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一晩寝たら奇想天外なことが起きていていつの間にか青春していた件  作者: モグポク
第三章 一晩寝たら未確認少女に出会ってしまった件
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一晩寝たら未確認少女に出会ってしまった件 その5

6月28日

 遂にこの日がやって来た。この日は俺だけではなくもう一人の幼女も一生記憶に残るような日を作る。いや、作らなくてはならない。そう今日起きるこの話は己と己の葛藤の物語である!



 この日は職場体験の最終日だった。勿論俺と若葉はいつも通りに子供と接し、遊び、そして楽しんだ。だが、勿論今日は職場体験最終日であり、今日でお別れである。


 「さて、みなさーん。残念なお話ではありますが、今日で若葉先生と亮平先生とお別れです」


 「なんでー」「まだ遊びたいよー」「お別れしたくないよー」


 と、数々の別れを惜しむ声に俺と若葉は涙を流すのを必死で我慢することになった。だから、


 「俺もお前らと別れたくねー。だからまたいつか会ったらまた遊ぼーぜ」


 と、本音を漏らしてしまったのはむしろ当たり前だったのかもしれない。いつか。勿論そんなの来ないかもしれない。でも来たときには笑顔で遊ぼう。そう決めた。そして、


 「そうね。私も今度また会ったら、その時は楽しく話しましょうね」


 向こうに座っている幼女数人がそれぞれ笑顔で頷いた。俺の知らないところで何かあったようだ。


 「さて、皆さん。若葉さんと亮平くんは今日で最後だから大きな声でさよならしましょう!せーの!」


 「「「「さようなら!」」」」


 「「さようなら!元気でね~」」


 という具合に俺は子供との切ない別れを済ました。じんわりとした気持ちを心の押し入れにしまいつつ、この経験を胸に今後の生活を過ごしていこう。晴々しい笑顔を浮かべながら、俺はそう思った。



         *  *  *



 普段ならここで終わりだ。最後の職務を手伝い、来週の頭には学校に報告しなければならない。ただ、俺には女の子を救うという、職場体験の番外編かもしれないが、それでも俺なりにはかなりの重要イベントだった。


 先生に断ってホールの鍵を借りホールに入ると、そこには誰もいなかった。当たり前である。しかしそう、鶴巻都以外は。


 俺はホールの角に昨日飯山にもらったお札を貼る。なぜこんな代物を手に入れたかというのは秘密にされた。そして、ホール中央にチョークで意味のわからない紋章みたいなのを描く。そうこれで、準備完了だ。あとは、あいつを待つだけ。


 「どうしましたか?急に呼び出して?」


 「すみません。無理を承知に来ていただき誠にありがとうございます。園長先生にには今からそっちに見てほしいものがあるのです」


 「見てほしいもの?」


 「見ればわかりますよ、鶴巻、そこの紋章の中央に立ってくれ」


 「鶴巻、ですって?」


 「何をいっているの?」とは言われたが笑顔と無言を返し、鶴巻が紋章の中央に立ったことを確認してからこう言った。


 「では今から、『身体不規則症候群肉体連結解除病』の治療を始めます。まず鶴巻、お前の望みを願ってみろ」


 鶴巻は手を合わせ祈った。そして俺はこう続けた。


 「では始めるぞ!鶴巻都に肉体を取り戻せ!そして主人のところに戻るが良い!Revive the body!」


 すると、いきなり紋章周りが閃光のようにひかりだした。すると、さっきまで無表情だった鶴巻の様子がおかしくなった。

 いきなり呻き出したと思ったら急に園長のほうを見て、遂に殴りかかろうとしたときだった。鶴巻は紋章の周りのバリアみたいなのに当たって尻餅をついたのだがそれでもなお殴ろうと紋章から出ようとする。その顔は悲しみと怒りで埋め尽くされ、目は朱色に染まり犬歯は剥き出しである。


