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ウナギが食いたきゃ金を出せ!

作者: 大橋和代


「うな重特上、お待ち!」

「おう」


 秋津島(あきつしま)グループ会長、秋津島豊国(とよくに)は、久々に老舗の鰻屋『まつ風』を訪ねていた。


 曾祖父の代から付き合いのある店だが、そろそろ店を畳まざるを得ないという話を聞き、仕事を放りだしてロンドンから急遽戻ったのである。


 六代目の店主、松田幸太郎(こうたろう)が膳を置いた手を、ばんとカウンターについた。


 その手が、小さく震えてる。


「……旦那、こいつぁ俺が焼いた、最後の一匹だ」

「……おう」


 豊国は、日頃からウナギに五月蠅いわけではない。


 だが、食えなくなると聞けば、色々と考えることもある。


 国産のウナギなど、スーパーの店頭から消えて久しい。……そもそも、天然物のニホンウナギはほぼスーパーに卸されないのだが、中国産や台湾産も壊滅状態、果てはヨーロッパ産でさえ、もう手に入れるのが難しい時代だ。


 そしてついに、稚魚であるシラスウナギを含むニホンウナギの漁獲禁止――水産資源保護法に設けられた漁獲限度について漁獲量ゼロ、保護水面は日本の国土にある内水面と領海の全て――が国会で承認された。公海上については、言うまでもない。


