなかった。なんでかって?取るのが面倒臭いからだ。勿論相手に悪いので電話をとるのだが。
「もしもし」
「もしもし、亮平くん。突然だけどさ、デートしない?」
「します!します!是非行こう!で、どこに行くの?」
誰だよ、彼女からの電話に面倒くさいとか言ったやつ。サイテーだな!
「うーん、とりあえず行き先は秘密にしよっかな。高校近くの駅前集合でいいかな?」
「勿論!勿論!もう俺は準備を終えて自転車を出そうとしてるところだぜ!」
「亮くん、行動が早すぎ!」
※
というわけで、突然のデートのお誘いを断る理由もないので、俺は今、駅前にいる。5分ぐらい待っただろうか、デートを誘った当人がやって来た。白のTシャツに青のオーバーオールである。そしてショートヘアーの輝きは日光に匹敵しそうだ。
「ヤッホー、亮平くん!」
「うっす、和」
和が誰なのかと説明すると、野中和、同じ学校のクラスメートで俺の彼女。一ヶ月ぐらい前に全校生徒に囲まれ告白したという、公開告白事件が勃発し全校生徒に名を轟かせた伝説がある。
まあ、つまりデートは勿論彼女がいる俺は回避できない、けれど超お楽しみの必須イベントなのだが、
(大丈夫かなぁ)
と考えてしまう。いや、今まで彼女がいた経験のない俺だったのでデートではわからないものばかり。すべでノリで過ごせればと思うのだけれども、残念ながら俺は小心者のようだ。だがしかしこの貴重なクエストを失敗するわけにはいかないので、ここはガツンといってやる!
「さて、ドコイキマショウカ…」
俺はどこまでチキンなのだろう?
※
和が考えたデートプランはこのようなものだった。
今いる駅からバスに乗って市内の動植物園に行きそこでデートするらしい。
(遠足か!)
と、思っていたけれど、なにも考えていない俺よりかはましだろうと、そう思うことにした。
というわけでどんな行動をしたかと言えば、
「ねえ、あそこにペンギンがいるよ。超かわいいよね!」
「可愛いなぁ(ペンギンも、和も)」
「うわぁ、ゾウさんだよ!でっかいなぁ」
「でっかいなぁ~」
「このカピバラかわいい!!!」
「和むなぁ(和だけに)」
という感じに、動物とふれあい写真を撮ったりなど、動物園で動物と和に超和みながら動物園を一周した。
その後、植物園に行ってご飯を食べた。しかも、
「これ、亮平くんのために作ったから食べてね」
と、和が作ってくれたのだ!おにぎりや卵焼き、唐揚げとミニトマトという、これまたよくおかあさんが作りそうなお弁当なのだが、これがめちゃくちゃ、
「ウメーー!」
「あ、ありがと…(照)」
という、ほのぼのとしたシチュエーションだった。
お昼ご飯を食べ終わった後植物を観察し、そして俺達はその場を後にした。
※
ま、そのあとに行ったのはショッピングモールである。そう、あの女体化初日にお世話になったり、女子会を開いたでお馴染みのあのショッピングモールである。
「ねえ、久しぶりにここのカフェ行かない?」
「うん、いいよ」
ということで俺達は女子会で一回行ったカフェに立ち寄り、俺はカフェモカ&マカロン、和はカフェラテ&ミニパイをオーダーした。
そして俺はカフェモカを少し飲み、一息。つかのま、
「少し疲れちゃったからここでチャージしないと。あっ、亮くんそれ少し飲ませて」
と、俺の手からいきなりカフェモカをひったくりそれを飲んだ。躊躇無く。
「お、おい!これってあれだぞ。間接チューだぞ!」
「いいじゃん。私たち付き合ってるんだから」
これはあれじゃないのか?間接キスに気付き恥ずかしさに顔を赤らめるシーンじゃないのか?
「はい、どーぞ。まあ、それだと分が悪いから私の分も少しあげるよ」
「それじゃあ、頂こうかな」
間接キスを要求する和に俺は即座に受け入れ、カフェラテを少し飲む。ストローに口をつけて。
なんだろう。このカップルは羞恥心が無さすぎるんじゃないか?