 「おい、なぜ園長を殴ろうとしているんだ!それがお前の望んでいることなのか?いや、違うはずだ。ただお前は、お前は、自由になりたいだけじゃないのか?だから園長を攻撃しようとするのはやめろ!」


 「私は!私は!!ずっと!悲しかったの!!もう、耐えられない!!!」


 と泣き叫びながらそう言った。そして俺は園長の方に向き直り、話始める。


 「園長先生、貴女は本当は見えていたのでしょう。()()()()()()。だから鶴巻は貴女に敵意を向けている。それは何故か、それは他の人がそれを見えてはいないからだ。しかも見えるようになっていたのはお泊まり保育の二日目、つまり、鶴巻が失踪した日からですよね。だが貴女は鶴巻を他の人が見えていないからという理由だけで見捨てていたんだ。あなたのやったことはけして許されることではないんだ」


 「でもそんなことはないでしょ。なぜそう言いきれる?」


 「なぜといわれましても、この光見えますか?」


 「ええ、くっきり光ってるわ。閃光のように」


 「この光は普通の人には見えないんです」


 園長が目を大きく見開いた。それもそうだろう。これは鶴巻が見える人にしか見えない現象なのだから。


 「鶴巻の記憶が残っているのはおそらく結界を貼ったときぐらいからでしょう。そのときにはもう結界のお陰で鶴巻をセーブしていたのだから。それから十年彼女はずっと苦しめられてきたわけです。あなたもそれに耐えきれますか?その償い、今果たすべきではないのでしょうか?」


 「………確かに貴方の言うように私には彼女が見えています。しかし貴方の考えとはかなり事実が異なっていますね。私がこの子を無視し続けたと思います?」


 「……………」


 「私が当時鶴巻さんが見えなくなって私しか見えなかったとき、私は鶴巻さんを探している先生みんなにこの事を説明しました。しかしこの事を信じた先生は誰一人としていません。貴方にはその誰にも見えられなくなった鶴巻さんと自分しか見えない私の気持ちなんてわかりますか?いえ、絶対にわからないでしょう」


 俺は無言を貫きさせられる。そんな圧が園長から俺に向けられる。しかし、


 「ただし、私にはそんな鶴巻さんの気持ちさえ理解できませんでした。鶴巻さんのために費やすのはやはり限界というものがありました。そして、私は鶴巻さんに干渉することができなくなりました。その時からでしょうか。鶴巻さんが暴走し始めたのは」


 暴走。確かウサギの急逝(きゅうせい)、遊具の破壊といった怪奇現象が全て鶴巻の暴走ということになっている。


 「その時にいきなり一人の男が現れたのです。そして、これより先は前にも話した通りです。鶴巻さんの暴走は静まりこの地は平和と秩序を取り戻したのです。そう、鶴巻さん以外は。全く、何故私にだけ見えたのでしょうね」


 と、静かに語り終える園長の顔は清々しいものであった。そして、


 「鶴巻さん。私は残念ながらあなたを救えませんでした。本当に申し訳ないです。けど」


 そして、園長は俺の方に向き直って、


 「貴方にはそれを可能にできそうですね。鶴巻さんを宜しく頼みます。鶴巻さんを、もう、一人にしないで」


 そう言われて、俺は覚悟を決めた。そして、鶴巻の方を向いて叫んだ。


 「おい、鶴巻!俺も何かできることがあればなんでもする。手伝えることがあれば手伝う!だからもう一人じゃないんだ!!!!」


 「う、うん。私は!私は!それが!」


 鶴巻は一瞬だけ笑顔を見せ、そして、


 「欲しかったの!」


 と元気な声を言い放った。直後まばゆい閃光が放たれ、俺は反射で目をつぶる。目を開けたときには鶴巻は紋章の上に横になって倒れていた。でも一つ確かなのは肉体を取り戻している。つまり、実体を甦らせたのだった。


