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一晩寝たら奇想天外なことが起きていていつの間にか青春していた件  作者: モグポク
第八章 一晩寝たら本世界に転移していた件
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一晩寝たら本世界に転移していた件 その3

 炭と竜骨を目の前に呆然と佇む俺。そしてその間俺は目の前の光景に驚愕する。

 まず整理すると、竜骨はあの時に滅んだドゥラーケの変わり果てた姿だろう。では何故家が燃えた!?ドゥラーケが放った爆炎は勇者のバリアによってすべて防がれたはずだ。なのに目の前にあるのはまるで爆炎に包まれた後のようにしか見えない。

 最初に疑ったのは俺が見たことと違うことが起きたのではないだろうか。しかしそれなら何故竜骨がここにある?あの勇者はそのまま爆炎に包まれながらドゥラーケを葬ったのだろうか?その可能性は薄い。

 ならば第三者が燃やしたということだろうか?そしたら誰が?

 そういう憶測が俺の脳内を飛び交うなか、情報量が乏しすぎるがために答えに辿り着くことは出来なかった。

 とりあえずなにもすることがなかったので少し休憩して俺は再び歩き始めた。


            ※


 数時間は歩いただろう。一歩一歩ごとに足が震える感触に足の限界を迎えつつあることを知らせてくれる。鬱蒼とした森はあの後開ける様子もなく、簡単に言えば俺は今遭難状態にあった。あるのは土と木だけ。

 そして俺は再び切り株を見つけた。最初は元の場所に戻ってきたのかもしれないと疑ったのだが、切り株の大きさがさっきのと違うのできっぱりとその疑いが晴れた。

 「晴れるのは木だけでいいのにさ」

 そして俺は切り株に座ろうとした。そして俺は気づいた。なにか音がする。誰かがいる。誰だろう。旅人だろうか?それとも山賊?

 音の方を見ると何と鬱蒼とした森のなかに一筋どころか既にひかりが一線に広がっている。

 俺は一瞬疲れを忘れ、光に導かれるように歩いた。するとそこには平原が広がっており、平原と森林の境目には一本の道があった。

 「俺ってもしかして土地勘あるんじゃねーか?」

 などとそこまで迷うこと無く一本の道へとたどり着けた自分に感嘆しながらも、俺は音の正体を知るために辺りを見渡した。

 そして俺は見つけた。向こうから歩いてくる一台の馬車を。


            ※


 「おい!こんなところで俺に何の用だ」

 強面(こわもて)の男は俺が道におどりでることに気付くと馬を止め大声で聞いてきた。その一声で場は緊張の空気で包まれる。国外かどうかは不明だが商人は国外では山賊の類いに警戒しなければならない。勿論自分が山賊ではないことを証明すれば良いわけで、

 「すみません、俺道に迷ってしまって」

 と手をあげながら敵意が無いことを示した。だが、

 「なら話は簡単だ。邪魔だ、邪魔だ。脇に退きやがれ」

 叱責するように言う商人に俺は応じようとして、その前に、

 「この近くに街ってあります?」

 と道だけ聞こうとした。そして、

 「ああ。ここの近くに王都『パルーデ』がある。俺は今からそっちに行って、おっとこれ以上は言えないぜ」

 別に聞きたくはないんですけど。けれど俺はこれは好機だと気付いた。もしこの商人と王都パルーデまでお供すれば何かしらの情報が得られることに違いない。勿論タダではないだろうが。

 「俺もその王都パルーデっていうところに行きたいんですけど、その間お供させてくれませんか」

 俺は頭下げて願い出た。商人は相変わらず怖い顔しながら、

 「その場合はタダじゃないぜ。そうだなぁ、小銀貨一枚でどうだ」

 「小銀貨?なんだそれ?百円のことか?」

 銀貨と言えば百円。そうだろ?しかし当たり前ながら百円なんてここに存在するなんてことはなく、

 「はあ?お前小銀貨すらも知らねぇ-のかよ。てめぇ、今いくら持ってる?」

 俺はポケットの中を探ってみる。当然中身は何も入っていない…?

