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一晩寝たら海に誘われた件 #1

※この小説はすべてフィクションですので実在の地名・団体等とは一切関係ありません。

 海、それは海水に包まれ、我々の気持ちに安らぎを与え、生き物には生命を与え、それを食す人間がいる。海は人間にとってなくてはならない存在である。


 「海ってきれいだよね。太陽が反射してきらきらとヒカリ、青々としていて、海風や砂浜がまた海のよさを引き立てている、そう思わない?」


 「そこまで海をまじまじと見て吟味したことはないなぁ」


 「あら、そう。でも私にとっては海は私の一部でもあるんだよ」


 「それは身体の一部が海水でできてるってこと?」


 「あはは。本当は私の人生の一部って意味なんだけど……うん、そうかもしれないね。それに、ほら、海が運んでいる空気を吸っているとさ、海になった気持ちにならない?」


 「スーー、ハーー。海に来たとは思えるけど海になった気持ちにはならないかな」


 「感性は人それぞれだよ。それに私さ、将来海に関する仕事に入りたいんだよね」


 「それくらい海好きなんだな。まあ、でも僕にとっても海は大切な思い出なんだよな」


 「なにそれ気になる!」


 海の波が砂浜まで聞こえてくる。気持ちいい空気が海岸を包んだ。


        *  *  *


7月21日


 日本某所にとある一軒家があった。見た目はかなりでかい二階建ての白色の一軒家で少し小さい庭はきれいに片付いている。


 そこには二人の人間が住んでいて、一人は男子高校生であろう人が、もう一人は5歳ぐらいの幼女がいた。もし高校生で一軒家を持っていたとしたらかなりお金持ちであろうと推測される。


 時間は午前6時を少し回ったところ。二人はまだ夢の中に出掛けている最中だ。その証拠に二人の部屋からはそれぞれイビキが聞こえてくる。


 そのとき、少年のベッドの上にあった携帯が鳴り始めた。独特の着信音が家中に響く。そして、男子高校生であろう人がもぞもぞと動いた。


 夢の世界と現実世界が曖昧になる。つまり寝ぼけていた。寝ぼけたまま手はスマートフォンの方へ。そして、通話ボタンを押した。


 「も…もひ、会原でふ~」


 声は完全に寝ぼけており目も完全には開いていない。


 「あ、もしもし亮平くん、おはよー!」


 と、電話の主が元気よく答えた。会原亮平(あいはらりょうへい)はすぐに目が覚め、驚いた様子だったが、すぐに電話の主に向かって言った。


 「おい、若葉、今何時だと思ってるんだ?今すぐに俺の和デートin遊園地を返せ」


 「え、亮平くん、夢の中でもデートしてるの?」


 若葉と呼ばれた電話の主はそう返す。


 「いいじゃないか。夢は自分の世界だから何を見ようが俺の勝手だ」


 「それでもいいけど~」


 と、若葉は語尾を伸ばした。そしてこう続けた。


 「今日さ、海行かない?和ちゃんとかを誘ってさ」


 「だからあのとき海がいいか山がいいかを聞いたんだな。勿論現実(リアル)に和と会えるのなら、行くぞ」


 「動機は和ちゃんかっ!」


 「あ、そうだ、まこを連れていっていいか?あいつも行きたがるだろうし」


 「勿論いいよ!じゃあ8時に高校の近くの駅前に集合ね!、じゃね」


 と若葉は言って電話を切った。亮平はすぐにまこと呼ばれた幼女がいる部屋にいくと、大声で、


 「海に行きたい奴は起きろー!」


 と叫んだ。まこはすぐに跳ね起きると、


 「行きたい!おはよう!お兄ちゃん!」


 と声高らかにそう叫んだ。他者から見れば元気な奴だと思いざるを得ないし近所迷惑を招きかねない。


 「うし、起きたな。海に行くから急いで準備していくぞ!」


 「押忍!」


 と、朝からテンション100%の二人は一軒家中に響き渡るような大きな声で叫んだ。そして海にいく準備を始めた。のちにまこの水着が無いことに気づくのだがそれはまた別の話。