            ※


7月1日

 「へぇ、面白い話が聞けたよ。職場体験なのにそんなバトルがあっただなんて」


 「バトルっていうか、闘ったのは鶴巻、じゃなくて『まこ』だけだと思うんだけどな」


 「でも大活躍したんだってな。でも残念ながら肉体的にはまだ身体不規則症候群にかかったままなんだよね」


 そう、鶴巻は残念ながら今もなお肉体は身体不規則症候群にかかり続けている。その証拠は今の幼女姿がばっちり示している。


 「でも最終的にこれでよかったのでしょうか?確かに幼女のままになってしまったまこちゃんには慣れた姿かもしれませんが。これでもいつ消滅するかは分からないじゃないですか」


 そう、いつ消滅するかというのは、やはり肉体そのものが身体不規則症候群にかかっているからだ。身体不規則症候群はそれほどに身体中の生きる源みたいなのを消費してしまうらしい。ちなみにこれは飯山が言っていたことで何故知ったのかは飯山以外誰一人として知らない。そして、


 「それは俺も同じだろ」


 と、一度だけ身体不規則症候群にかかった俺が突っ込む。が、


 「あいあいの場合は別だよ。女体化はもうすでに終わっている。過去進行形なだけであり、まこちゃんは現在進行形じゃないですか。そう思うと身体不規則症候群って命がけなんだよね」


 と、ここでまさかの新キャラ、沖根守(おきねまもる)はそう淡々と言った。


 余談だが、鶴巻都はあのあと家に住むことになった。そして名前を鶴巻都改め『会原まこ』になった。理由曰く、


 「私は一度死んだような存在。そして生まれ変わった私はもう、鶴巻都じゃない。だから、新しい名前、つけて」


 という俺にはよくわからない理由で新たな存在『会原まこ』として生活するようになり、今に至る。


 「ひとまずはハッピーエンドじゃないかな。おめでとう!ボクも嬉しいよ」


 「ま、これからは少しは平和に過ごせるかもな」


 と、その後守と雑談をしながら休み時間を過ごした。そして、職業体験後の最初の昼休みも平凡で、そして平和に過ごした。久し振りに和と話したり、いつものメンバーで駄弁ったりして、久しぶりにゆっくり過ごした。こんな時間が長く続けばいいのに、そう思いながら。


         *  *  *


 しかし、そんな俺の些細な願いも叶わなかった。今俺の目の前に見えるのは、そう。部屋である。普段ならいつも通りに聞こえるそれは、いつも俺が使っている部屋とはかけ離れた、全く知らない部屋だった。そして、その部屋に大きな声が轟いた。


 「俺はどっかの誰かと身体が入れ替わってる、だと!?」

後書き

若葉「ども、第三章後書き担当の向日葵若葉と!」


和「野中和です!」


若葉「とうとうここまで来ましたね~なごみん」


なごみん「そうなんだけど、私の出番はどこにあったの?」


若葉「いやいや、この話は亮平くんとまこちゃんのお話。だから私たちの出番は少ないのよ」


なごみん「だとしても、私の出番はゼロ!ホワイ?私は亮くんの恋人よ!」


若葉「なごみん、あなたキャラ崩壊してるわよ、いろんな意味で」


なごみん「いいよね、若葉ちゃんは!一緒に職場体験できて!」


若葉「焼きもちを焼いているとこ悪いけどそろそろ締めようか」


なごみん「そうですね!読者の皆様方、和の出番ゼロの第三章をお読みいただきありがとうございました!次章からは私の出番が出ることを願っています!」


若葉「そう怒らない怒らない。さて、次回予告いきますか」


次回予告

若葉「引き続き第三章次回予告担当の向日葵若葉と!」


和「第四章は出番がほしい野中和です!」


若葉「まだ根に持ってるの?」


和「ん?私何か言ってた?」


若葉「まさかの怒りすぎて自我を忘れてただと!」


和「なに怒ってるの?怒りすぎは体によくないよ」


若葉「もう考えないようにしよ…」


次回 「一晩寝たら身体が入れ替わっていた件 その1」


若葉&和「「それではまた次回、お話のなかでお会いしましょう。ではまた(@^^)/~~~」」

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