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一晩寝たら奇想天外なことが起きていていつの間にか青春していた件  作者: モグポク
第五章 一晩寝たら存在を消されそうになった件
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一晩寝たら存在を消されそうになった件 その12

7月12日

 この日は学校がお休みだった。そのため話の進展などなかった。


7月13日

 この日は答えを出す予定でいたのだけれども当の飯山に電話を掛けても繋がることはなかった。学校も休みのため、聞くことすら出来なかった。まこ曰く「昨日?特になにもなかったし見舞いも来なかったよ」と言っていたのでまたまた進展なし、7月14日に突入することとなる。


            ※

7月14日

 「亮平さん、ちょっと大事なお話があります」


 と、唐突に夏々からひどく怒った様子でそういわれた。それに喜久井部長もいる。


 「昨日さっちゃんのお宅にお邪魔させていただいたんですけど、さっちゃんは『君とラブラブ』でゴキブリを殺したことなんて知りませんでしたよ?一体どういうことなん?」


 はい!?もうばれたの?流石としか考えられない。俺もここまで夏々刑事がそこまで調べたとは思っていなかったのだ。


 「それに意味のわからないことを言っとったわ。「私は事故で死んじゃう」って。どういうことか説明しなさい」


 飯山。これは詰みだ。だがまだ諦めるにはいささか早すぎる。よし、


 「い、痛い痛い痛い痛い痛い痛か~腹痛だ~」


 「そんなんで騙され…えっ?」


 キーン、コーン、カーン、コーン

 キーン、コーン、カーン、コーン


 にやり(  ̄▽ ̄)

 朝のホームルームが始まるため先生は、よし、来ている!


 「木藤?大丈夫か?」


 「すみません、保健室いってきます」


 と言い、廊下に出て保健室に向かった。その後保健室で早退を希望し早々に帰宅した。木藤母はとても心配そうに家で待っていた。つまり、逃げてきたのである。だが問題は何一つも解決はしていない。見舞いとか来られたらおしまいだ。ここは先手をうち見舞いが来そうな時間は寝た。一応この日はなんとか乗りきったがそろそろ限界だ。というわけで7月14日は幕を閉じた。


            ※


7月15日

 終業式まであと5日といったところだろう。普通はこれまでに解決しておけば良い。ただ1998年はあと3日で終業式なので、確実に明日には告白大作戦を決行しなければならない。俺はもう腹をくくっていた。選んだのはそう、


 「俺は今の世界が良い。今の俺が良い。だから…今を選ぶ」


 と、昼休みに飯山達に宣言した。


 「それで悔いはないんだな?」


 「まこが言ったんだよ。「今は楽しい?」って。俺は「そりゃ楽しいとも」って答えた。そしたらまこが「じゃあ、なんとしてでも助けなくちゃね」って言ったんだ。今の世界でも充分に木藤を助けられる」


 と、俺は自分の思いを伝えた。


 「じゃあ、その望みみんなで叶えよう」


 と、沖根は言った。


 「勿論だよ!」


 と、若葉が賛成し、


 「できることがあったら何でも言ってね」


 と、和は笑って言い、


 「この作戦、絶対に成功させるぞ!」


 と、飯山がまとめ、


 「「「「「オーー!!」」」」」


 考えがまとまった。


            ※


 作戦会議は家で行われることになったのだが、その前にある人が現れた。


 「どうも、初めまして、私は沖根守の母、沖根未知子(おきねみちこ)って言います。こっちは和尚一之助(おしょういちのすけ)っていう私のお仲間よ」


 沖根未知子と名乗る人が現れた。


 「お、お母さん!?な、何でここにいるの?」


 珍しく沖根が可愛い反応をとる。


 「何でって言われても。そっちこそ、今面白いことに巻き込まれているのでしょ?特に君」


 と、沖根さんは俺を指差した。


 「沖根?これはどういう?」


 「わからない」


 と、困った半分驚愕半分の顔をしている。


 「君、お名前なんていうの?」


 「俺は会原亮平(あいはらりょうへい)といいます」


 「なら亮平君、君は今入れ替わりにあっていて、存在を消されそうになっている。違う?」


 「「「「「!!!!!」」」」」


 全員が驚愕した。なにも知らない人から今起きている問題を知らされたのだ。これで驚かない人なんて絶対にいない。


 「何でって顔してるわね。ま、今から会原家で作戦会議するだろうから私たちも入れなさい。」


 「それは何故ですか?」


 と、飯山は聞く。


 「人は多い方が有利になるでしょう?」


 と、沖根さんは自信に溢れた顔でそう言った。


 「わかりました。ですが、邪魔するようであればすぐにでも席を外させていただくのでそのおつもりで」


 と、飯山は承諾した。


 と、いうわけで各々会原家に向かい作戦会議を開始した。


             ※

 

