向日葵若葉の憂鬱
日本某所、とある高校は今日も平和な一日をスタートさせていた。グラウンドには野球部の練習風景が目に見え、いつか甲子園に出場出来るよう日々練習する姿は野球部ならではの青春を感じさせる。昇降口には少しずつ高校生が登校している。高校生たちは楽しそうに友達と「昨日のテレビ見た?」とか「見た見た。面白かったよね、あの芸人」とか、そんなことを話している。そんな平和な雰囲気をまとった高校はゆったりとしていたが、当然異分子のような存在が高校内に侵入したことにより、その雰囲気が崩壊した。高校の正門を挨拶していた生活指導部の先生はその異分子に気付き、
「なんで女子が学ラン着て登校してるんだ?」
と、昇降口近くの高校生専用の駐輪場まで走ると既に異分子は「やばっ、やっぱそうなるか」とか言いながら走り始めたところだった。それに気づいた生活指導部の先生は、
「おい!待てコラ!止まれ!」
とか言いながら異分子よりも一回り速いスピードで異分子を追い、一階から二階の間の階段の踊り場でついに捕まえた。
「おい、これはどういうことだ」
生活指導部の先生は厳しく問いただす。
「えっとー、この学校は制服登校必須高校ですよね?」
「だからと言って女子は女子の制服がある、しかもその制服を着るという校則があるだろが」
一種の例外がない場合制服は決められたものを着るという校則はその高校にはあった。
「えっとー、じゃあお…私はどうすれば良いのでしょうか?」
異分子、学ラン少女はそう聞くと、
「学校が貸しているブレザーがあるから着なさい」
と言われた。その後職員室に連れてかれ、言われた通りブレザーに着替えた少女は面倒くさそうな顔を浮かばせていた。だが、先生方からの追撃はここで止まることを知らなかった。
「で、君はどこのクラスの人かな?私、見たことないんだけど」
「……………」
少女は黙り込む。そのとき一人の少女が職員室に入った。
「失礼しまーす。鍵を返しに…ってあれ?亮ちゃんなんでここに?」
そのとき亮ちゃんと呼ばれた少女はあちゃーという顔をしていた。先生はそれを聞き優しい表情を浮かばせ、
「向日葵さん、この人を知っているの?」
と問いかけた。向日葵さんと呼ばれた少女は、
「ええ、ここにいるのは会原亮平ちゃんですよ」
と即答した。先生はそれが理解できないような顔をした。会原亮平と言えば約一週間ほど前校内で公開告白事件で告白された人物だからである。疑いの眼差しを浮かべた先生は、
「しかし、会原君は男子生徒ですよ」
と、事実を言った。が、
「これはこれで事情があるんです。信じられないかもしれませんが。ですが先程学ランを着た少女が校内に入ってきたという噂を耳にしました。ですので確認してみてください。その学ランがいったい誰のものかを」
と、向日葵は一息で先生にそう論破した。先生は学ランをよく見ると名前を書くところに確かに『会原亮平』と書かれていた。
「確かに『会原亮平』と書かれていますが、この少女が本当に会原亮平という証拠はあるのですか?」
と、向日葵に問いかける。証拠、それだけでこの場をひっくり返せる単語である。しかし、
「確か5月10日の2限の現代文の授業は芥川龍之介の『羅生門』に入ったばかりでしたね、先生」
と、亮平は決定的なことを言った。
「………わかりました。私は信じませんがそう言うことにしましょう。私から担任に報告しておくから」
と、珍しいものを見るような顔をしてから亮平たちを解放した。職員室を出ると、
「だ・れ・よ!策があるとか言った奴は!」
と、向日葵が怒ったような顔をしてそう言った
「わりぃ、わりぃ、このまま言っても大丈夫かとおもったら、無理だった」
「そりゃ無理に決まってるだろーが。馬鹿なの?アホなの?それとも」
という風に亮平を罵詈雑言をありったけぶつけた。
「いやー、本当にごめん。あそこで若葉が乱入しなければやばかった…か?まあ、マジサンキューな」
と亮平は再度謝る。若葉と呼ばれた少女は、
「本当、迷惑なやつ」
と、言い捨てた。そして、
「でもさ、あのときの若葉、めっちゃ格好良かったぞ。若葉ってかっこいいんだな」
と、亮平は無意識にその言葉を口走ったが、若葉はみるみる顔を赤くし、
「わ、私、かっこいい?」
と、聞く。すると
「うーん、今は急にかわいくなったけど」
「…亮ちゃん、人誉めすぎ」
「俺は事実を言っているだけだ」
と、これまた無意識に亮平はそう返す。そしてクラスに着くと、
「あー、どうしよ」
と、ドキドキしていたが、
「もうばれてるわよ、行きましょ」
と、若葉がドアを開け、クラスを混乱状態にさせる発端を作ることとなった。若葉はその混乱状態でいろんな人から質疑応答することとなったのだがその間も胸のドキドキが止まることを知らなかった。
* * *
7月21日
「というのが私が亮平くんを好きになった理由」