 この『まつ風』は、国産の天然ウナギにこだわり続けた。

 だからこそ、潔く廃業を選んでいた。


「覚悟して食えなんて言わねえ。いつものように、美味そうに食ってくれりゃあそれでいい」

「……いただきます!」


 その通りだった。

 今はまず、膳に向き合わねばならない。


 重の蓋を開け、まずは香りを『味わう』。


 料理は五味と世に言うが、舌で感じる甘味、塩味、酸味、苦味、うま味のことだけではない。


 鼻で香りを、目で盛りつけを、口で食味を、喉で喉ごしを、それぞれに楽しむのだ。


 残りの一つは思い返して心で味わう後味で、これがなければ料理は完成しなかった。


 ……いや、祖父譲りの講釈を垂れている場合ではない。


 豊国は若狭塗の箸を信楽の箸置きから取り上げ、もう一度、膳を眺めた。


 重には無論、まごうかたなき本物の蒲焼き。俗に『串打ち三年、裂き八年、焼き一生』と言われるが、年季の入った名人幸太郎の焼きは、見事の一言に尽きた。


 添えられた肝吸いには、店主の飾らない性格を表すかのように、焼き麩と三つ葉だけが浮いている。


 小鉢には定番の奈良漬け、これは譲れない。


 うむと頷き、豊国は重に箸をつけ、たっぷりとタレの染みた飯を頬ばった。


 鼻をくすぐる芳醇な香りとともに、これぞ日本、と言い切りたくなる甘辛い味が、口いっぱいに広がる。


 たれは開業以来、六代継ぎ足し続け、関東大震災も東京大空襲もくぐり抜けて味を守ったというまつ風の看板そのものでもあった。


 その重みは、豊国には想像するしかなかったが、味だけでなくその思いも代々受け継がれているのだろうという深みを感じさせる。


「……」


 無言で、もう一口。

 今度は飯粒と一緒に、蒲焼きも半切れ、箸で切り取る。


「……おう」


 素晴らしいと、思った。

 幾度も食べたが、毎回そう思わせるだけの食味。


 これは、逆らえるものではない。


 一度箸を置いた豊国は、カウンターの奥に手を伸ばした


 天然の小瓢箪を使った山椒入れの蓋をはずし、とん、とごく軽く、山椒をかける。

 たちまちのうちに、その香りが鼻をくすぐった。


 最初の二口は、山椒を使わない。これは祖父の受け売りだったが、そのまま豊国にも受け継がれていた。


 この山椒も、京都三年坂にある老舗からの取り寄せだと、講釈を聞かされた覚えがある。


 三口目は、ぴりりと辛い一口で舌と心を引き締め、新たな感動を引き出すのだ。






 20XX年、ニホンウナギの不漁は、より深刻化していた。


『ウナギが食いたきゃ金を出せ!』


 そう言われるようになって、早十数年。


 日本人の食欲だけでなく、それを見込んだ外国人ブローカーの暗躍や、地球環境の変化も影響していた。


 長く続いたその状況の中で、ワシントン条約の絶滅危惧種に指定され、シラスウナギの漁獲量回復は幾度も試みられたが、尽く失敗に終わっている。


 何故誰も、歯止めを掛けようとしなかったのか……悔やんでももう遅く、現在では、ニホンウナギなど水族館ぐらいでしか見ることもない。


 完全養殖の研究は進んでいるが、牛歩に等しかった。


 研究者達の努力は本物で、地道な成果は徐々に積み上げられていたが、基礎研究には時間が掛かるものだ。一朝一夕に技術が確立されるわけではない。


 今では川漁師も川に入らず、養殖業者も他種の魚介養殖に転換を余儀なくされ、鰻屋も激減した。


 看板こそ残している店は多いが、代用ウナギの代表格である国内産養殖ナマズを出すことが殆どだ。あるいはいっそと、完全に腹を括った店主が料理道に打ち込み、精進料理のうなぎもどき専門――こちらはこちらで、恐ろしいほど高い技術を要求される――に鞍替えした店さえある。


 ヨーロッパウナギを出せる店は、それだけで名店扱いとなっていた。


 闇ウナギなどという言葉が、テレビで報道されたこともある。


 ここしばらくは、まともに国産の鰻を出せる店は国内で数軒、それも事前に予約を入れた上で、大枚をはたかねばならなかった。


 それももう、終わる。


『ウナギが食いたきゃ金を出せ!』


 そう言えた頃は序の口、酷い話だが、当時はまだ幸せな状況だったのではないかと、皆がため息をつく時代が訪れようとしていた。






「……ふう」


 タレの染み込んだ飯粒を、最後の一粒までたいらげた豊国がその余韻に浸っていると、幸太郎が天紙を敷いたざるを持って現れた。


「相変わらず、いい食いっぷりだった。……一杯やらんか?」

「いただこう」


 ざるの上の骨せんべいに気付いた豊国は、相好を崩した。


 屋号の入った二合徳利(とっくり)が、でんと置かれる。孝太郎ものそりと椅子を引いた。


「おう」

「……うむ」


 注がれるまま、冷や酒をきゅっとあおる。


「……」

「……ん」


 二度三度、無言のままで互いの猪口に冷や酒を注いでいたが、やがて、孝太郎が口を開いた。


「なあ旦那」

「おう?」

「俺達鰻屋は、何処で間違えたんだろうなあ……」

「鰻丼も鰻重も、作って終わりじゃねえ。客が食ってごちそうさまを言うところまでが、料理ってやつだろう。……間違えたとすれば、俺達全員が間違えたんじゃないか?」

「……そうか」




 惜しい。


 この店も、孝太郎の腕も、ここで流れる心地よい時間も、全てが惜しい。




 豊国は、もう一度、孝太郎を見やった。


 孝太郎の背には、諦めという名の重石が、ずっしりと乗っているかのようだった。


「ごちそうさま。美味かったよ。……お愛想」

「へい、毎度」


 カード払いや電子決済などという野暮は、しない。


 受け取った領収証には御食事代金四十五万円と記されていたが、豊国はそう高いとは思わなかった。


 孝太郎はこの逆風下、豊国の予約の為だけに店を開け、苦労して国産のウナギを手に入れ、創業以来の伝統と磨いた技術を惜しげもなく投じ、この至福の時間を演出して見せたのだ。


