一晩寝たら海に誘われた件 #4
プルルルル、プルルルル、ガチャ
「もしもし?突然朝悪いんだけど今日海に行かない?」
「今何時だと思ってんだ。しかもあんな暑いところにいくわけが…」
「え、でもいつぞやのお前が言ってたぞ。海に行くって」
「そんな嘘に騙されると思ってるんか?」
「お前が言ったんだからな、しかも動機が不純すぎるって」
「ちなみにそのときの僕はなんて?」
「俺のループの原因と若葉たちの水着姿をまじまじと見るため」
「そのときの僕は変態過ぎるだろ」
「ああ、俺もビックリしたぜ。あんときは変態、心残りの元凶容疑者って言ってやったぞ」
「僕は行かないからお前だけでいけ」
「お前が言ったのに?」
「そんなはずないだろ」
「事実が事実だから仕方ないだろ、なら俺はなぜ電話を掛けなければならなくなったのか?普通の俺ならこんな朝にお前に海なんか誘わねーぞ」
「……………確かに。これは事実なんだな?」
「俺も認めたくはないがな」
「…わかった、わかったから、はぁ~。何時集合だ?」
「8時に高校の近くの駅前」
「わかった」
ガチャ…
その数分後若葉から電話がかかってきた。もう四回目なので何時何分何秒かかってくるかなんて亮平は記憶していた。その後まこを叩き起こし水着の準備をする。そのとき亮平は誰が心残りの紐なのか警戒していた。その候補として亮平の知っている人というのは容易に予想できた。だからまこがそうなのか確認したがそういうそぶりは見えなかったし仮に亮平のようにタイムループしていたら亮平に知らせることも容易に予想できたためまこは心残りの紐ではないと亮平はそう思った。その後二人は高校の近くの駅に向かった。駅前には既に若葉たちが亮平たちを待っていた。だが今までと違うのはその中に飯山が含まれていたことであった。
「ヤッホー、亮平くん!てゆーか友達を誘うのなら私に言いなさいよ」
「ヤッホー、亮くん」
若葉と和が挨拶してくる。
「おはよう、若葉に和、そして岡島、沖根、あと」
と、亮平は飯山に近づく。
「変なことがあれば教えてくれ、飯山」
「僕をスパイだと思ってないか?お前」
ここで二人のひそひそ話に怪訝そうな顔で若葉が声をかけた。
「亮平くん、飯山君と何かあったの?」
「いやいや、何もないよ。ただ、飯山が海に生きたがっていると風の噂で聞いてな」
亮平はすぐさまごまかす。アイコンタクトで話を合わせろと送ったのだが飯山はそれを無視したが何も言わなかった。
「ホッ、いやぁ飯山君が海に生きたがっているなんて知らなくてゴメンゴメン」
若葉が飯山に謝る。そして、
「ねえーいつまでここで話しているのかな?そろそろ行こうよ」
と、沖根がそう言ったので我々は江ノ島に向かうのだった。
その後江ノ島での一日は今までと何も変わらなかった。海ではしゃぐ女子達、若葉手作りのサンドイッチ、亮平が大差で負けたビーチバレーと、何の変化が無さすぎて亮平が解決策を思い付くことはついぞなかった。強いていうならそれに飯山が加えられていることだけで、事実何も変わらなかった。しかし、乗り換えのときに飯山が「僕は今日こっちを使って帰るから」なんて言って亮平と同じルートを進んだ。そして帰りの電車内まこがすやすやと寝ているところで飯山が言った。
「心残りの紐が誰かわかった」
「はい!?」
亮平はつい大声を出すが電車内と気づいて無言になる。周りの乗客の困惑な視線が突き刺さる。
「逆にわからないほうがおかしい。というか本当にループものって存在するんだ。そしてその状況に遭っているお前はどうかしてる」
「どういうことだ?俺がらみなのか?」
「そうだろう。そしてその心残りがなんなのかも大方理解した。逆にお前はお前ではしゃぎすぎだ」
「いやー、リラックスすれば見つけられるかなぁ~と思って。それに海に来てリラックスしない飯山もどうかと思うけどな」
「僕は僕で少しリラックスできたさ。それはそれと、本題に入ろう。さて、思い出してみろ。海に誘った人、視線、そして、帰りの様子で明らかに心残りの残ってそうな人なんて一人しかいないだろう」
なぞなぞを出すような子供のような質問をする。亮平はすぐに答えを出した。
「海に誘った人、視線、暗そうな顔…あっ」
その時亮平の頭の中に一人の少女が浮かんだ。江ノ島での一日の内一人だけ暗い顔をした人が。
「お前が気づくのが遅い。いいか、心残りの元凶者にしてお前を巻き込んでいるのは_」
次回予告
「ども、第六章一晩寝たら海に誘われた件次回予告担当の向日葵若葉と、」
「野中和でーす」
「今日は7月21日かー…」
「海を満喫したら次は山に行こうね」
「えー、山は虫がいっぱいいるから嫌だよー」
「山は綺麗だよー、ほら騙されたと思って行こ!」
「以上都会っ子の戯れ言でした、次回予告!」
次回 「一晩寝たら海に誘われた件 #5」
「次回は最終回!」