 俺は今、木藤咲の姿をしている。何故なら木藤咲と身体が入れ替わったからだ。身体不規則症候群によってここまできたのだが、もうこの日々にも終止符を打つときがきた。絶対に失敗は許されない。そんな事件を今日起こす。なので俺は若干、いや、すごく緊張している。


 「いってきまーす」


 と、この家に言うのも最後だろう。木藤母は笑顔で送り出してくれた。絶対に成功してみせる!


 15分ぐらい自転車に乗って通学し、学校に着いた。


 クラスに入ると、すぐに塩見夏々刑事が歩み寄ってくる。


 「もう逃げられませんよ、観念しなさい!」


 「逃げられませんよって、自分がここにやって来て逃げる来なんてねーよ」


 「怪しすぎる」


 と、夏々はなにかを推理してそうな顔をしている。そしてなにかひらめいたような顔をしてこう言った。


 「さ、さては、咲が告白をして、振ったわね!」


 は、はい?


 「つまりあれは、失恋よ。一体どこが気に入らないと言うのです?」


 気に入らないもなにも木藤咲と直接的に会うのは数年後の話であり、このときの俺はまだ高校生時代の木藤咲と話したことなんてねーよ。だがこれ以上疑われても面倒なのでそのままにしておく。


 「えっと、、、起こされようとしているときに失禁したとか、かな?」


 「は、はい?」


 「つまりはそういうことだ」


 「それぐらい許してやりなさいよ」


 その言葉と同時にチャイムがなる。夏々刑事は意味のわからないような顔で席に戻っていった。


            ※

 

 授業が終わり、放課後に突入した。だが俺にはやらなければならないことがある。この入れ替わりを終わらせる確実なる一手を。


 もう二度と、木藤をあんな悲しい目にはあわせない。そういう思いでグラウンドに直行する。


 「あれ?亮平君、お帰りですか?少しお話したいことが」


 と、喜久井部長は話し掛けてきたが、


 「すまん、急用だ」


 といい、もうダッシュを続ける。こんなところで油を売るわけにはいかない。


 グラウンドにつく頃には行きが少し上がっており疲れていたが、歩きながら息を整えある人を探す。サッカー部が使っているグラウンドはマネジャーや顧問は勿論のこと部員が多くいた。マネジャーが俺を見るなり「木藤さん、何してるんだろ?」と聞こえてきた、そのときだった。俺は目的の人を見つけた。10番のゼッケンを着ている。


 俺は大きく息を吸い大声で叫んだ。


 「会原亮!!聞こえるか-!!」


 即座に会原亮が反応した。それだけではなくグラウンドにいる人全員が俺に集中する。


 「私は!!木藤咲は会原亮のことが!!」


 「好きだー!!!!!」


 どよめきが起こる。当たり前だろう。また公開告白になっちゃったなー。


 「返事は明日!朝に私のところに来て!!待ってるから!!」


 と、言い俺はまた校舎の方へ、いや、正確には校舎外へ走った。もうこれで引き返せない、そんな状況だった。


 走る風が心地よい、俺はそう感じた。


            ※

7月17日

 物語はここで終わることはなかった。気がつくとここは道場のような場所にいた。俺はそこに横たわっていた。


 「亮平君、気がついたかい?」


 「はい…痛っ」


 頭がズキズキする。


 「君はもうもとの通り存在を確立している。透けていないことに気付いたかな?」


 確かに、感覚が消えかかっていたのが復活していた。


 「成功したんですか?」


 「おそらくね。亮平君も頑張ったよ、お疲れ様」


 そういわれてちょっと嬉しかった。だが、疑問があった。


 「沖根さん、何故俺はここにいるんですか?」


 「それはだね。木藤咲さんがショック状態から解放されたのさ」


 「えっ、それはどういう」


 「危なかったよ。気絶させてすぐに記憶を消さなかったら君はもうここにはいない」


 記憶を消した!?


