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一晩寝たら奇想天外なことが起きていていつの間にか青春していた件  作者: モグポク
第五章 一晩寝たら存在を消されそうになった件
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一晩寝たら存在を消されそうになった件 その7

7月9日

 俺の異変に気付いたのは向日葵若葉だった。その時俺はいつも通り自転車で登校していた。学校に着き、昇降口を通過し、階段を上って、自分のクラスに入って、俺の姿を見た若葉がすぐに目を凝らした。そして、


 「亮平くん、なんか透けてない?」


 と言われて俺はビックリした。普通人が透けているなんて聞いたことがあるのだろうか?咄嗟に自分の身体を見る。ただ、自分の身体が透けているようには到底見えなかった。


 「おい、変なことを言うなよ若葉。どう見ても透けてねーじゃねーか」


 と、そんなときに近くを通りすぎたクラスメートが、


 「会原君ちょっと透けてない?」


 「透明人間みたいな?」


 というのが聞こえてきたので、もう一度自分の身体を確認する。ただ、どう見ても透けているようには見えなかった。とりあえず俺は他の人にも透けているかどうか聞いてみることにした。まずは手始めに、


 「おい、岡島。俺透けてるか?」


 「おー、そう言われてみれば透けているような、そうでないようなー」


 「何で曖昧なんだよ。てか、言わなければ気づかなかったろお前」


 岡島の机を後にして、次に俺は飯山の机に移動した。そして、


 「おい、飯山。俺透けてるか?」


 と、同じ質問をした。結果として、


 「確かに透明感がないわけでもない。ただ、それは他の人がよく観察しなければ見つけられないものだろう。だから気にするな」


 というやる気のない答えが返ってきた。


 「じゃ、何故透明感があるんだ?」


 「それが分かれば苦労しないさ。少しはじっくり考えろ」


 「……………」


 飯山のいつも通りの性格にイラッとしながらその場を離れた。そして俺は、


 「おい、沖根。俺透けてるか?」


 「うん。若干ではあるものの透明というか存在自体が消えかかっている気がするかな。少なくともボクが見たところではね」


 ナイス!沖根。お前が一番的確でわかりやすく傷つかない言い方だ!


 「だけど、まだ生活に支障が出ている訳じゃないんだし、大丈夫じゃないかな」


 普通透明と気づいて普通に生活できる人がいるのだろうか?


 そして最後に俺は和の席に移動して、そして同じ質問をした。


 「おい、和。俺透けてるか?」


 「うん。バリバリ透けてるよ」


 ど直球きましたー!ビックリしたわ、そこまで言われると!しかし、俺はこの次の言葉でもっと困惑することとなった。


 「ねえ、昨日亮くん学校来なかったけど大丈夫?」


          ※


 前回までのあらすじを軽く話すと、俺会原亮平(あいはらりょうへい)は1998年福岡在住の木藤咲(きふじさき)と一日おきに身体が入れ替わる身体不規則症候群と呼ばれるものにかかっていた。両者双方に事情を説明し打開策を考えているまま一週間という月日が流れ今日に至るというわけだ。


 「俺は昨日学校に行ってない?どういうことだ?風邪でも引いたか?」


 「かもしれないけど亮くんのその姿を見る限りはそうじゃない気がする。まずはまこちゃんに聞いてみればわかるんじゃないかな?」


 会原(あいはら)まこ、身体不規則症候群にかかって実体を奪われた幼女である。しかし今はそれも解決し俺と一緒に暮らしている。そして確かにそうすれば分かるだろう。ということで休み時間なので即行電話だ。幸い電話はすぐに繋いだ。


 「何?お兄ちゃん?」


 「急に悪ぃけど聞きたいことがあるんだ、まこ。昨日の俺はどんな感じだった?」


 「えっとねー、朝急に叫びだした時ぐらいからしかわからないんだけど、駆けつけたときにはリビングにいなくて、トイレにいったら、吐いてた」


 はいーー!いったい全体何があったというのだ?


 「あとね仏壇の近くにお供え物が散乱してた」


 お供え物?どういうことだ?まてよ、木藤の本名は木藤咲、俺の母親の名前は!


 「判った!木藤咲の正体が!」

人は運命をネタバレされた途端二度と元の自分には戻れない、だからこそ未来を知るのはリスクがある


次回 「一晩寝たら存在を消されそうになった件 その8」

 

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