 「あれ?なんだこれ」

 中から出てきたのはひとつの小さな金貨だった。五百円玉くらいの小さな金貨。それを見た俺はニヤリと笑った。

 「おい、おっさん。これでどうだ」

 俺はその金貨を見せた。すると商人の目が変わった。それもそうだろう。目の前には銀貨よりもワンランク高い金貨なのだから。

 「お、おい。てめぇ、何者だ?何でそんな高価な小金貨持ってやがる」

 「それは秘密としか言えねーな。さて、取引だ。次の国まで案内しろ。小金貨一枚でどうだ」

 と取引を持ちかけた。必ず交渉成立するという自信を込めながら。

 「はい。喜んで!しかしここはすでに国の中ですぜ」

 と俺の予想通り強面の男が金のために承諾した。


 ひとまず俺は何とか野垂れ死にすることはなくなった。安堵の息を出したものの何故俺のポケットの中に小金貨が入っていたのかが気になっていた。これも夢であって俺の創造力が産み出した産物なのだろうか?それとも、

 「にしても何であんたはこんな辺鄙なところにいるんだ」

 ここは鬱蒼とした森と道以外何もない場所である。確かに普通の人なら何故俺がここにいるかは気になるはずだ。

 「そうだな、俺は一応旅人でここら辺を通ってたんだけど、ちょっとここらで妙な物を見てそれをちょっと調べようと歩いてたときにあんたと遭遇したってとこかな」

 妙な物。あの竜骨と燃えた家について調べてみたい。何故あの後ああなったのか、俺は知りたかった。知られずにはいられない。知らずに起きるなんて勿体無さすぎる。

 「この山に燃えた家とドゥラーケの変わり果てた姿を目にしたのでそれを知るためって言ってもわかるか?」

 俺はもしやと思い商人に聞いてみたところ、

 「んにゃ?知らねぇな。けれどドゥラーケってのは聞いたことあるぜ。ここ近辺に出没するって噂だったが数年前に滅ぼされたってのは聞いた」

 「そいつを倒したやつにあって聞きたいことがあるんだ」

 「やめとけ、やめとけ。確かに次行く街『パルーデ』にいるのは確かだ。何故ならあいつはパルーデ王なのだからな」

 なんとあの勇者は王子様だった!ただ、それだといかにもRPGの主人公では一種のお約束設定なのかもしれない。

 「今あんちゃんが考えてることとはたぶん違うんじゃねーかな。あいつは元々の国王の血筋じゃねーんだよ」

 「国王の血筋じゃない?それって、なんか革命みたいなのがあったのか?」

 「革命じゃねーんだよな。事実はわかんねぇのだが、ドゥラーケが滅んだ後国王の血筋が途絶えたんだよ。簡単に言えば一家全滅ってところだな」

 「一家全滅?何で?」

 「皆に伝えられたのは疫病だったらしい。国外に蔓延したという伝染病だったらしい。けどな、国外ってのはここからかなり離れた『カンパーニャ』ってところらしいけど、そこには伝染病が流行ってるっていう情報がなくてな、一部では一家全員暗殺されたんじゃねーかって話だ」

 俺の知らないところでこんなことがあっただなんて、そんな事実への驚愕が俺の体を駆け巡った。

 「そんでそのあと国王になって、そのあとは実際独裁政権だったそうだ。法律が厳しくなり、簡単に言えばやりたい放題って感じだな。国内情勢は不安定になり、事件は毎日毎日勃発するって噂だ。しかも最悪なことにデフレの時期らしいから物を売ったらこちら的には大赤字だ。だから俺はその国で物を安く買って他の場所で高く売り付けるんだ」

