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現状

PCからの初投稿。

少し文面が変わるかもしれません。

目蓋を通しても分かる明るさで目を覚ました。

サッと辺りの様子を伺がう。

日はもうで出ているようで、朝日特有の日差しが木々の隙間からスリットのように差し込んでいる。

自転車の周りはが白く見えるような強い日差しが差し込んでいて、自転車が光を反射してキラキラと輝いているのが見えた。

暗闇の中とは違い、ちゃんと見える範囲に何も居ないことがわかる。

じわじわと体が温かくなるような安心感に満たされる。


ずっと座り込んでいた所為か、おしりと背中が痛い。

固まった体を解そうと立ち上がった瞬間、

ぐにゃりと視界がゆがんだ。

思わずしゃがみこむ。心臓が早鐘を打って、

視界が明滅したかのようにチカチカする。

体のなかで何かがうごめく様な感覚が落ち着いてくると、

口の中がカラカラに乾いているのに気がついた。

昨日から何も飲んでいない。

物凄く喉が渇いている。


ゆっくりと周囲を見回してみる。

しゃがんだ状態の視界からは、木々と草が目に入るだけで、

水場なんて見えない。

サバイバルの時に水を確保するための知識を必至に思い出してみるが、

「山々の谷間に見える部分には川がある」とか、

「地面に穴を掘ってビニールを被せる」くらいしか出てこない。


周囲は木々に囲まれていて、山の姿は確認できない。

今の体調で、闇雲に水場を探して間に合うだろうか?

急にできたタイムリミットに、不安がこみ上げてくる。

それを振り払うために、穴を掘るのは確実なだけましだと、

使えるものを探して鞄に手を突っ込んだ。

すると、固いものがコツンと手に当たった。

取り出してみると、見覚えの無い水筒だった。

ぽちゃんと中身がゆれる。大きさ的に500mlは入っていそうだ。

トンボのときに振り回した所為か、所々凹んだり、塗装が剥げてしまっている。

幸い蓋は無事だったようで、漏れたりはしていない。


どちらにせよ助かった!

蓋を開けて一気に飲む。

もう残ってはいないが、氷が入っていたのだろう。

まだ冷たさを残したお茶が体に染み渡る。


半分ほど飲み干した所で一息つくと、

飲みなれたお茶の香りが口の中に広がった。

それと同時に、

「水筒とカロリーメイト、鞄にいれといたから」

と、お母さんの声が聞こえた気がした。


そうだ。前日の深夜まで詰め込みのテスト勉強をしていて、

朝は遅刻ギリギリに起きたんだ。


「朝ごはんは?」

「いらない!」

「食べなきゃテスト集中できないでしょ?」

「時間無い!」

「夜遅くまで起きてるから…」

「しょうがないじゃん!」

「普段から勉強しとけばいいでしょ?」

「うるさいなぁ!急いでるの!」

「水筒とカロリーメイト、鞄にいれといたから」

「ええ!?こないだ水筒、漏れたじゃん!」

「大丈夫。蓋が頑丈な新しいやつだから」

「ああ、もう!」

「いってきますは?」

「いってきます!!」


そのままテストに必至になっていて忘れていた。

...まだ昨日の事なのに、凄く遠い昔のような気がして胸が熱くなる。

こぼれそうな涙をこらえる。

こんな所で死んでたまるか!絶対に帰るんだ!


決意を新たにしたとこで、水分が吸収されたのか空腹感が出てきた。


鞄の中からカロリーメイトを探し出す。

大き目の箱の二袋入りのやつが出てきた。

箱はボロボロで、中身を取り出してみると袋の中で粉々になっている感触がする。

今の状況だと小分けにして食べたいけど、難しそうだ。

一袋空けて、ざっと口に流し込む。

口の中の水分を奪われるけど、じっくりと唾液で湿らせてゆっくりと噛む。

ココアの風味が口の中に広がる。甘い。

咽ないように気をつけながら飲み込む。

最後にお茶を一口含んで、口の中に残った分もしっかりと胃に入れる。


...まだ飲み足りないし食べたり無いけど、

ここで一気に消費しちゃうのはいけいない気がする。

ぐっと堪える。


残りを鞄に戻したところで、

かなり体調が良くなってきた。

すっと立ち上がってみる。体が軽い。

飲まず食わずがかなり負担になっていたようだ。


まずは飲める水を探さないとな。

ぐるっと周囲を見渡すと、自転車の近くにブレザーが落ちてるの見つけた。

そういえば、昨日脱いだままだった。

近づいて拾い上げる。

ふと、光を反射する自転車が目に入る。


「これって、もしかして遠くからでも見える...?」


水を探すにしても、拠点となる場所があったほうがいいかもしれない。

自転車の反射で位置を確認できるなら、簡単に戻ってこれそうだ。


「拠点かあ...」


もう一度周囲を見てみると、一本の木が目に入った。

ジュラ紀感のある木々の中で、それだけは猿滑のようにつるっとしている。

自分の胸くらいの高さのところから、人が一人入れそうな大きな洞がぽっかりと出来ている。

なかなかの大木だ。


「虫とか怖い生き物とか居ないといいなぁ...」


そろそろと近づいてみる。

木の周りを見てみるが、何かが洞に出入りしているような跡は無さそうだ。

中をのぞいてみると、外と同じようなつるりとした空間が広がっていて、腐ってもいないし、虫も居なさそうだ。


「よっと」


中に入ってみる。体育座りの体勢なら余裕を持てる位の空間だ。

中からだと、自転車が良く見える。


...まわり囲まれただけで、安心感が半端ない!

ちょっとお尻痛いけど、拠点決定!


折角拠点をゲットした事だし、

水を探しに行く前に鞄の中身を確認する。


水筒とカロリーメイト以外は、

くしゃくしゃになったり、所々破れてるルーズリーフに教科書、筆箱くらいだった。

火起こし位には使えるかもしれない。

後は...持ってきたブレザーの内ポケットから、スマホを取り出す。

もしかしたらと淡い期待を胸に、ロックを解除する。


...やっぱり圏外だ。


今は5月31日の8時だそうだ。どこまであっているんだろう?

時間は近いような気がするけど。

サバイバルに役立つアプリが無いかと探してみたが、

役立ちそうなものは入れていなかった。

写真やメールを見ようかとも思ったが、悲しくなりそうだったので手を止めた。

使ってなかったお陰か、電池は60%残っている。

カメラや動画が後で役に立つかも知れないと、電源を切って鞄に入れる。


後はブレザーとワイシャツを脱いで、ネクタイも外して鞄に入れる。

装備はTシャツとスラックス、スニーカーだ。


正直、教科書とかは置いていった方が良いと思ったが、

元の世界のものを自分から離すのがなんとなく嫌だった。

全て入った鞄のファスナーをしっかり閉めて、肩がけにする。


「さあ、水探しに出発だ!」


洞から出ようとした瞬間、日が陰った。




そして、それは空から降ってきた。


<恐怖耐性>を得て、少し鈍感になってます。

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