一晩寝たら身体が入れ替わっていた件 その1
5月10日
なぜかわからないけれど今日で亮平とお別れかもしれない。私はそう思った。今日亮平は嬉しそうな顔で家に帰ってきた。何故かは分からないけれど私まで嬉しくなった。いや、正確には知っていたはずなのに忘れている気がするだけなのだが、それはなぜだか分からない。というわけで今日はたくさん振る舞ってやるんだから。そして悔いの無きように楽しむんだから!
数時間後亮平は眠りについた。お別れかもしれないという予感が何故か私のなかでぐるぐる回る。明日は仕事の事情で出張に行く。だけど私は亮平の寝顔を見て、そして頭を撫でた。
「亮平、これからも元気で頑張るんだよ!」
と、私はそう呟いた。
そして私は次の日、何故か亮平が出掛けたあとの家を出発し、数時間後事故に巻き込まれて命を絶った。
* * *
俺はこの日心地よい夢を見た。夢を見るとき何故かよく分からない人と会うことが時たまあると思う。そのときの俺もそうだったのだが、それにしても久し振りに家族の暖かみを味わった気分だ。両親をなくしてはや二ヶ月、まこという新しい家族の一員も増えたのだが、両親というのはかけがえのないのだが、夢の中でそれを再び味わうと、泣きそうになった。
さて、俺はいつも通り起き、顔を洗いに一階に降りる。俺の家は一軒家であり、一人っ子なのに家が広い。何故なのかは知らないが。
降りたところにまこが腕を組ながらリビングに座っていた。
「おはよう!まこ。若干元気ないようにも見えるんだが」
「……あれ?いつものお兄ちゃんに戻ってる」
「いつものって、俺はいつもいつも通りだぞ」
「少なくとも昨日ほど爆弾マンじゃない」
「俺がいつ爆弾マンになった!」
ただの悪口にしか思えない!なんだ?まこは俺をからかうためにこんな早く起きたのか?
「言っとくけど、昨日ほど私がお兄ちゃんに苦労したのは初めてだよ。私はそのときお兄ちゃんに助けられたのって実は間違いだったんじゃないかって思ったよ」
「ん?昨日はいつも通り学校に行き、沖根に…ってあれ?今日って何月何日だ?」
確認してみよう、今日は…
7月3日
「あれ?今日は7月3日?2日じゃないのか?」
「なにいってるのお兄ちゃん?今日は7月3日でしょう」
「待って!昨日の記憶が一切ない!何故だ!」
「やっぱり、内に秘めた魔が爆発したんじゃ」
「爆弾マンっていう設定をぶりかえすな!」
内に秘めた魔って、まこは中二病なのだろうか?
「それより朝御飯とか大丈夫なの?」
時間は6時40分、急がなくちゃな。
「詳しくは帰ってからだ!」
そして俺はいつも通り家事と朝食を済ませ制服を着、学校に行く準備を済ませ、登校した。
そして、若葉も和も岡島も飯山も木村も沖根も、そして先生も俺は昨日学校に行っていないと言った。そしてその後いつも通りに過ごし家に帰った。
※
俺は自宅に戻った後、制服からラフな服装に着替えると疲れてそうなまこに昨日の事を尋ねた。
「さあ、話してくれ、昨日俺の身に何があったのか」
まこは少し眉間に皺を寄せながら語り始めた。
「いいよ。まず、昨日あったことなんだけど、」
* * *
7月2日
私はこの日7時ぐらいに起きた。そして朝御飯を食べるためにリビングに出てみてもそこには誰もいなかった。
「あー、お兄ちゃん今日は早登校なのか?」
と勝手に思った私はダイニングテーブルや台所で用意されているであろう朝食を探した。が、朝食がないどころか料理すらされた形跡がなかった。
その時上の方から大きな音がなった。まるで大きな物が落ちたかのような音だった。
まさかと思いお兄ちゃんの部屋を見た。そこにいたのは満足そうに寝ているお兄ちゃんの姿だった。私はお兄ちゃんを起こそうと往復ビンタしながら「起きろー!!!」といい続けたのだがいっこうに起きる様子はなかった。一瞬気絶しているのかと思ったのだが寝息をたてていたので私はお兄ちゃんを起こすのを諦めた。
(もしかしたら今日は開校記念日かなんかで休みなのかな)
そう結論付けた私は台所にあったシリアルと牛乳で朝食を済ませた。
朝食を済ませた後私はニュースを見た。勿論ニュースには興味もなく、天気予報の後の占いを見ていた。星座占いで順位が表示されるのだが、2月2日生まれの私は、
「今日の水瓶座のあなた!今日はなにかと疲れてしまうでしょう!ラッキーアイテムは消しゴムです!」
あまり良くない運勢を突きつけられた。そして占いは終わりニュースに入る前にCMへと移っていった。そしてまた興味もないのにCMを見てしまう。テレビの番宣から始まって不動産屋、スーパーの宣伝に続き、ラーメンと続き、急にラーメンが食べたくなった。最後にサイダー檸檬のCMで締め括る。そしてニュースは芸能人のスキャンダルでもちきりだった。
「私は暇で疲れそう…」
朝のニュースが終了し次のニュース番組に移ったところでテレビを切って今日何しようかと考えようとしたその時だった。
「おっはよー!誰だかわからないけど!」
「え?え?え?」
私はいきなり亮平に抱き締められ一瞬困惑し、そして、
「苦しい!苦しい!苦しい!離れろ馬鹿!」
腹を蹴飛ばし離れようとしたものの効かなかった。そして、
「お兄ちゃん、学校行かないの?」
「お兄ちゃん?私妹いないんだけど。てかお兄ちゃん?何意味のわからないこと言ってるのよ」
「お、お兄ちゃん?大丈夫?頭打った?記憶障害?」
とりあえずお兄ちゃんを何とかしなければと思い連絡しようとしたが、
「電話に出ない…みんな休みで寝てるのかな?」
やっぱり休みなのだろうか?