 亮平とまこが高校の駅前に着いたのは8時少し前だった。


 既に駅前には亮平に電話を掛けてきた若葉こと向日葵若葉(ひまわりわかば)と和こと野中和(のなかなごみ)、そしてもう二人の男女がいた。


 若葉は白のワンピースを着ていて既にサンダルも履いている。そして白色のキャペリンを被っていていかにも夏をイメージさせた服装である。


 対して和は水色のTシャツに白色のショートパンツを履いていて、非常にラフな感じの服装である。


 二人は亮平に気付くと、


 「ヤッホー!亮平くん!」「ヤッホー!亮くん!」


 と若葉と和が亮平に挨拶した。二人とも微笑を浮かべている。


 「おはよう、若葉、和、あと、岡島(おかじま)沖根(おきね)も」「おはようございます!」


 と、亮平とまこは四人に挨拶を返した。まこのピンクのスカートがそよそよと揺れている。


 「うっす、亮」


 と、岡島と呼ばれた少年が、


 「おはよう、あいあいにまこちゃん」


 と、沖根と呼ばれた少女が挨拶を返した。


 岡島正志(ただし)、亮平達と同じ学校に通う同級生で、野球部に所属している。今日はたまたま部活が休みだったのだろう。輝いた笑顔は周りをも輝かせ、炎の雰囲気を漂わせている。


 沖根(まもる)、亮平達と同じ学校に通う同級生で、何故か身体が女体化したり見えなくなったり入れ替わりが起きたりという身体と魂レベルで起きる不可解な現象である、身体不規則(しんたいふきそく)症候群(しょうこうぐん)に興味を持った少女。今日は半袖のパーカーに青色のジーンズを履いている。

 ちなみにあいあいは守が亮平に付けたニックネームである。


 「やっと来たよ~。まあ時間通りなんだけどね」


 「やっぱり海に行くの楽しみなんだな、みんな」


 「そりゃそうでしょ。まあ、一番楽しみにしてるのは誘ってくれた若葉ちゃんだけどね」


 「いやいや、そんなことないよ~」


 「確かにまこも楽しみにしてるけどな」


 「そりゃ私海行くの10年ぶりくらいだもんね」


 「幼女の口からそう言われると混乱するな!」


 そのツッコミにみんなが笑った。会原まこは五歳だけれども生まれたのは亮平達と同い年だ。だけどたまに五歳だと思ってしまう。


 ひときしり笑った後、コホン、と若葉が咳払いした。大体が落ち着いてきた。亮平達に視線を向ける人もいなくなった。

 若葉が一歩前に出た。まばゆい笑顔を見せた。


 「今日はみんな急だけど来てくれてありがとう!それじゃあ行こー!」


 と、いきなり大声で若葉がそう言った。そして、


 「「「「「オー!」」」」」


 と、全員が元気に声をあげた。周囲の人間はそれを見てまた何事かと思ったが去っていった。


        ※


 それから駅に向かい、青色のラインが通った車両に乗った。電車は住宅街を通っている。


 「そう言えばみんなで電車に乗って出掛けるだなんて初めてだな」


 人の少ない車両の青色のロングシート座席に若葉と和とまこが座っている。そして、亮平と正志と守は吊革を持ちながら立っている。こんな光景は亮平を含め全員が初めてだった。


 「そうだね~。なんだったらみんなで海に行くのも初めてだよ」


 「私電車に乗るの10年ぶりくらいよ。あのときお母さんと一緒に乗った電車楽しかったなぁ」


 「まこの10年ぶりエピソードはいつ聞いても驚くし、一つ一つが重いんよ」


 「までも新しく思いで作っていこうや。ボクも楽しみたいしね」


 電車は住宅街を通りビル街を通ったと思ったら、また住宅街が広がる。そしてたまに鉄橋を渡った。そして何分かに一度駅に着く。


 「にしてもすごいよね。こんな鉄の塊が動くなんてさ」


 「若葉、暇だからって意味のわからんことを言うのはよしてくれよ」


 「でもでも~、実際すごいじゃん」


 「までも動力は電気だから電気がすごいんじゃないか?」


 今主流に走っている電車は名前の通り電気で動いている。蒸気で動く電車もあるが、電気はとても早く車両を動かすことができる。その点では凄いかもしれない。


 「当たり前に感動するのは大切だけど、暇なことに代わりはないんだよなぁ」


 「それなぁ」


 「でもそろそろ着くよ」


 電車の電工掲示板にはまもなくと表示されている。おそらくこの駅で降りるのだろう。一時間の電車の末、もう少しで目的の場所に着きそうなのだ。つまり海は目と鼻の先。


 「ようやく海と対面かぁ。そう思うと楽しみだなぁ」


 「ごめん、亮平くん」


 「なんだ、急に謝って」


 「この駅は海の最寄り駅じゃないの。乗換駅なの」


 「あっ」


 そのとき電車のドアが開いた。



 その後、乗換駅にて電車を乗り換えし、また電車に揺られる。さっきよりも人の多い車両であるが、全員が座席に座った。住宅街が目の前に広がっており、たまにトンネルに入った。


