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一晩寝たら奇想天外なことが起きていていつの間にか青春していた件  作者: モグポク
第三章 一晩寝たら未確認少女に出会ってしまった件
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一晩寝たら未確認少女に出会ってしまった件 その3

 「と、いう訳なんだ。なにか良い案はないか?」


 「なにも考えずに僕を頼ってたら、お前は最低中の最低だな」


 というわけでその夜、今日あったことを飯山に話した。


 飯山一(いいやまはじめ)、優等生でプライドの高い友達である。女体化したときには俺にアドバイスをしてくれたことは記憶に新しい。


 「いや、案を考えようにも、救いようがあるのかなって」


 「確かに存在がない、実体がないものには、助けようにも助けられないな」


 「で、これはいったいなんなんだ?」


 「なんなんだといわれてもすぐにわかるか。幽霊の類いじゃないのか?」


 「幽霊の類い?」


 「だから、幽霊だよ。お化け、怪異、妖怪。この場合は地縛霊というべきか」


 「地縛霊ってあれか?そこでなくなった人がずっとそこにとりついているってやつか?」


 「そうなんだけど。いくつか引っ掛かるところがあるんだよな」


 「引っ掛かる?」


 「地縛霊なら基本死者が死を受け入れられないパターンが多い。対してその女の子は自分の家に帰ろうとした、が出来なかった。それはなぜか。それが一番引っ掛かるんだ。それに結界というのはなんだろう。普通幼稚園に結界をおいておく理由なんてあるものなのだろうか?」


 「仮に結界を張っていたとしても、鶴巻は結界外に追い出されるだけだろう」


 「そこなんだよ。となれば第三の考えになるな」


 「第三?」


 「地縛霊でもなければ結界が張られてるのに追い出されない。つまり結界そのものがない。つまり、身体不規則症候群だ」

  

 身体不規則症候群。つい最近まで俺が女体化していた原因そのものである。まさか再びその病気を聞くことになろうとは。

 

 「実体がない、つまり、魂のみ存在する、ってことさ」


 「つまりは身体不規則症候群にかかったことにより肉体が消去され魂だけが残っているってことか?だとしたらあの姿は?」


 「魂に形が変えられないなんていうことはないだろ。つまりは人の形をした魂、としか考えられない」


 つまりは鶴巻都は身体不規則症候群によって実体を亡くした、ということらしい。


 「じゃあ肉体を取り戻せれば治るのか?」


 「そこに関しては情報が少なすぎる。何せ十年じゃ肉も腐るさ」


 「じゃあ明日聞いてくればいいってことだな」


 「つまりはそういうことだ」


6月25日

 その日俺は若葉に断って早く幼稚園に向かった。この事を知っているのは俺と飯山しかいないからだ。もし他の人にでも知られたら大事になる。それだけは避けたかった。


 「おはよー!鶴巻ー!」


 「……………」


 「なんだよ、挨拶ぐらいしとけよ」


 「うるさい」


 なんだよ、せっかく元気出そうかとしたのにしらけたじゃないか。


 「そんなことよりも聞きたいことがあるんだ鶴巻はさ、この十年間どう過ごしていたんだ?」


 すると鶴巻は数ミリ顔を動かせて、


 「ずっと、ここにいる。なにもしないで、気づかれないまま」


 「!!」


 なんと、この幼女は約十年間という長い間ここに座っている(推測)ということになる。そんなことがあって良いのだろうか?


 「そうか、それは辛かったな。けれど十年前にいったい何があったんだ?」


 辛かった。その言葉じゃ小さすぎることくらい俺でもわかる。昨日も思ったのだが、俺でなくとも十年同じところで日々座ってるという生活は耐え難い。それでも俺はその事実を飲み込み、咀嚼した上で、十年前の事件を聞かなければならない。そして、鶴巻はゆっくりと口を開いた。


 「知らない。けど、その日、お泊まり保育だったの」


 鶴巻が言うには、お泊まり保育という名の宿泊保育があったのらしい。その日は色々と遊び、学び、ご飯を食べ、風呂に入り、寝る、という感じだったのだが、次の日起きたときには布団が消えていて、誰もいないホールだったのだが、そこに幼児たちが入ってきた。そこで声をかけようかと思ったら、この様という感じだったらしい。ただ妙に思うのは、


 「布団がなくなってたというのはどういうことなんだ?」


 「そのままだよ。起きたときには床で寝てた。まったく、こういうことさえなければ、私も立派なJKになってたのに」


 「そこだけ略すなよ、JKって」


 まあ、あっているのだが。


 「ありがとう、色々話してくれて、お礼に俺が知っていることも伝えよう」


 そして俺は、鶴巻はおそらく実体亡くしの身体不規則症候群にかかったであろうことを伝えると、


 「なんで?なんで私なの?なんで(泣)」


 と、いつのまにか涙声になっていた。当たり前だろう。十年という空虚な時間を理不尽に押し付けられて、そりゃ涙の一粒や二つ流れても当然だろう。


 「いつ助けるかはわからないけれど、助けて見せるさ」


 とだけ言い、鶴巻を残して俺はホールを出た。

次回予告

 「ども、第三章次回予告担当の向日葵若葉と!」

 「野中和です!」

 「もうすぐ平成が終わるね」

 「もうこの世界では終わっているのだけれども」

 「残りの平成を大事にしようぜ!」

 「う、うん」

次回 「一晩寝たら未確認少女に出会ってしまった件 その4」

 「引き続き二人のコンビ名募集中~」

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