一晩寝たら存在を消されそうになった件 その10
「ねえ、先に何かあったわけ?もちろん知ってるわよね?」
と、塩見夏々は追求してくる。それもそうだろう。昨日学校に来ずに何事もないなんて考えるだろうか?
「か、風邪じゃないのかなぁ」
「言い逃れようとしても無駄だからな。さっちゃんのお母さん曰く「あの子何だか学校に休みたいなんていうのよ、なにか心当たりある?夏々ちゃん」なんて言ってたんだけど?」
「い、いっちょんわからん」
「あくまでもしらを切る気ですね。でも、どんな手を尽くしても吐かせるものは吐かせますよ!」
怖い怖い怖い怖い怖い、夏々ちゃんってこんなキャラだったっけ?将来は警察に就いた方が良い気がする。
「確かに何かはあった。だけどそれを伝えるのは出来ない」
「私言いましたよね?どんな手を尽くしても吐かせるって。これももしかしたらさっちゃんのためになるかもしれないじゃないですか。というわけで自供してください」
ここは取調室かなにかだろうか?俺はそこにいて夏々刑事が取り調べをして事件の事を吐かせようとしている、そういうような感じだった。
「昨日木藤のプリン食って心が折れました」
「そんなんで騙されるかボケぇ!」
なんて返された。大きな声を出していったので朝のクラスの視線が俺たちに注がれる。
「と、とにかくなんとしてでも吐かせますからね。覚悟しとくように」
と、夏々は自分の席に戻っていった。何とか回避成功。もし俺の母親が木藤咲です、何て言ったらどうなるのだろうか。余計に事態が悪化するに決まっている。なんとしてでも今日をのりきらなければ。
※
「朝の続きです。覚悟はできてるのでしょうね?亮平さん?」
地獄は昼になっても続いた。しかも場所はクラスじゃなくて人の少ない屋上である。もっと都合の悪いことに夏々だけではなく喜久井部長もいた。となると相当口を固くしなければ乗り越えられるものじゃないと理解した。
「朝の続き?木藤のプリン食って心を折らした話か?」
「そんなんでさっちゃんが学校を休むと思います?」
目を光らせながら夏々刑事が問う。しかも、
「確かに咲君がそんなことを言うとは思えない」
なに喜久井部長は納得してんだよ。だがそれが普通の人の反応なので俺はなにも言えなかった。
「喜久井さんがそういうなら否定はできませんよねぇ?しかも私はさっちゃんの友達ですよ。言い逃れるなんて百年、いや億兆年早いんだよ!」
億兆年なんていう単位は聞いたことがなかったがつまりは木藤の事を何でも知っているのでなに冗談並べたって無駄であるという意味だろう。将棋でいう詰みみたいな感覚だ。だがまだ完全に詰みではない。なめるなよ。俺は木藤の息子だ。
「思い出しました。少し前に部屋にゴキブリが現れたんで近くにあった『君とラブラブ』でぺしゃんこにしました」
「で、それがさっちゃんにバレたと」
目を光らせながら夏々は問うてきた。
「はい、そうです」
「あんたねぇ、バカなの?」
「自覚はしているつもりです」
「何で弁償しなかったのよ」
「夜遅くに起きた事件だったからです」
「呆れた(-.-)」
と、本当に呆れたように夏々はいう。その間喜久井部長はずっと苦笑していた。
「亮平さん、ちゃんと新しく買ってさっちゃんに許しを乞うこと、いいわね?」
「はい、心配させて申し訳ありませんでした」
「では大丈夫そうですね、咲君は」
と、喜久井部長は言った。その言葉に俺はすぐに「大丈夫だよ」何て言うことなんて出来なかった。本当は今ショック状態にあるなんて、そんなこと絶対に言えるわけがなかった。という感じで昼休みのお弁当食べながらのトークは終わりを迎えた。予鈴がなり屋上にいる人々が立ち去り俺達だけになる。当然俺達もクラスに戻る。その前に、
「夏々、お前にいっておきたいことがある」
「何?」
「夏々、お前は将来警察官になることをおすすめする」
「何でよ?」
「俺の直感がそう言っている」
「なんだそれ?いっちょんわからん」
といって俺よりも早く夏々と喜久井部長はクラスに戻っていった。危機は確実に回避したといえた。
次回予告
ども、眠いモグポクです!前の投稿からどれぐらいたっているでしょうか?一週間ぐらいですね。忙しいんですのでどうかご容赦下さい。評価、ブクマ、感想、レビュー等々お待ちしております。ご読了ありがとうございました
次回 「一晩寝たら存在を消されそうになった件 その11」
それでは~ではまた(@^^)/~~~




