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一晩寝たら奇想天外なことが起きていていつの間にか青春していた件  作者: モグポク
第七章 一晩寝たら奇想天外なことが起きていていつの間にか青春していた件
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一晩寝たら透明少女になってて生活が不便すぎる件 その4

 「お邪魔します」

 「お邪魔されます」

 出迎えてくれた幼女二人は朋子に抱き合った。俺の知らないうちに何か友情が芽生えたらしい。何があったかは知らないのだが。

 時刻は昨日夕夏梨が来た時間とそう変わりはないだろう。来た経路、時間、何もかもがぴったりであるのだが、謎の安心感に俺は包まれていた。

 昨日の夕夏梨よりもすんなりリビングに向かっていく朋子を追いながら俺もリビングの方に行く。

 リビングに着くと朋子は早速ソファーに座り込みくつろいでいた。その傍らに二人の幼女がくっついている。こんな事は俺にはしてくれないので羨ましいことこの上ない。俺はお茶をいれ、朋子が座っているソファーの前にあるテーブルに置いた。

 朋子はお礼を言いお茶を啜ると、コホンと咳払いしてから言った。

 「さて、夕夏梨さんは何処にいるでしょうか?」

 「今朋子さんの向かい側のソファーに座ってるよ」

 落ち着いた声でそう返ってきた。俺と話すときのあの乱暴な言葉遣いじゃなくて最初夕夏梨と会ったときと同じような言葉遣いである。そこら辺は俺はあまり気にしないのだが。

 「案外透明化っていうのも便利なスキルなんじゃないでしょうかねぇ。人に見られたくないことを余裕でできますし。ただ、常時透明化はごめんですけどね。使いたいときに使える程便利なものはありませんしね」

 「それは私も同感だよ」

 ちなみに俺も同感である。勿論だれも聞いていないので言わないが。

 「では、改めて聞きたいのですが。夕夏梨さん、何か消えてなくなりたいような深刻な悩みはありませんか?」

 「……無いわ」

 少しの沈黙の後そう答えた。勿論二人はその沈黙すら容赦しない。

 「回答に迷いが感じられますねぇ。曖昧に聞こえますよ。もう一度問います。夕夏梨さんには消えてなくなりたいような深刻な悩みはありませんか?」

 「だから、ないって言ってるでしょ」

 「そうですか。では質問を変えましょう。夕夏梨さん、貴女は今学校に行きたいですか?」

 「普通よ」

 この質疑応答で何がわかるのか俺には分からなかった。質疑応答はどんどん意味不明な方向に飛んでいこうとしていた。

 「じゃあ夕夏梨さんのご趣味はなんですか?」

 「漫画を読むことよ」

 「奇遇ですね。私もそうなんですよ。私ですと、最近は『となりの丸々さん』でしょうか」

 「私もそれ読んだわ!最新巻読んだ?」

 「ええ、確か前回はクリスマス編じゃありませんでしたっけ?ホワイトクリスマスでの二人のデートシーンといったら」

 こんな様子で俺そっちのけで約一時間程楽しくしゃべっていた。これくらい楽しく漫画の話をしているのなら朋子の家にテイクアウトしてほしいところなのだが、そんなわけにもいかないのでそんな不遇に溜め息をつきながら呆然と見ているしかなかった。

 午後五時くらいだろうか。ようやっとお喋りが終わって朋子が帰る支度を始めた。今回朋子は何故ここに来たのかは最後の最後まで俺は知ることが出来なかった。出来たのは朋子を駅まで送ったことくらいだけだろうか。

 「ありがとうございました。楽しくお話しできたことですし、亮平は亮平で頑張ってください!じゃあね~」

 「お、おう。気を付けて帰れよ」

 ただただ手を振って見送るしかなかった。


 それからというもの夕夏梨の不登校生活は続いた。行ってトラブルを招くよりかはよっぽどいいが、それも限界がある。夕夏梨が家で何をしているか、それは俺もよくわからない。何を思っているか、どんなしぐさをしているのか、どんな表情なのか、それらすべてが俺にはわからない。唯一わかるのは発する声にのせた気持ちそのものだけである。しかし今までで一番の難題である。思い出してほしい。七月のとある日に俺は若葉や和と共に海に行った。そこで俺は同じ日をループするという奇怪な事件に巻き込まれた。その時は表情から読み取れる気持ちでなんとか解決することが出来た。他の場合だってそうだ。しかし今回は視覚に頼れず情報も少ないとなると、もはや絶望と言えた。そして、二日の時が経った。


9月6日

 「今日もお休みか。やけに休み続けすぎているな。だれか事情を知っているやついるか?」

 教室全体が静寂に包まれた。さっきまでの喧騒な様子とは違って水を打ったような様子で全員が先生に注目する。

 そう、今日も夕夏梨は学校に来なかった。誰もが不登校だろうと思いつつも誰も言わない。そんな空気に満ち溢れている。朝のHR(ホームルーム)を早々に終わらせた先生は足早に教室を去っていった。