「やっぱ休みじゃん!なら今日はゆっくり過ごせるね」
休みなら休みで事前に知らせてほしかったのだが。
この後亮平とトランプしたりテレビゲームしたりしたのだが、昼御飯の時間を迎えた。
「お兄ちゃん。朝は作らなかったんだから昼はよろしくね」
「えー、面倒臭いし料理作れないけど、まあ、わかったよ」
料理作れないと言う意味不ワードは無視したのだが、これが命取りになるだなんて思いもしなかった。
数十分テレビを見て時間を潰した。そして、
「はい、一応作ってみたけど、これでいいかな?」
「お供え忘れんなよ。てか、忘れるわけないか」
そんなやり取りがあってダイニングテーブルの椅子に座り昼御飯を食べようとして、
「っ!ナニコレ…」
そこには半ば炭と化そうとしているピーマンと肉と何かよく分からないものが炒めてあった。
「さぁーて、じゃんじゃんお食べなっせ。まだまだあるから」
「そ、そう。じゃあ頂きます」
そして私はその何かよくわからないものを食べた。そして、
「っ!ナニコレ…うっぷ…吐きそう…」
苦味と辛味と酸味と甘味のバランスを見事にぶち壊していて、
「ごめん、お兄ちゃん。ちょっと私…席外すね」
「えっ、何その反応気になるんだけど!」
とにかく不味かった。一瞬で嘔吐させるほど。
今年一番の苦痛を味あわされ三十分ほどトイレでぐったりして、そして、
「ごめん…まこちゃんだっけ?私も…盛大に吐きそう…」
と言う声がノック二回と共に聞こえてきたためトイレを即行譲る。そして、
「ありがとう…そして、ごめんっ!」
そしてすぐさま吐き始めたのでトイレの扉を閉め私は急いでダイニングテーブルと仏壇にあるキラーフードを回収し一目散に捨てた。
「今日のお兄ちゃん、なんかおかしい!」
その後一時間くらいしてからやつれたお兄ちゃんが出てきてソファーに寝転がるや否やすぐに寝始めたのでやっと災難が過ぎ去り平和が訪れた。
「とりあえず、午後どうしよう」
午後はずっとテレビ観賞をした。どろどろの昼ドラと刑事ドラマを見た。そして、刑事ドラマを見終わるときにお兄ちゃんは起きて、
「あ、起きたんだ。おはよ、大丈夫?夜ご飯は出前とるから」
「何から何まですみません( ´_ゝ`)ゞ」
と、足を運んだ先は、
「あれ、そっち書斎だけど」
お兄ちゃんはそのまま書斎に入っていって、そして、
「『君とラブラブ』!?しかもこんなに!?ここは桃源郷か!?」
などと奇声を発して、そのまま日が落ちて、その後もずっと漫画を読んでいた。
そして私は一人で家事をやりこなし風呂を入れ、入浴して、
「もう無理、私疲れた…」
と自室に戻るや否やすぐに寝てしまった。ある意味占いは当たっていたんだと、そう思いながら。お兄ちゃんは、もういいや。勝手に覚めた夕食とぬるい風呂に入ってるだろ。そう信じながら。
* * *
「なるほど、そんなことあったのか。まさか二重人格か?」
「とにかくもうそんな闇発動しないでよね、お兄ちゃん。二重人格とか洒落にならないから」
「俺は厨二病か!」
という具合に今日の一日は終わりを告げるのであった。
次回予告
どうも、第四章一晩寝たら身体が入れ替わっていた件その1の次回予告担当の沖根守です。少し長い次回予告にお付き合いください。そういえばこの物語も皆様に読んでいただいたお陰で1000PVを越えたようじゃありませんか。この物語はまだごく一部でしかないということを今に噛み締めている所存です。ひとまずは感謝申し上げますほどこれからもボクたちの物語を暖かな目で見てくれると幸いです。そろそろ次回予告も締めましょう。
次回 「一晩寝たら身体が入れ替わっていた件 その2」
ご読了ありがとうございました。




