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一晩寝たら奇想天外なことが起きていていつの間にか青春していた件  作者: モグポク
第八章 一晩寝たら本世界に転移していた件
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一晩寝たら本世界に転移していた件 その1ー2

 青年が表に出るとそこには全長十メートル位はあるだろうか、大型の竜がそこにはいた。竜は青年を見るや、

 「うむ、儂の前にノコノコ出てくるとは、さては儂を恐れてはおぬな」

 と人語をしゃべった。話しかけられたのが珍しかったのか一瞬たじろいた青年であったが、「何用だ」と返すには時間がかからなかった。

 「冬眠が終った故儂とて腹が減ってるのじゃよ。本来なら動物を食すのだがここら辺は動物が湧かんくての、仕方なく動物の類いに入る人間を食さなけりゃならぬのじゃよ」

 簡単に言えばそこら辺に居住を構える人間を食べようとしている。青年は己の危険を察したのか、故紙に吊っていた鞘から剣を抜刀。すぐさま反抗の意を見せた。だからドゥラーケが即座に咆哮したのは開戦の合図だったのであろう。

 青年は意味のわからない言葉を発した。すると一瞬目の前の景色が歪み、元に戻る頃には爆炎に包まれた世界だけが広がっていた。

 その時のマキリには何が起きたかなんて理解できなかった。しかし今の亮平なら理解できた。そう、一瞬間空間が歪んだのはバリア形成だったのだ。

 バリア。攻撃を含む物体との干渉を隔てる、言わば見えない壁のようなものにおそらくドゥラーケの爆炎の吐息がぶつかったのだ。

 爆炎が晴れることなく青年とドゥラーケは激戦をくりぬけていた。童話通りの展開ではあったもののマキリは目の前の光景に翻弄する他ならなかった。

 青年が剣に炎を包ませて竜の腹部めがけて一閃、また一閃。その度に竜のツメで弾かれる。同時に爆炎の吐息が周囲にばらまかれる。それをバリアで防ぐ青年。両者互角の激戦に目が離せない。

 それでも戦局は青年の方が有利の立場であった。スピードに勝る青年は少しずつではあるがドゥラーケのHP(ヒットポイント)をじりじりと削っていった。

 しかしドゥラーケもそこまで馬鹿ではない。このままいけば敗走まっしぐらと悟ったドゥラーケは尻尾を一瞬光らせた。その途中で二本に枝分かれした尻尾を青年の方に向け、眩い光と共に閃光を発射した。

 ツインレーザービーム。それは対象にレーザービームの二倍の攻撃力を誇る、所謂(いわゆる)まあまあのチート技。その攻撃を青年は右へ左にへと(かわ)していく。その度にビームが彼方此方(あちこち)に飛び木々どころか青年が張ったバリアすらも切り裂いていく。

 周囲の鬱蒼とした森林が木端微塵(こっぱみじん)になるなか、マキリは命の危機だと感じた。戦局は一変し青年は不利の立場へ。しかもビームや爆炎が飛び交うなかバリアがいつまでもつかとの戦いとなる。最悪家の中でグリル焼きにされてしまう可能性だって大いにあった。

 ドゥラーケは一瞬たりとも隙を見せなかった。ついにビームが青年の腕に掠める。苦渋に満ちた顔を一瞬見せ歯を食い縛る青年。ドゥラーケはこの好機を逃すまいと爆炎の吐息を繰り出そうとしたときだった。

 マキリが玄関から外に出、壊れかけたバリアの目の前まで来ていた。そして、大声で叫んだ。そう、童話のように。

 一瞬の隙を見せ、そして枝分かれた尻尾の一本をマキリを含む山小屋に定めて、

 「ウオオオオオォォォォ!!」

 腹部に一本の剣が突き刺さった。しかも風に包まれながら勢いよく。

 風属性の一撃に断末魔のような叫び声を放つドゥラーケ。しかもこれまでに留まらず爆発系の一撃をお見舞いする。周囲には眩い光が点滅する。マキリ自身その眩い光に目を閉じ…

 パチパチパチパチパチパチパチパチという音が耳朶(じだ)に響き、そして、


       *  *  *


 「そこで俺は夢から覚めた。めでたし、めでたし」

 「どこがめでたしだ。中途半端すぎるだろ、この物語」

 苦情を亮平にぶつける飯山に亮平は溜息をつき、

 「仕方ねーだろ。起きちまったもんは。これ以上俺が言えるのは童話ではこのあとあの勇者が勝つシーンくらいだぜ」

 と吐き捨てた。この返答を予想してか飯山はこれ以上聞くことを諦め、そして、

 「まあ、空想上の物語だ。腑に落ちないがそれなりに面白かったかな」

 と感想を述べた。

 「今の俺が行ったら超面白そうなんだけどな。結局あのときの俺は興奮しないどころか悪夢だと認識して朝は泣きっぱなしだったそうだ。そこら辺の記憶は曖昧なんだけどな」

 お前らしい、と飯山が言ったところで、亮平は一瞬だけ横の席を見た。先程まで和が座ってた席にはすやすやと眠り続けるまこが座っている。理由は簡単で、和や若葉や岡島等が途中駅『東京駅』で降りていったからである。

 「あいあい~、そこまで私の水着姿を見ないでおくれよ、恥ずかしいなぁ」

 と亮平にとって迷惑極まりない誤解を周りに与える寝言を言う沖根を和や若葉が支えながら。

 「なあ、一学期は色んな事があったな」

 「僕にとって最悪極まりない事だらけだけどな」

 「けど悪くなかっただろ?」

 「すっごく疲れたけどな」

 色んな事を思い出す二人。五月から思い出されるのは女体化の事件。和とのデートや四月の敗北。透明幼女と出会ったのは先月の出来事であることは二人を驚かせる。つい先日までは入れ替わり騒動を起こしたのだがそれすらも遠い過去のように思える。

 「お前は少し自分自身で物事を解決すべきだと思うけどな」

 「どれもこれも俺にとっては最難関クエストなんだよ」

 「あとこれ以上面倒なことを起こすな。疲れる」

 「それ、俺もだよ!?」

 電車は上野駅に到着し、亮平と飯山と亮平におぶられたまこが電車を降りた。


           ※


7月23日

 違和感を感じたのは起きたときから、なんていうのは何度目だろうか?

 女体化を複数回経験している亮平は自分の頭が金髪になっていて、しかも長髪であることで一発で事態を把握したが、それを確認するために洗面所に行った。いやもう目線の高さからしてもう確証には至っていたのだがそれでも亮平は確認しに行き鏡を見た。目の前には一人の外国人のような幼女がそこにはいた。飯山の苦情を完全無視する状況の中、亮平の実況と共に朝を迎えることとなった。

後書き

亮平「後書きターイムの亮平参上!」

夏々「うるさいやつだなぁ。ちなみに私は塩見夏々ね」

亮平「何故二回連続お前と後書きトークしなきゃなんねーんだよ」

夏々「知らねーよ。それより、」

亮平「それより?」

夏々「この話で10万文字突破らしいぜ」

亮平「長かったなぁ。最初の話なんて俺が玄関でラブレ、ぐはっ!なんで殴るんだよ!」

夏々「リア充は爆ぜればいいわ」

リア充「彼女いる=リア充なのか?」

夏々「それは知らねーけど、それよりも二人のいちゃいちゃ度は私から見てもムカつくのよ」

リア充「リア充よりもいちゃいちゃ度じゃねーかよ!」

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