 「10年ぶりのトンn」


 「もう10年前エピソードはお腹いっぱいだからな」


 そしてしばらくすると、車窓は一気に海景色になった。住宅街から海沿いの車窓になると、一同盛り上がった。特にまこは目を輝かせている。なにせ10年ぶりの海なのだ。そして、それに負けないくらい全員の目が輝いていた。


 「そろそろ降りるよ」


 「やっと着くのか。すごく疲れたな」


 「おつかれ、亮くん」


 海沿いからまた住宅街に入って、数分後に若葉は到着することを伝えた。電車に乗るだけで少しは疲労が溜まるものである。


 「二人ともまぶしっ!」


 亮平と和は若葉の言っていることがわからなかった。



 駅から歩くこと数分。遂に砂浜が見えた。煌めく砂浜には多くの人が集まり、各々水着を着ながら海を満喫している。そして、入り口の近くには海の家と思わしき建物が立っていて、そこには売店、更衣室などがあった。

 

 「やっと着いたかぁ」


 「ねー、長かったねぇ」


 「それじゃあ男共、入り口のところで待ち合わせね。私達の着替えを覗くんじゃないわよ」


 「覗いたら俺たち捕まるわ!」


 そして、各々更衣室で水着に着替えた。亮平は水色の、正志は赤色の短パン型水着を着て、亮平は上に黄色のパーカー型のラッシュガードを着た。



 男子更衣室で着替え終わった亮平と正志は海の家で女性組を待っていた。


 「そういや、水着サンキューな」


 「お礼なら俺のおかんに言ってくれ。もう使わない妹の水着を段ボールに入れて押し入れにしまってたんだからな」


 「あまり言う機会がないからお前にに言って、お前が岡島のおかんに伝えようとする魂胆なんだけど」


 「知ってた」


 意地悪い笑みを浮かべて笑う正志であった。それには亮平も苦笑せざるを得なかった。


 「全くー。岡島も言うようになっちゃって。俺はお前のこと信じてたんだぞ」


 「何を信じてるんだよ」


 「さあな。さてと、そろそろ来る頃合いかな。どんな水着で来ると思う?」


 「うーん。可愛い水着じゃないか?」


 「それは反則級の答えだしそうに決まってる」


 数分ぐらい待っただろうか。ようやく向こうの方から若葉の声が聞こえた。


 「お待たせー!」


 「お待たせられました…!」


 と、亮平は四人の女子の水着姿を見た瞬間、半ばみとれた。若葉は黄緑ビキニの、和は黄色のフリフリの付いたワンピースの、守は水色ビキニ、まこはピンク色ワンピースの水着を着ていた。守は上に白色の羽織を着ていて、首にはタオルをかけていた。