 その道筋と労力を思い描けば、安いとさえ言える。


 同時に……それだけの価値ある店をこのまま喪うのは、許せなかった。


 だが、何が出来るというのか。


 秋津島グループ会長、秋津島豊国として出来ることは、本当にないのか。


 暖簾をくぐりつつ、豊国は大きなため息をついた。






 翌日。


 幸太郎が店を片付けて――廃業の準備をしていると、豊国が再び現れた。


「おう、旦那。忘れもんはなかったと思ったが……」

「幸太郎!」

「へい?」

「この店、俺が買い取ってもいいか?」

「……あ!?」


 ぽかんとする幸太郎に、大きく頷く。


 豊国は、諦めきれなかったのだ。


「ウナギがないからな、店は開けなくていい。だが、タレだけでも、十年……いや、五年、維持して貰いたい。……頼む!」

「旦那……」


 幸太郎は、泣いた。


 つられた豊国も、泣いた。




 ▽▽▽




 豊国はまつ風で最後の鰻重を堪能した数日後、秋津島グループの総本山であるアキツシマタワービルの最上階、その本社会長室にて、孫の豊昭(とよあき)に呆れられていた。


「で、店ごと買っちゃったの? 爺ちゃんも無茶するなあ……」

「うむ……」

「まあ、気持ちは分かるけどさ」


 豊昭はまだ大学生で正式な社員ではないが、時折祖父を心配して、アキツシマタワービルに現れる。


「なあ、爺ちゃん」

「おう?」

「ウナギ、美味しかった?」

「そりゃあ言うまでもないだろうに」

「俺も食いに連れてって欲しかったなあ」


 お前にはまだ早い、と言い掛けて、豊国は口をつぐんだ。


 孫にはもう、ウナギを食べる機会など訪れない可能性さえあるのだ。


 それに……ウナギを食べていない孫の前では、『後味』がよろしくないと気付く。


 人目を気にして味が変わるなど、それまでの豊国では思いもよらない心境の変化であった。


 そうか、これが老いかと、一人納得する。


 だが、食いたいものは食いたいわけだ。譲れない。


「なあ、豊昭」

「なあに、爺ちゃん?」

「ウナギ、どうにかして増やせんかな?」


 一人で食っても、後味がよろしくないなら……一緒に食う人数を増やせばいいと、豊国は考えた。


 孫の豊昭のことだけではない。


 十人、百人、千人、万人……。


 日本国民一億二千万人が『普通に』ウナギを食えるよう、ウナギの流通を増やせばいいのだ。


 飽食の時代は過ぎ去っていたが、昼飯にチェーン店の牛丼か、あるいは少々奮発してイタリアンのランチセットを選ぶかぐらいの選択肢は、大学生にだってある。


 その一つに鰻が加わるのは……ずいぶん久方ぶりかもしれないが、あって悪いと言うこともない。


 誰もが気兼ねをせず、ウナギを食う。

 そんな時代が来ればいいのだ。


「そうだなあ。どこかの大学が……あれ、水産試験場だったかな? 完全養殖の研究してるよね。まだ実験段階だけど、一応は成功はしたって、ニュースで見たような覚えがあるよ」

