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一晩寝たら奇想天外なことが起きていていつの間にか青春していた件  作者: モグポク
第七章 一晩寝たら奇想天外なことが起きていていつの間にか青春していた件
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一晩寝たら野球部のマネージャーに抜擢された件

5月20日

 この日俺は奇妙なものを見た。野球部の朝練が終わりクラスに戻るときだった。

 「おい、待てコラ!止まれ!」

 という怒号が聞こえたかと思えば一人の少女が昇降口前を走っていき昇降口に入る。その子は何故か学ランを着ており後ろをたまに振り返りながら全力疾走していた。そのあとを先程怒号を響かせた先生が昇降口を通過した。その後その子がどうなったかも知らないし俺は呆気にとられると共に、

 (誰だろう、あんなかわいい子、よし)

 咄嗟にいい案が思い付いた。よし、これはすぐ決行だ!


 そんなこんなでいつの間にか放課後になっていた。俺の頭の中は既にあの女の子でいっぱいになっていた。そしてその女の子がいると噂されているクラスでその女の子を待ち、出てくるところを待った。案の定帰りのホームルームが終わった途端すぐに三人の女の子がクラスから出てきた。一人は先程の学ラン少女、その横を公開告白で告白した野中和、その横に誰かは知らないがショートヘアーの女の子が出てきた。学ラン少女は今はブレザーを着ていた。俺はすぐにその女の子達に声をかけた。

 「やあ、君達、俺は高橋大和(たかはしやまと)、野球部の副キャプテンなんだけどさ、野球部のマネージャーとかって興味ある?」

 と俺が計画していたことを実行した。するとすぐにショートヘアーの女の子が反応した。

 「いや、別に興味ないですし、しかも私テニス部員っすよ」

 と言い、その横にいた野中さんも、

 「えっとー、私も結構です」

 と淡々と答えた。さあ残りはあと一人。

 「うーん、野球部といえば岡島なんだよなー、ってうわ!」

 いきなり大声をあげたかと思えばいきなり現れた岡島正がそこにはいた。

 「あれ?大和先輩じゃないですか。一体なんのご用で?」

 ギクッ、

 「岡島、簡単に説明するとな。俺らがそこにいる野球部の副キャプテンとやらにマネージャーの勧誘を受けているってわけ、以上説明終了」

 と学ラン少女が岡島にそう言う。すると、

 「何してるっすか、先輩。こいつらは別にそんなの興味ないんで、しかもこのあと部活じゃないですか」

 と岡島が釘を打とうとした。が、学ラン少女が前に出て、

 「まあまあ、岡島。お前確か野球部だったろ。なら別に引き受けてもいいぜ」

 なんて言ってきた。そして、

 「マジで!?」という俺の声と、

 「「えっ!」」という二人の少女、そして、

 「別に無理しなくてもいいんだぜ」という岡島の声が見事に重なった。

 「いやいや、別に無理なんてしてねーよ。それにマネージャーってたしか基本的に女の子がやってるもんだろ。ほら、こんな貴重な体験逃したら、俺後悔しそうだしさ。けど」

 けど?

 「条件は出させてください。まず5月26日は予定が入っているので参加できません。それにいつ女体化が切れるかわかりませんので、もし切れたら即行退部するんで」

 ん?

 「それは、どういう?」

 ことなのだろうか?

 「あ、俺の名前会原亮平なんで」

 俺はビックリした。あ、あの会原亮平だと!あの公開告白で告られたという。で、でも、

 「でも君は女の子じゃないか!」

 「ええ、だから今日学ラン着て登校したら追いかけられちゃって」

 なるほど、だからあのとき学ランを着ていたのか!でも、こういうことって実際にあるのか、俺は疑った、けれどもブレザーを着させられている辺り本当なのだろう。

 「わかった。じゃあ今日からよろしく頼む」

 と俺が言うと、

 「ああ、こちらこそよろしくお願いします」

 と、会原は言った。


        *  *  *


 俺はこの日急に高橋大和という野球部の副キャプテンとやらにマネージャーに抜擢された。それがどういういきさつでなぜ俺なのかは今だ不明のままだが女体化という特権で俺は野球部のマネージャーを勤めることとなった。まず先輩マネージャーから仕事の内容を説明され、今日の練習メニューから部員たちの水筒の準備、応援もしたりとにかく部員をアシストする仕事が山積みだ。そして部活が終わるとボールやらユニフォームやらを洗い清掃を済まし、そして部室をきれいにしてその日の活動を終えた。先輩マネージャーからは、