そしてこのあと二人は飲み食いし終え、ゲームセンターに足を運んで、
「ノーーーーーー!!!!!!!!!!」
「アハハハハハハハwwwwwwwww」
と、コインゲームでジャックポット勝負に負け泣き叫ぶ俺と笑い転げる和の姿がそこにいた。
※
ショッピングモールを後にした俺らは河川敷を歩いていた。夕陽が西から照りつけ、左を歩く和がいっそ輝いて見えた。
そして俺は不意に思った。そう、今まで知らなかったことを思い出した。
「なあ、和。何で俺のこと好きなんだ?」
和は唐突にこの質問をされたのに一瞬だけ戸惑って、そして、
「なんでって、そんなこと聞いちゃう?」
と、和は顔を赤く染めてそう言った。
「うんうん、聞きたい!聞きたい!」
「なんか、元気だね。でも確かにその事は言わないといけないときがいつか来ると思ってたから。はあ、まさか今日聞かれるなんて、私すっかり油断してたよ」
「いつもは気を引き締めてるのかよ」
ビックリした。まさか若干ではあるが警戒されていたと、そういうことなのだろうか?
「いいよ。話してあげる。でも、絶対に笑わないでよね」
「そんなことで笑うものかい」
* * *
「じゃあまず何からはなそうか。まず、入学式のときかな。私はあまり同じ中学の人が少なくて、あまり、人には話しかけられなかったんだ」
「でもここで亮くんが話しかけてくれた、というわけでもなく、ひとりぼっちだった。私ってばなにやってんだろ」
「入学式まで遡らなくてもよかったじゃねーか、なんて思ってない?でもね、そのときの私はそうだったの。ま、でも他にも一人の子はいたのだけれども、やっぱり私は居場所を少しだけではあるのだけれども求めた」
「でも、そんなのは夢に過ぎなかった。居場所は見つからなかった。けれど、やっとここで救世主が現れたの。そう君よ。会原亮平」
「君は話しかけてくれた。私を見つけてくれたの。そこで私の心臓は言うことを聞かなくなった。ドク、ドクって、止まらなかった。夢中になった。初めて話したこと覚えてるかな?そう、」
「一人で楽しいの?ってね。ビックリしたよ。でも、ここで私は心を奪われた。これが全ての真相。けれどね、公開告白事件で私が告白したこと覚えてる?」
「あのときはね、もう本当に気を失うところだったのだよ。あんなに見られて恥ずかしかった。私は静かに一対一を夢見ていたのに。もう平和な学校生活ともお別れだな、って思った」
「けれど、なけなしの勇気を振り絞ってまで告白して、そして、それに亮平くんは答えた」
「「こちらこそよろしくだぜ(*/□\*)」、ってね、もう、そのあとは夢中になりすぎて記憶があやふやだけどさ、けど逆に何でオッケーしたの?」
「魅力にとりつかれた!?そんな単純なことで!でも、こんなこともそんなことも実は物語っぽいよね、ね、亮平くん、この物語、どうせならもっと楽しもうよ」
* * *
デートシーンよりも絶対に濃い時間を過ごした気がする。でも、恋の理由なんて人それぞれなのだろう、俺は俺なりの考えもあるし和は和で考えがある。それを理解するのは、容易くそして、難しいのであった。
「と、言うわけで付き合ってくれてありがとね。また明日ね!」
今日一の最高の笑顔を見せる和に俺は、
「こちらこそサンキューな、楽しかったぜ。また明日な」
と、最高の笑顔を返した。
絶対に心に残る時間が幕を閉じた。そしてこれからもそんな時間を過ごしたいなと思う。
次回予告
春の陽気にそそられた、ども、モグポクです!この流れは少し前にもやりましたね。ちなみに本編を書いていたのは4月1日で、ちょうど新元号発表の時でしたねー。『令和』でしたっけ。ちなみに件シリーズは2019年の日にちをもとにしてますので、そのときには令和だったのでしょうね。次回予告!
次回 「テストは楽しい?」
それでは~ではまた(@^^)/~~~