「そうだ。だが、ウナギが高騰してる今ならともかく、商業ベースにはとても乗せられないとも聞いたな」

「うん」


 二人で顔を見合わせ、ため息をつく。


「……素人考えで良かったら、アイデア出してみようか?」

「期待してるぞ、豊昭」

「そこは『期待しないで待ってるぞ』と言って欲しいなあ」

「孫に期待して何が悪いものか」


 ふんぞり返る祖父に、孫はやれやれと肩をすくめ、三日ほどしたらまた来るよと、そのまま会長室を出ていった。




 ▽▽▽




 三日経って、豊昭は再び祖父の元を訪れた。


「爺ちゃん」

「おう、豊昭。……どうだ?」

「どうもこうも……一応、考えたけどさ。爺ちゃんは?」

「とりあえず、水研(すいけん)に連絡を取った。資金は出すことに決めたが、基礎研究段階を抜け出すのが先決だからな、時間も相当掛かるだろうという話だ」


 水研――水産資源総合研究開発機構は、国立の研究開発法人である。


 ウナギの完全養殖の研究はもちろん水研でも行われていたが、大学、企業などでも横の連携を取りつつ各々が苦心していると聞く。

 だが、日本の水産資源を支える技術について、ここなくしては語れない。


「で、豊昭の方は?」

「うん、まあ、ほんとに素人考えだけど、友達とかにも聞いて回ったんだ」

「ふむ」

「で、一応出来るかもしれない。……んじゃないかな、ってとこまでは筋道立てたよ」


 豊国の手に渡されたのは、わずか数枚の、いかにも大学生が宿題に書かされましたといったレポートだったが……。


「……ふむ」

「まあ、そのあたりが限度かなってさ」

「いや、考え方は悪くないぞ。既存の技術と知識の組み合わせというものは、そう馬鹿にしたものでもないのだ」


 もちろん、そう口にする豊国も、ウナギの生態や養殖技術については素人である。


 技術的な問題や実際の可否はともかく、発想を気に入った豊国はそのレポートを預かり、専門家の手に委ねることを決めた。






 だが。


「……『ウナギが食いたきゃ金を出せ!』、か」


 このレポートを基本にウナギを増やそうとした場合、相当な金額を費やすことになるだろう。


 店を一軒買い上げるのとは、文字通り桁が違った。




 ▽▽▽




「会長、豊昭様の例のレポートの件で、水研から連絡が来ております」

「おう、どうだった?」

「技術的には実現の可能性大とのことです」


 秘書の報告に、そうか、出来るかと、豊国は大きくため息をついて瞑目した。


「試算はこちらでも出していたな。見せてくれ」

「はい。研究費のみ、空欄となっています」


 概要が印字された紙を、上から順に眺める。


 ここに書かれている金額は、いわゆる『ハコ』の試算だった。


 研究所であれば建物や敷地のみ、研究に直接必要な機材は含まれていない。


 この時点でも大概大きな金額だが……。


「よし、専任のプロジェクトチームを立ち上げる。長男(社長)次男(専務)を呼んでくれ」

「畏まりました」


 その日の午後一杯を使った丁々発止のやり取りの末、プロジェクトチームは秋津島グループ全体の社会貢献事業として正式に認められ――否、認めさせ、数日内に準備会が発足されることとなった。


 予算規模は最低でも数十億円以上、ちょっとした(つまず)きでもあれば百億円の大台も見込まれるが、グループの広告塔として考えた場合、費用対効果もそれほど悪くないだろう。


 何せ昨今では、ウナギの味はともかく、その価格たるや悪評と言いきってもいいのだ。

 それをばっさりと斬るプロジェクトが、評判の悪くなろうはずがない。


 声を掛けた水研は、言うまでもなく二つ返事で飛びついてきた。




 ▽▽▽




 以来、半年。


 特殊水産資源回復プロジェクト、社内通称『プロジェクトU』は順調に計画を進めていた。


「爺ちゃん、アレ、ほんとにやっちゃったの!?」

「おう! お前のレポートを元にした、完全養殖技術がモノになるまでの壮大なツナギだ!」


 発案者である豊昭は卒論の追い込みに忙しく、しばらく祖父の元を訪れていなかった。


 また豊国の方でも、孫を驚かそうと思って緩い箝口令を命じていたから、ヘルメットをかぶらされてぽかんとする豊昭を見て、にやりと笑うに留めている。


 二人の目の前には、五万トン級のタンカーを改造した水産資源研究船『あきつしま丸Ⅳ』が、その真っ白な船体を輝かせていた。


「……いや、まあ、いいけどさ」

「おう、いいだろう!」


 あきつしま丸Ⅳは元々、秋津島グループのエネルギー事業部門である秋津島石油化学工業のタンカーで、グループ内の工場や石油精製施設を結んで運航されていた。

 数隻保有する同級の姉妹船はすべて『あきつしま』の名を冠されており、彼女はその四番目である。


 船齢は十五年ほどと働き盛りの中堅どころだが、豊国がプロジェクトUを立ち上げた際、たまたま定期整備のドック入りが近かったことで、彼女は運命を大きく変えた。


 すぐさま改装計画が立てられ、平行して搭載する研究機材の開発も始まった。


 幸い、五万トンのタンカーと言えば、タンカーとしては小型でも船舶としては大型の範疇に入る巨体を誇る。大量の研究機材や人員を飲み込めるだけでなく、外洋航行に必要な設備も十分に整っていた。


「まだ改装中だが、中もすごいぞ」

「うん、見たい!」


 外観で大きく目立つ改造箇所は、船体前方に増設されたヘリポートぐらいだが、祖父によれば中身はほぼ別物になっているという。


 祖父の先導でブリッジへ向かいつつ、その大きさに圧倒される豊昭だった。


「そうだ、お前が言い出しっぺだからな。配属はここにした」

「うへえ……」

「会長、ご無沙汰しています」

「おう、ウナギ先生!」


 豊国にウナギ先生と呼ばれた白衣の男は、水研側の責任者だ。『宇奈木(うなぎ)食茶郎(くうちゃろう)』のペンネームで、雑誌のコラムや挿し絵を書くことでも知られている。