 商人の目的をさらりと無視して、俺は次行く街があまりよくない状態であることを理解した。

 「ちなみにその王ってのはなんて名だ?そしてお前の名前は?」

 俺はそう聞いた。

 「エクレール、それが今の王の名だ。そして俺はバルトロだ」

 「俺はあい…じゃなくて、マキリだ!よろしく!」

 「ああ、よろしくな!」

 自己紹介を済ませた二人はこれからの旅路の仲間を祝して握手を交わした。


            ※


 「んじゃあなマキリ。これからの旅路にお気を付けて」

 「それはバルトロもな!」

 数時間前に旅の仲間となったバルトロは次の街『パルーデ』に着くことによって別れた。

 「にしても王都ってのはでかいなぁ。東京の山手線の中にある街くらいでかいんじゃねーか?」

 この街では絶対理解し得ない感想を言った俺は、すでに行動を始めようとしていた。

 「さすがに王は宮殿や城に居るわな。そこを目指せばいいよな」

 という安易な考えでこの国の中で一番でかい建物目指して歩き始めた。そして、

 「何処からどう見てもあれが一番でけぇよな」

 中世の時代をくりぬいたような町並みの中に一際でかい城が見えた。間違いない、あそこに王エクレールが…

 「おい、てめぇ。ちょっとこっちこい」

 と、誰かが俺を呼んだ。ったく、俺今超忙しいんですけど!

 招かれたところは薄暗い路地裏。路地裏…っ!

 「まずいまずいまずいまずいまずいまずい!これってお約束の…っ!」

 確かバルトロは事件は毎日毎日勃発するって言ってたよな。路地裏ってことは、という考えに至って俺が踵を返してダッシュで逃げようと思ったその瞬間いきなり手を捕まえられ、刃物を突きつけられた。

 「おい、にいちゃん。有り金ここに全て置いてけ。安心しろ、変な真似さえしなければ命までは取らねぇよ」

 「その言い方だと有り金以外まで盗られそうな気しかしないんですけど!命までってことは命以外全部盗るってことじゃねーか!」

 きゃあ、私の身ぐるみ全部剥がされちゃう!

 「物分かりがいいな。なら話は簡単だな」

 もう一人奥から仲間が現れて、一対二という状況に。そんな状況の中俺は一旦深呼吸して言った。

 「なんということでしょう。俺は今一文無しなの、っさ!」

 刃物突きつけられたとは言っても股蹴ったら勝ちだよな!股蹴った俺は一目散に大通りに戻って城の方に猛ダッシュ。後ろの方で怒号が飛び交うなか、気が付けばその声は聞こえなくなり、城の入口が見え始めていた。


 城の入口は大きな門があり、横には衛兵がいた。俺はその衛兵の一人に声を掛けた。

 「俺の名前はマキリ。頼む、王に会わせてくれ」

 衛兵はその言葉に呆れて、

 「なに言ってるんだ王に会わせろ?無理に決まってるだろう。ほら帰った帰った」

 手をヒラヒラさせて追っ払うその仕草を前に俺は決定的な一言を口にした。

 「じゃあ王に伝えてくれ。門にドゥラーケ戦を見ていた子供が来ていると」

 「それを伝えてなんになる。王は今忙しいのだぞ」

 「でも伝えないと王かんかんに怒っちゃうよ。君の首が吹っ飛ぶのは時間の問題かもなぁ」

 実際そうなのかは知らないのだがそう脅しをかけてみたところ衛兵は苛立ったまま口を開いた。

 「わかった、わかったから少し待ってなさい」

 と、脇の詰め所から入っていった。


 それからしばらくして漸く衛兵は出てきた。だが、一人ではなかった。二人、三人、まだ増える?四人、えっ、十二人?その衛兵は俺を囲んで、そして、

 「やば、俺もしかして詰んだんじゃね」

 槍を構えて俺に突きつけられ、そして先程の衛兵が前に出て言った。

 「王があなたを拘束し連れてこいとの命令だ。ついてこい!」

 俺はどこで誤った?わけわからないまま俺は城の中に強制連行された。

次回予告

亮平「亮平と、」

和「和の、」

二人「次回予告ターイム!」

和「さてさて次回はどうなっちゃうんです?亮くん、じゃなくてマキリ」

マキリ「ちょ待て、俺は一応亮平だぜ。最初に自己紹介したろ」

和「で、次回はどうなるの?」

亮平「話聞いてないだろ…次回はとにかく俺が疲れた。以上」

和「どうして疲れたの?」

亮平「それは次回のお楽しみ!次回は『一晩寝たら本世界に転移していた件 その4』なんとまさかの最終回だっ!」

和「えっ、次回予告もこのお話ももう終わっちゃうの?」

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