と、私は嗚咽混じりでそう言う。当時のことを思い出すうちにまた大声で泣きそうになるがどうにかそれをおさえこんだ。私は彼、会原亮平に包まれながらそんな話をする。あのとき私はこのループを何とかしようと思ったのだが亮平くんもループに巻き込まれており、その原因を突き詰めてしまい、その後私がなにもかもぶちまけてしまい涙ながらに告白し振られ大声で号泣したあとの話である。
「んで、俺と一緒に行動する機会が増え、それでその想いは強くなったというわけか」
と、亮平くんは的確にそれを推理した。それはあながち間違っておらず幼稚園での職場体験でそれ想いは増幅させることとなった。
「で、告白しようとし海に誘ったわけか」
「まあ、それはそうなんだけど」
私は言葉を濁す。
「だけど?」
「正確には…」
* * *
日本某所、とある一軒家にはたくさんの人々が集まっていた。幼女から高校生の母親までいろんな人が集まっている。そこでなにか話しているかと思いきや笑いを誘いだし、また、一人の少年が高校生の母親に対して言及したりと、何かといろんな話をしていた。約二時間その話が続いたあと、亮平と幼女以外全員がその一軒家から出、帰宅し始めた。そのとき、その高校生の母親らしき人が若葉に話しかけた。
「ねえ、若葉ちゃん。唐突に聞くけど、若葉ちゃん、亮平君のことが好きでしょ」
「え、いや…違います、よ」
と、明らかに挙動不審にそう返す。
「若葉ちゃん、わかりやす!もう隠さなくていいよ。今も心はドキドキし始め、もう好きでいられない、この気持ちどうしよう!」
「私の心、読まないでください…」
と、私は亮平が好きですと言っているようなことを言った
「アハハ、まあ、乙女の気持ちの若葉ちゃん、可愛いよ~だから、どっか誘っちゃえばいいのに。どうせ、亮平君は私への報酬にバイトするんだから、時間は限られてるし」
「……………」
若葉は黙り込む。その反応に未知子は微笑を浮かべ、
「大丈夫よ。存在を消させたりしないから、どこか誘ってみたら」
と、提案した。若葉はその提案に、
「わかりました。なんとかしてみます」
と、返答した。
(夏どこに誘おう。海?山?まあ、あとで聞いてみるか)
と思った。ドキドキ、それは若葉にとっては心地良いものでしかなかった。
* * *
「まあ、こんなことがあって」
と私は自供するようにそう言った。
「沖根さんかぁ、あの人はなんでも見透かしているからな」
と、素直な感想を述べた
「で、あのときにあんなこと考えてたのか?」
あのときはたぶん作戦会議のことを指すだろう。
「なわけ」
「だよな」
「ある」
「あるんかい!」
ぶっ、ハハハハハ。私は思わず吹き出してしまう。そして亮平くんもつられて笑い出す。
「ねえ、亮平くん。私の憂鬱の2ヶ月返して」
「は、はい?」
と、笑っていた亮平くんが急に素頓狂な声を出す。
「無理なら今私のわがままに付き合って」
「………なんでしょうか?」
無理だと判断したのか、そう言う。
「私の憂鬱を全部叩き出すから付き合って」
さっきまで大声で泣いていたはずなのにまたぶり返して決まった。語尾なんてもう泣きそうになった声である。それに気づいたのか、
「なんとでもしちゃってください」
と、淡々にそう返した。
「なんとでもって、、まあ、じゃあ泣くね」
「さっきも泣いていて涙貯蓄しまくってるだろ!まだあるのかよ。しかも「じゃあ泣くね」って宣言する人初めて見たわ!泣きたきゃ勝手に泣け」
亮平くんがツッコミを入れた。
「アハハ、じゃあ泣きまーす、うっ、」
すぐさま両頬に涙が先走る。亮平くんが「笑顔から泣き顔に変わるの早っ!」とか言っているが、それどころではなかった。私は憂鬱を一気に全部出そうとした。皆を待たせないようにしなきゃということも考え、憂鬱を一気に全部出した。
「うわーーーーーーーーーーーーーん」
と私はついに号泣してしまう。一気にだそうとしてしまい、先程よりも大きな声で泣く。ああ、もう…私ってダメだ。
夕焼けに染める江ノ島近くの海岸に泣き虫の少女が泣いていた。
次回予告
まこ「ねえ、お兄ちゃん」
亮平「なんだ、まこ?」
まこ「この物語ってハーレムものだっけ?」
亮平「違う…けど、なんで?」
まこ「お兄ちゃん、モテすぎ。おかしい」
亮平「おかしくねー…いやその前にモテてねーよ」
まこ「そう思うなら序章から巻き戻して見返せ。あと、」
亮平「あと?」
まこ「女の子泣かせ過ぎ」
亮平「……………」
まこ「で、次回はどんなお話?」
亮平「次回は確かまこ目線で書かれたような」
まこ「マジで!?ヤッホー!ついに私の時代がやって来た!」
亮平「でも、そうでないかもしれない」
まこ「腹パン一撃喰らわすぞ」
亮平「痛いからやめて(棒)」
まこ「次回予告」
次回 「一晩寝たら幼女になっていた件」
亮平&まこ「ご読了、ありがとうございました!」