「こいつを先生の下につけるから、こき使ってやってくれ」

「……は?」

「よろしくお願いします、秋津島豊昭です」


 豊昭は、大学卒業後のグループ入社も既に決まっていた。


 しかし、その配属先が太平洋のど真ん中を航行する研究船になるとは、流石に考えもしなかったのである。


 別に祖父を怒らせたり、誰かに迷惑……いや、あのレポートのせいでグループに負担はあったかもしれないが、悪事を働いたような覚えは一切ない。


 ただ、修行と称して、海外や離島の営業所に派遣される予想は……多少ならず、あった。


 ……人間、諦めが肝心だ。


「おう? ……おう、分かった。じゃあな、豊昭。先生、後は頼みます」


 秘書から何か耳打ちされた豊国は、そのままさっさと帰ってしまった。


 ぽつんと二人、ブリッジへと通じる船内通路に残される。


「……ウナギ先生、改めてよろしくお願いします」

「……あ、ああ、よろしくだ」


 だがその後、豊昭はこの強引な配属に感謝することになった。




 ▽▽▽




 更に半年。


「ウナギ先生、いよいよですね」

「ああ、豊昭くん。出航できる日が、こんなに早く来るとは……」


 あきつしま丸Ⅳはほとんど専用埠頭になってしまった川崎の社用港の一角に、その巨体を浮かべていた。


 当初予定よりも内装工事に遅れが生じたのは、計画が二転三転し、研究者受け入れ施設の拡充や設備の移転に時間が掛かってしまった故である。


 水研はウナギの研究をしていたグループを二分、一方をあきつしま丸Ⅳに送り込んでいた。


「先生、豊昭くん」

「船長、お疲れさまです」


 袖に金線の刺繍された礼服で、船長がやってくる。


 晴れ舞台も間近なせいか、にこやかな表情であった。


「お忙しいでしょう、船長?」

「出港直前は、部下の報告を待つのが仕事で、逆に暇なんですよ。突発事態に備えた待機とも言い変えられますがね」

「おっと、そろそろ式典の時間が」

「はっはっは、お二人を呼びに来たのを忘れておりましたな」


 そのままヘリポートへと案内され、パイプイスに座る。

 後列の端の方だが、挨拶をするのは水研の理事長やスポンサーの豊国、あきつしまⅣを預かる船長などであり、ウナギ博士や豊昭に出番はない。


「ウナギ先生、豊昭くん、ここ空いてます?」

「どうぞ、高砂さん」

「慶子でいいっていったでしょ、豊昭くん」

「高砂くん、水研から移した水槽の方はどうだった?」

「今のところ問題ありません。鋭意稼働中です」


 高砂慶子はウナギ博士のチームに配属されているが、水研の研究者ではない。

 国立大学の院生で専攻はプランクトン、プロジェクトUの研究費付き同乗研究者募集に応募してその審査を突破、あきつしま丸Ⅳへの乗船権を獲得した才媛である。


『お待たせいたしました。ただいまより、秋津島グループプロジェクトU所属、水産資源研究船あきつしま丸Ⅳの出航式典を開催いたします』


 大きな拍手が、海風に負けてなるものかと響きわたる。


 来賓まで含めてここには四百名ほどが参列していた。


 会長豊国が壇上に立つ。


『この計画は、完全養殖が実現するまでの命綱です。ウナギのことを、宜しく、お願い申し上げる』


 豊国のスピーチは、極めて短いことで有名だった。


「……本当に短いのね、会長さんのスピーチ」

「ええ、まあ……」


 単なる人見知りの口下手と豊昭は知っていたが、シンプルであれば即ち分かり易く、周囲からの評判は悪くなかった。


 そもそも、難解な言葉で過剰に修飾された長文スピーチなど、嫌われるに決まっているのだ。


 式典を終えた二時間後、あきつしま丸Ⅳは大勢の招待客と彼らの万歳に見送られ、日本を発った。




 ▽▽▽




 第一の目的地であるマリアナ諸島付近は、東京から約二千四百キロ、あきつしま丸Ⅳならば経済速力で一週間ほどの距離になる。


「海中探査ドローン、全機投下準備良し」

「時刻合わせ良し」

「三、二、一……投下開始」