 いち早く亮平の視線に気付いた若葉は微笑を浮かべながら声をかけた。


 「なにじろじろ見てんだよ、男子たち」


 「いやー、一度に四人の水着を見れるのは我々男子にとってはじろじろ見ないわけにはいかないからな、なっ?岡島?」


 「お、おう!」


 「これだから男子は」


 と、若葉は呆れながら言ってはいるが、自分の水着姿を見られて内心はとても嬉しかった。


 「お兄ちゃん」


 「なんだ?まこ」


 「変態」


 「な、……」


 「wwwwww」


 亮平は絶句し和は爆笑した。若葉は苦笑している。亮平はなんとか弁明しようと試みたがまこは聞く耳を持たなかった。


 「と、とにかく、海に来たんだし、遊ぼうぜ!」


 「ねえ、亮くん」


 「ん?なんだ?和。変態だって言いたいのか?」


 「ち、違うよ!その…私、似合ってる?」


 「とてつもなく似合ってます!(即答)」


 「二人ともまぶしっ!これこれ、リア充め、いちゃいちゃするんじゃないわよ」


 と、若葉は亮平と和の会話に入ってくる。


 「おい、若葉、茶化すなよ」


 「茶化したのそっちだから、海で遊ぶんでしょ」


 「お、おう」


 若葉が中心に立つ。大きく息を吸って、この海岸中に響くくらいの大声で叫んだ。


 「じゃあいっちょいきますか!」


 「「「「「「オー!!!」」」」」」


 と、全員が大声で叫んだ。周りの注目を浴びてるとも勿論知らずに。



 それから亮平達は海で水をかけあったり、泳いだり、亮平を砂浜に埋めたと思ったら次は和が埋められ、そうこうしているうちにいつの間にか昼の12時を迎えていた。


 「みんなー!お昼御飯食べよっか!」


 と、和が亮平達に向かって叫ぶとすぐに砂浜を駆け出し和のいるところまで来た。


 「今日はねーなんと若葉ちゃんがサンドイッチ作ってくれたんだって」


 和が若葉が持ってきていたバスケットの中から何個かのサンドウィッチを取り出した。タマゴサンドにハムサンドなど、バリエーション豊富だった。


 「お、サンキューな、若葉、早速いただくぜ」


 「その前に手を綺麗にしてからね」


 と、和は亮平達にウェットティッシュを渡した。亮平達はそれで手を拭いた後、


 「よっしゃ、食べよーぜ」


 「「「「「「いただきまーす」」」」」」


 と、亮平、和、正志はタマゴサンドを、まこ、若葉、守はハムサンドを食べ始めた。


 「「うまっ!」」「美味しいねぇ」「う、うまっ!」「お、美味しいです、若葉さん」


 と、一同は称賛の声を若葉にかけた。若葉は照れながらも満足そうな笑顔を見せた。


 「え、えへへ~(*´∀`)♪ありがと、みんな」



 その後(またた)く間に全てのサンドイッチを平らげた亮平達は、


 「ねー!ボール持ってきたから、ビーチバレーでもしよ!」


 と、若葉が提案したため、亮平、和、まこチーム(以下『亮平チーム』)と若葉、正志、守チーム(以下『若葉チーム』)に分かれビーチバレーをやった。ちなみにコートは木の棒で描いた。


 「じゃあ始めるよ、サーブじゃんけんだ!」


 亮平と若葉がじゃんけんをした。結果亮平はパーを出し、若葉はチョキを出した。つまり、


 「よっしゃ、勝ったぜ~」


 ガッズポーズを高らかに決める若葉。亮平は敗北にショックを受け、和はよしよしと亮平の頭を撫でながら「ドンマイ!」と励ました。


 「よっしゃ、始めるぜ!リア充チームに鉄槌を下してやるぜ!喰らえ!若葉スペシャルサーーーブ!」


 若葉は砂浜をジャンプしてサーブを打った。きれいなフォーム。回転がかかり、高速でボールが放たれた。しかし、ボールは勢いが良すぎて亮平の頭上を高速で通過し明後日の方向へ飛んでいってしまった。


 「ちょっ、どこいくねん!」


 亮平はボールを追いかけた。ボールの到着点はとある少女の履いているサンダルだった。


 「すみません。ボールそっちに飛んじゃって」


 「見てた見てた。ビーチバレーボールでしょ。ホイ、ボールは返すね」


 少女はボールを亮平にパスした。亮平はお礼を言ってそこから去った。


 少女達はビーチバレーボールを片目で見ながらもおしゃべりを続けた。その頃亮平は大きな声で「遠くに飛ばすなぁ!」と叫んだ。



 結果、若葉のサーブミスによって亮平チームに一点入った。



 亮平チームのサーブ。サーブを打つのは会原亮平。


 「俺は若葉と違ってちゃんと入るように打つからな」


 「うるさい!早く打ちなさいよ!」


 コートの端から少し離れて、助走をつけてジャンプサーブを打った。ボールは緩やかな放物線を描いて若葉チームへと吸い込まれていく。ボールの先は沖根守だった。


 「オーケー。若葉ちゃん、パス!」


 見事なトスを決めて若葉にパスを繋ぐ。


 「岡島くん、任せた!」


 若葉のアンダーハンドパスによってネットの前で高く飛んだ。正志は助走をつけて、踏み込みにくい砂浜を大きくジャンプした。


 「おりゃあ!!!」


 岡島はきれいにスパイクを決めた。ボールはとんでもない勢いでコートの中心かつ誰もいないところに着陸した。幸いにも砂浜が勢いを吸収して、明後日の方向に飛ぶことはなかった。