 「記憶といっても正確には7月2日からのね。絶対に思い出させないようにしておいた。簡単に言うなら記憶したノートを断片的に切り取って捨てるような感じだよ」


 「でもまた入れ替わりが起きたら」


 「起きないよ。起こさせないようにしたんだろ?」


 それはつまり、


 「この後間違いなく会原亮君はイエスの返事をすることだろう。そうでなければ君はここにいない」


 「そっか、そうなんだ、よかった」


 木藤咲も俺もみんなも救われた。勿論木藤咲と会原亮は約二十年後に事故に遭って亡くなるのだが、最悪な結末を避けられただけでもまだよかった。


 「それより、安心しているところ悪いけど、今日から期末テストじゃなかったっけ?」


 「確かにそうですね。ギリギリの範囲で和に教えてもらいます」


 「あんまり人をあてにするとよくないぞ」


 「気をつけます。今日はありがとうございました」


 「いやいや、君が昨日私の若かりし時に電話をしてくれたお陰でここまでたどり着いたのだから。それに和尚がいなければここまでのことは出来なかったし」


 「和尚さんにも伝えておいてください」


 「伝えとく。ほら、家に帰って学校に行きな」


 「はい!」


 と言い道場を出る。2019年の風もやはり心地よい。


 余談だがテストの結果は赤点ギリギリで危なかった。


            ※

7月19日

 「亮くん、おめでとう」


 「和、今日は誕生日じゃないぜ」


 「入れ替わりが解決したからに決まってるでしょ」


 「にしても疲れたわ」


 今日は終業式。一学期の終わりだ。今年は色々あった。女体化したり、入れ替わったり、見えない女の子を見つけたり、コクられたり、色々あった。もう散々だ。だけど楽しかった。少なくとも今までの学期よりかは。


 「そういえば、沖根さんから請求書出されているんだった」


 「無料ではやってくれなかったんだ」


 「そうなんだよなー」


 請求書といっても、料金は夏休みにバイトして収入の3分の2が請求される。


 「沖根さん達がまさかそういう仕事を扱うなんてね」


 「でも良いじゃない。今を生きられているんだし」


 「それもそうだな」


 二人のカップルが歩いてゆく。心地よい夏の風と共に。


        *  *  *


 「ん、んん?」


 ここは、何処?私は、木藤咲。そしてここは私の部屋。まあ、当たり前か。


 ここ最近の出来事であるが、全く記憶にない。何をしたかさえも、最早思い出せずにいた。いきなり起きたらもう夏休みに到来しようとしている。こんな嬉しいことがあってたまるか!いきなり夏休み前日にワープって。ついに私はタイムスリップできるようになったのね。後日そんなわけないと知ることとなったが。


 「ん?」


 机の上にノートが広げてあった。はて、なんのノートだろうか。私はその中身を見た。そして何故か勝手に涙が出てきた。止めようとするけども止まらなかった。そして、止めようとするのをやめた。そして、私は何故か笑顔に微笑んだのだった。さて、学校にいく準備をしますか!


 『今日までありがとうございました。元気に生きてください』

 「ねーさ、ねーさ、海と山どっちが好き?」

 と、若葉から唐突にそんなことを聞かれた。

 「どっちって言われてもねぇ。まあ、俺は海が好きかな」

 小さいときに両親と一緒に海に行った記憶があるだけであまり行ったことはないのだが、一応俺はそう答えた。

 「オッケー!ありがとね亮平くん」

 「お、おう」

 と軽く返した。別に気にしてなんかいなかった。ただ、数日後とある厄介ごとに巻き込まれることになるのだが、そのときの俺は勿論、他の人だって知るよしもなかった。


後書き

亮平「ども!会原亮平と、」


咲「木藤咲でーす」


亮平「第五章一晩寝たら存在を消されそうになった件はお楽しみいただけたでしょうか?」


咲「私は、疲れたわ」


亮平「お疲れ様」


咲「君こそ、お疲れ」


亮平「この話で俺たちの入れ替わり話はおしまいです」


咲「早いようで長かった」


亮平「そうかな?」


咲「あと、無茶しすぎ、気を付けなさい」


亮平「人間無茶するぐらいがちょうど良いんだよ」


咲「次回予告入りまーす」


亮平「唐突すぎ」


次回予告

亮平「もう木藤と話すことはないのか」


咲「そうだな、てか、あの話は本当なの?」


亮平「あの話?」


咲「虫退治のはなし」


亮平「次回予告!」


次回 「一晩寝たら海に誘われた件 #1」


咲「亮平くん、後でお話ししましょう」


亮平「そ、それでは」


亮平&咲「「ではまた(@^^)/~~~」」


 (どうしようかな…)

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