「投下開始」


 しかし航海の途中には、頻繁な海洋調査や研究機材のテストが行われた為、実際には三週間を使っていた。


 これも予定の内だが、ウナギ研究以外にも便乗組の研究者達が大勢居て、海底調査だ水質調査だと躍起になっている。


 船を動かす運航要員、研究者や研究設備の維持管理を行う技術者、そこに船内生活をサポートするチームが加わって総員で二百名余、ちょっとした支社と変わりない規模だ。


「レーダー、周囲に船影なし」

「魚探、異常反応なし」

「目視確認、前方よし」

「左舷、よし」

「右舷、よし」


 船長以下、あきつしま丸Ⅳの運航要員は、自社タンカー時代の船員がそのまま引き継いでいた。


 改造によって様々な設備を飲み込んでいたが、往時の精製油満載状態にはおよそ及ばず、操船に手間取る様子はない。


『当直交替の時間になりました。昼番の皆さん、お疲れさまでした。夜番の皆さん、頑張って下さい』


「おう、飯にしようぜ」

「今日は何でしっけ?」

「金曜の夜はカレーだろ」

「すんません、まだ慣れてなくて」


 ブリーフィングに使える大食堂も研究区画の上層に新設され、狭い自室よりはよほどくつろげると人気の休憩スポットになっていた。


 窓こそ無いが、代わりに大きなスクリーンが用意され、映画や衛星放送だけでなく、外部の景色も大迫力で見ることが出来る。


 あきつしまⅣは改装段階から船内生活環境にも気を配っていたが、閉鎖空間に於けるそれが乗船者、特に船上生活に慣れていない研究者達にとってどれだけ重要かは、言うまでもなかった。






 それらはともかく、水産資源研究船であるあきつしまⅣの最大の特徴は、タンクそのものだった。


 タンカーの船内の大半は、仕切りのあるタンクで占められているのが相場だ。


 一部はタンク外殻を取り外して研究施設を飲み込み、あるいは居住区とされた。運航設備から完全に切り離された補助機関や注排水ポンプも、ここに含まれる。


 長期間航行が求められるあきつしま丸Ⅳ自身の燃料油槽として使われる区画も、新たに複数用意されていた。


 それ以外のタンクは油類を運んでいた痕跡を消し、プロジェクトの根幹である『特殊養殖水槽』として改装されている。


 プロジェクトUの目的は、ウナギの完全養殖実現までのつなぎとして、天然ウナギ資源を回復させることだ。完全養殖の研究も後押ししているが、そちらは第二目的である。


 そこで船内に設置された水槽を使い、人工孵化させたレプトケファルス――ウナギの幼魚であるシラスウナギの更に前段階にある幼生体――を成長させようと言うのだが、その重要なポイントは、餌の採取と海水にあった。


 実験室ベースでの人工孵化に於いて最大の問題は、新鮮な海水の供給と、レプトケファルス時の餌であるとされてきた。


 海水はポンプとパイプラインで解決できるものの、餌についてはアブラツノザメの卵という大量に確保するのが難しい存在が最適とされ、代替品は未だ研究調査の段階にある。


 自然界ではマリンスノーと呼ばれる海中微生物の死骸を餌とする研究報告もあるが、こちらも採取技術や数量の確保という点で問題があった。


 しかも、レプトケファルスがシラスウナギへと変態するのに必要な期間は百五十から五百日、これでは人工飼育のコストが莫大な金額になってしまうのも無理はない。


 豊昭の書いたレポートにもこの問題が指摘されており、そのような理由であれば『現地』、つまりマリアナ沖の産卵ポイントから生け簀を流して育てればいいと、結論づけている。


 それがタンカー丸ごと一隻という規模にまで育ったのは、豊国の経済人的嗅覚が主な原因だ。


 成功を前提として……生け簀であれば数億円規模の資金で済むだろうが、リターンも少なくなってしまう。


 ニホンウナギ一匹の孕卵数(ようらんすう)は五百万から一千万程度、だが全数孵化(ふか)など望めるはずがなく、自然界で卵からシラスウナギまで到達できる割合は数万分の一から数十万分の一のオーダーと推測されている。