 「亮平、これはあまりよくない状況ですよ。行方不明が続けばいずれ先生は動きますし、ご両親にもその情報が行き渡るでしょう。最悪警察沙汰になる場合も想定出来ますし、これが私達の限界じゃないですかね?」

 いつしか俺に近付いてきた朋子が俺に耳打ちする。そんなこと俺は百も承知である。だから俺は朋子に小さな声で、横にいる和に聞こえないような囁き声で言った。

 「もう引き返せないだろ。こうなったらなんとしてでも原因を見つけてやる」

 「私も最大限協力しますよ」

 朋子の微笑が最高潮に達したのを俺は見逃さなかった。


 でもな、限界ってそう易々と無視できるものじゃないんだぜ。昼休み、俺達はいつものメンバーで弁当を食べているのだが、どうも様子がおかしい人が目の前にいた。俺の隣に座っているのは和だ。ジト目で俺を睨んでやがる。どう見ても不機嫌な彼女は意を決して俺の方を見て言った。

 「ねえ、亮くん。今何隠してるの?」

 俺はすぐに咳き込むことに成功した。しかし飯山が続けて言葉を紡ぐ。

 「ネタはあがりきっているぞ。夕夏梨の不登校、電話中の謎の声、朋子との会話の多さ、あらかた夕夏梨が身体不規則症候群、おそらく透明化現象にかかってしまって、事を大きくしないよう自分一人の実力で何とかしようとして失敗した、そんなところだろ」

 「それにあいあい、おそらく夕夏梨さんはあいあいの家にいるんじゃないかな。夕夏梨さんの安全のために、監視役に二人の幼女がいるんだからね。だから今日学校終わったらあいあいの家にお邪魔して調べても良いよね?居なかったら諦めるけど、そんなこと出来ないよね?出来るわけないよね。だって居なくなったら大事(おおごと)だもん」

 「しかも最近亮平くんはともちんとたくさん話してるじゃん。どうしてそんなに話すのかな?おかしいよね?」

 飯山に続いた沖根は俺をとことん言及し、それに続いた若葉だが、別にいいだろ!俺が誰と仲良くしたって。

 「くっそー。ここまで推理されちゃ降参するっきゃねーよ、もう」

 俺は仕方なく9月2日に透明少女に出会った事を始め、今日までの事をざっくりと説明した。

 「まあ、自分の力でなんとかしようとしたところは評価しよう。でもな、今回の場合は運が悪かったな。まさか今までのなかで一番面倒臭いものを引くだなんて」

 「亮くん、気持ちもわかるけど助けを求めてほしかったかな。私達、全力でサポートしたのに」

 「悪かったよ。まさかここまで長引くとは思わなかったんだ」

 俺は謝ることしか出来なかった。それでも状況を理解しているんだろう。飯山がさっきから唸っているばかりだ。

 「でもな会原、今回は僕達に助け求めたって同じ結果だったさ。勿論沖根のお母さんに頼んでも無理だろう。そんなの自分の力でなんとかしないとって言われるのがオチさ」

 珍しくネガティブな飯山である。いつもなら「仕方ない。やってやるか」なんて言いそうだが、それとは真逆である。

 静寂が訪れたことをいいことに、俺は席を外した。


 トイレに行き用を足し終え手を洗って出ようかと思ったそのときだった。女子トイレからの会話が男子トイレまで聞こえてきた。俺はそれを無視してトイレから出ようとしたときだった。

 「ねえ、最近夕夏梨の奴見なくなったよな」

 「なー、死んじゃったんじゃないかしら」

 「まあでも学校にずっと来なくなるのも限界あるから、そのときのお楽しみとして、次は何してやりましょうか」

 こんな会話が聞こえてきた。俺は耳を潜めた。決して変態行動じゃねーぞ!

 「仕込みは終えているからね。今度こそやっちゃいます?」

 「やっちゃお、やっちゃお。今までの鬱憤全部あいつにぶつけるっきゃないしょ」

 「夕夏梨は私にあんな苦しさを押し付けられたんだ!私達を敵に回して生きれると思うなよ。それに夕夏梨の奴のあんな顔をするところ想像すると、アハハハハwww」

 これだけで十分だった。何があったかは置いておくとして、彼女達への怒りを抑えつつ、俺は彼女達に少しだけ感謝した。何故かって?決まってるじゃねーか。

 「これで解決の糸口が見えたぜ」

 足早にその場を後にし、俺はクラスの扉を開け、和に近付くと、耳打ちした。

 「ここから一番近いトイレにいる女子三人の名前を把握してくれ、頼む」

 「わかった」

 彼女は席を立ち、廊下に出てったところで俺は解決方法を彼らに力説した。

次回予告

 あけましておめでとうございます!2019年12月31日からお送りする、ども!モグポクです!えっ、キャラの次回予告が聞きたい?いいじゃないですか、こういう日があっても!というわけで2020年ですよ!オリンピックありますよ!というわけで今年もよろしくお願いします!

次回 『一晩寝たら透明少女になってて生活が不便すぎる件 その5』

 続きは次回!?それでは~ではまた(@^^)/~~~

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