 「仕事が早くて助かるわ~」

 ということを言われつい笑みをこぼしてしまった。そんなこんなで先に門で待っていた岡島のもとに向かうため小走りで行くと途中で目線を感じた。どこからだろう?ちょっと不気味だ。だから俺は全力疾走で岡島のもとに向かった。

 「お、来た来た、おーい、おせーぞ!………?」

 という声が聞こえてきた。なぜ最後にクエスチョンマークがついたか、それは大体予想ができた。

 「おい、どうした?なにか怯えてるような顔をして、珍しい」

 と岡島が心配してくる。

 「街灯の光に照らされたお前の顔が怖い」

 普通はかっこいい見た目なのだが街灯の光のお陰で怖くなっているのは事実だが。

 「ん?そうか?まあ、仕方ねーな」

 ハハハ、と岡島は笑う。

 「そういえばお前が怯えてる顔ってちょっと」

 「可愛いとか言ったらぶっ殺す」

 「わかったわかった。言わない…ウッ!」

 俺は渾身の腹パンを岡島に決めた。

 「な、なんで?…」

 「ちょっと気持ち悪いから。じゃ、いくぞ」

 「ちょ、待てってば!」

 「あー!!」

 「どした?」

 「俺今日チャリ通だったわ」

 駐輪場戻るのダル!なんて思いながら二人は駐輪場まで戻りチャリに乗り門まで行きそこで岡島とは別れた。本当にあの暗闇からの目線は一体なんだったのだろうか。考えても答えなんて出なかった。


 それから先は過ぎるように時が流れていった。マネージャーの仕事は野球部の活動のない月曜日以外は毎日あった。平日はいつも通り選手たちのサポートを土日とかになると練習試合がありその準備等に追われた。そんなこんなで6月8日を迎えることとなる。


        *  *  *


6月8日

 俺はそのとき心がドキドキしていた。練習しているとき、水分補給時に水筒を渡してくるとき、「お疲れさまでーす」といってくる声に、俺は恋していた。そう、あの少女に。初日からその少女のあとをつけてみたりだとかどんなことをしているのだろうとか気になり遠くから見てみたりもした。ストーカー見たいに思われるかもしれないがそれだけ俺は夢中になっていた。だからこのなけなしの勇気を振り絞って、俺は練習後彼女がいる部室に入った。そこには彼女しかおらず他には誰もいなかった。

 「お疲れさん、今日は君一人だけかい?」

 「ええ、そうですけど」

 彼女がそう返す。俺は心がドキドキしていたがここで決めないと男じゃねぇ。

 「俺さ、言いたいことがあるんだよね」

 「な、何でしょうか?」

 多少動揺しながらも聞き返してきた。その仕草も可愛い。

 「俺、最初見た時から君のことが好きだったんだ、だから」

 「先輩。俺、好きな子いるんですよ」

 「知ってるさ、だけど俺は君が好きで好きでたまらないんだ」

 もう俺は無我夢中だった。

 「もしここでOKしちゃうと和に殺されます」

 「隠れて付き合えば良いじゃないか」

 「先輩。俺は和一途なんすよ。なに言われようと断ります。だから、ごめんなさい」

 「……………」

 クッ、もはやここまでか。俺は涙ながらに無言を貫いた。


 次の日6月9日、会原亮平は野球部の練習に来たものの俺とは話さなかった。まあ、まだ話す機会はある、なんて思っていた。けれど翌々日驚愕することとなった。


6月11日

 ああ、なんということだ。会原亮平はもとの男の姿に戻っていた。もう、あの女の子を見ることがないと知ると何してるんだという気分にもなる。以上、俺が経験した次元を越えた失恋の話である。そして俺は今日も野球部の副キャプテンとして活動を始めた。

次回予告

 ども、最近暑いと感じるモグポクです。いや夏ですねー。いよいよ夏って感じですね。夏になにしようか考えてるうちに時間が過ぎていていつの間にか一日が終わっているというオチを最近当たってしまって時間って大事だなぁと思いました。次回予告!

次回 「向日葵若葉の憂鬱」

久しぶりの、それでは~ではまた(@^^)/~~~

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