 実験水槽での完全管理飼育下では、捕食者を完全に排除できるのでシラスウナギ到達率はかなり高くなるが、今度は餌と水質の問題が足を引く。


 どちらにせよ、生け簀計画案では、数億円の資金投入に対して見込まれるシラスウナギは僅か数万匹であり、投資の割に得られる量が少なすぎた。


 だが、予算規模を膨らませればリターンが大きいだけでなく、余禄もかなり期待できる。


 即ち、学術的研究の進歩と、完全養殖技術確立への寄与だ。


 完全養殖はコスト面で行き詰まりを見せているが、現在の高騰したウナギ相場に寄りかかるような生産体制では、早晩の破綻が目に見えていた。


 少なくとも二回はあきつしまⅣを研究航海に出す計画となっているが、プロジェクトUの目的は、天然ウナギ資源の回復である。


 完全養殖技術の確立と、ニホンウナギの漁獲禁止撤回までのつなぎ。


 あきつしまⅣはその為の船なのだ。


 また、公海上での商業養殖との批判も回避せねばならず、船内で育てられたシラスウナギは一部の研究用を除き、全て放流されることになっていた。




 ▽▽▽




「スクリュー停止」

「よーそろー」


 日本を出航して約一ヶ月、一度サイパン島に寄港して乗組員のリフレッシュと補給を行ったあきつしまⅣは、いよいよマリアナ沖スルガ海山(かいざん)付近――ニホンウナギの産卵場所として知られる海域に到着した。


「バラストタンク、排水準備よし」

「第一予備水槽、注水開始せよ」

「主ポンプ始動」


 この航海でスクリューを止めたのは何度目か、回数が多すぎて船長も覚えていない。航行記録を見なければ、誰一人答えられないだろう。


「海流、出ました。北北西微西、二・八ノット」


 商業航海では燃費や納期を気にするが、研究航海は時刻と海の状態が重要だ。付き合わされる船員らも、そういうものだと既に悟っていた。


「第四特殊養殖水槽までの注水、完了です」


 船内の水槽は、一つあたり一千トンの海水を飲み込む。

 予備まで含めてこれが六つ、数時間かけて合計六千トンの海水を船内に引き入れたわけだが、タンカー時代には数万トンの各種精製油を運んでいたあきつしまⅣは、びくともしなかった。


 無論、油と水では特性が異なるし、改装によって船体の重心も変わってしまった為、サイパンまでの航海中、試験や訓練が幾度も行われたことは言うまでもない。


「よろしい。主機関停止準備、補助動力切り替え用意」

「補助動力、始動。……定格まで二分十五秒。……定格到達。機器、正常。電圧、電流、正常」

「主機関を停止せよ」

「主機関、停止します」


 数万トンを誇る大型船舶が、航行中に主機関まで停止するのは異例だが、これも計画に盛り込まれている。


 その為に、船内の特殊養殖水槽に繋がるポンプや生活区画で消費される全ての電力を賄える補助動力――中型船用のディーゼルエンジンが、燃料油槽や補助電源となるソーラーパネルとともに新設されていた。


 あきつしまⅣはこれから数ヶ月、巨大な鋼鉄製の生け簀として『漂流』するのだ。


 主機関の再始動は当面、補給船との邂逅時、台風や荒天からの退避、急病人の発生など、船や乗組員の安全に関わる場合以外、行われない予定だった。






 同時刻、研究区画の方でも本番開始とあって、全員が担当部署に張り付いていた。


 便乗研究者達も、自分の専門について協力が義務づけられている。


「水質検査、結果出ました!」

「おう、こっちに回してくれ」


 現場である水槽や、忙しく立ち働く研究者達だけでなく、PC同士でも情報が行き交い忙しい。


 四つの特殊養殖水槽は毎分二トンの新鮮な海水を取り込みつつ、水質の安定を待つ。


 これは約八時間で水槽内の水が入れ替わる計算だが、全量が綺麗に入れ替わることはない。

 実験室では一日毎に海水を入れ換えていたので、マージンも考慮してこの数字となっていた。


 検査は三時間毎で、問題がなければ四十八時間後、明後日の昼に人工受精卵、あるいは孵化後のレプトケファルスが実験水槽から移される。


「深海班、そっちはどうだ?」

「現在、一号網の深度四百、順調に沈降中です」

「二号網から四号網、準備完了」


 深海班は、プロジェクトUの技術担当チームと水研が共同開発した目の細かい網と貯留槽を組み合わせた専用捕獲器を用いて、レプトケファルスの主食であるマリンスノーの採取を行うのが仕事だ。