 「お、岡島、は、反則級に強すぎだろ!」


 若葉チームに一点が入り1ー1の同点に追い付かれてしまった。若葉チームのサーブ。打つのは沖根守。


 「いっくよ~」


 ボールを上げてサーブを打った。ボールは亮平チームにいるまこの方へと吸い込まれて、


 「お、お兄ちゃん!私身体ちっちゃすぎる!」


 まこの頭上をゆっくり通過した。結果下に着いてしまい若葉チームに逆転されてしまった。


 「おい!まこの低身長を狙って打つなんて卑怯だぞ!」


 「仕方ないさ。ボクも狙って打ったわけじゃないし」「つ、次はゼッテー取ってやる!」


 「へっへ~負っけないよ(^-^)」


 守はニヤリと笑う。なるほど守は勝負になると燃えるらしい。守も熱いし、まこも熱くなっている。フィールドに陽炎が走りそうだ。


 守がサーブを打った。ボールは先程とほぼ同じ軌道でまこの頭上を通過しようとした。


 「さっきと同じ手喰らうかぁ!!!」


 スライディングを決めて地面にボールが着く前にまこはボールを上げた。ボールは和の方へ飛び、


 「亮くん頼んだ!」


 トスしてボールはネット際を高く飛んだ。亮平はそれを見計らいジャンプしてスパイクを打とうとして、


 「させるかぁー!!」


 目の前に大きな壁が隔てていることに気づいた。ブロックを試みる正志。スパイクを打てばブロックされて点が取られてしまう。


 だから亮平はジャンプした後、オーバーハンドパスを打った。ボールは高く上がり、ブロックを振り切り、三人の頭上をきれいな放物線を描きながら通過した。そして、線ギリギリのところに落下した。


 「あっぶねー。ギリギリ勝ったか」


 「ふふっ、さすがあいあいだね」


 「けど、負けないよ!」


 点数は2ー2の同点。サーブは野中和。


 「いっくよ~。えい!」


 可愛い声を出してサーブを打った。そのサーブは直線を描いて飛んで、


 「ふぎゃ!」


 サーブを見ていた亮平の顔面に命中した。


 「ごめん!亮くん、顔に当てちゃって」


 痛みに悶絶する亮平を前に全員が笑った。


 再び若葉チームに勝ち越しされ、サーブはエースの正志。そのサーブは、


 「うりゃーー!!!」


 「うわぁーー!!!!怖いよ!」


 すごい勢いで亮平めがけて飛んでくる。手加減なしである。亮平は一打一打必死にトスしようとするも、簡単にはいかなかった。



 若葉チームの猛攻の結果、試合は7ー25で若葉チームが圧勝した。



 その後海の家でかき氷を食べ、再び海で戯れ、気付けば日が海に近づいていた。


 「そろそろ帰る準備しようか」


 「そうだな!さすがに俺は疲れたわ」「俺も俺も」「私ももうくたくただよー」


 と、亮平と正志と守がそう言った。みんなの笑顔には少し疲れが顔を出していた。


 その後全員が更衣室で着替え、荷物をまとめると海水浴場をあとにした。若葉はどことなく寂しげな表情を見せたが亮平は気がつかなかった。



 電車に乗ること約一時間、駅から徒歩十分くらいして亮平とまこは自宅に着いた。若葉達とは乗り換えで別れた。


 「どうだったか?まこ。海は楽しかったろ?」


 「うん、めちゃ楽しかったよ!けど」


 「けど、なんだ?」


 「お兄ちゃんが変態なのは理解したから」


 「なんでだよ!俺はあのとき他の答え方があったっていうのか?」


 「少なくともあったと思う」


 「例えば?」


 「『まこ、水着似合ってるな』とか!」


 「つまり、誉めてほしかったんだな、うん。まこ、水着似合ってたな」


 「言うの遅すぎ!」


 ついに笑いが堪えきれなくなったまこは笑いだしてしまう。それにつられ亮平も笑い始めた。


 ひときしり笑った後、まこはまたあれが楽しかっただの、お兄ちゃんはやっぱり変態!だの、そんなことを話していた。



 そんなこんなで7月21日、『一晩寝たら海に誘われた件』は終わりを遂げる、






























 はずだった。

次回予告

若葉「どーも!第六章次回予告担当の向日葵若葉と!」

和 「野中和です!」

若葉「次回のお話はついに件シリーズfirst

season最大の事件が発覚!?会原亮平はそれを受け入れることが出来るのか!?次回も目が離せない!!次回!」

次回 「一晩寝たら海に誘われた件 #2」

和 「わ、私の出番は?」

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