 おおよその採取量はそれまでの調査や試用試験で予想が立てられていたが、同じ海域でも天候や深海潮流で変化する。

 その量次第ではレプトケファルスのシラスウナギ到達率が大きく変わるが、こればかりは実際に採取作業を行ってみなければ答えが出せなかった。


 深海班には深海生物学者が多く、彼らはマリンスノーの分析だけでなく、それ以外の余禄――一緒に引き上げられる深海生物も楽しみにしていた。


『みなさん、見てくれてますか? 本日より、いよいよ実験開始です! 画面の変化は乏しいし、まだ水槽にウナギはいないけど、私はものすごく、ものすごーく、感動しています!』


 皆が忙しく動き回る中、ウナギ博士はウナギ知識啓蒙とプロジェクトUの活動周知の為、プロジェクトU広報室と連携したインターネットTVで生放送を行っていた。


 これはこれで準備も本番も忙しいのだが、時に他の海洋学者も出演させられ、わずか数週間で人気コンテンツとして評判を獲得するに至る。


 よく考えれば、当たり前だった。


 海洋生物学を中心に、日本の海洋学のトップを走る人材が、あきつしまⅣには石を投げれば当たるほど集まっている。


 自論を熱く語る『生の声』は、視聴者の心にしっかりと届いた。






 漂流三日目、特殊養殖水槽内の海水に問題がないと判定され、人工受精卵とレプトケファルスの放流が行われた。


「さあ、大きくなれよ!」


 四つある特殊養殖水槽は主ポンプと直接繋がっておらず、一旦、同型の予備水槽へと貯留された海水を取り込む。


 この予備水槽も二つあるが、万が一海水に異常があった場合の予防措置だ。新規の海水取り入れを中止し、特殊養殖水槽への海水流入量を下げて航行すれば、当該海域から離脱することもできる。


 また人工受精卵も親ウナギの採取場所が変えてあり、その内の一つは、水研の人工孵化第四世代が選ばれていた。


「マリンスノー、投入します」

「おう、いってくれ!」


 マリンスノーの採集は、今のところ予定目標の九十五パーセントという数字を達成している。


 レプトケファルスの食いつきや成長を見る為、水研から持ち込まれた実験水槽でも同様に飼育が行われていた。


 成功するなら員数外のシラスウナギを大量に確保できるが、これはこれで完全養殖の研究にも寄与するので、研究者達も力を入れている。


「あとは日々の作業をしっかりこなし、見守るのが仕事だ。みんな、頼むぞ!」

「はい、先生!」


 記念すべきその日の夕食には、先日サイパンで補給した秋津島食品工業の新製品が、満を持して出された。


 その名も『うな()のぼり』、新たに開発されたウナギの蒲焼き風魚介練り製品である。味付けの監修はプロジェクトUの客員アドバイザー、まつ風の松田幸太郎が行っていた。




 ▽▽▽




 漂流三十一日目。


 あきつしまⅣは、臨時洋上補給船『あきつしまⅡ』と、邂逅を果たした。


 あきつしまⅡはあきつしまⅣの姉にあたる姉妹艦で、一時的に整備格納庫付きのヘリポートや補給設備が増設されている。


 ひと月に一度、漂流するあきつしまⅣに物資や燃料を届けるのが任務だった。


「こちらあきつしまⅡ補給隊、ヘリ発艦準備よし。送れ」

「あきつしまⅣ派遣隊、受け入れ準備完了」


 なんと洋上補給作業に当たるのは、第一海上補給隊に所属する現役の海上自衛隊員である。


 ヘリも社用機ながら、海上自衛隊でも採用されている掃海・輸送ヘリコプターMCH-101の民間型アグスタウェストランドEH-101、操縦士、整備クルーともに、こちらも海上自衛隊から派遣されていた。


「やはり出力特性はこっちの方が素直だな」

「慣熟訓練の命令を受けたときは、機種転換訓練なみに苦労するかと思ったんですがね」

「おいおい、余裕だな。これはインターネットで生放送されてるんだぞ」

「それぐらいで緊張してちゃ、ヘリパイはやってられませんよ。……突然のダウンバーストの方が、よっぽど恐いです」


 MCH-101とEH-101では搭載されているエンジンが違うので、プロジェクトUと海自も十分な訓練期間を取っていたのだが、そこは選抜されたパイロットや整備士達、見事期待に応えていた。






 海上自衛隊の全面的協力。


 このような離れ業を可能にしたのは、プロジェクトUが一企業の社会貢献事業でありながら日本の食文化の今後に大きく影響する内容を持ち、世論が動いたからに他ならない。


 豊国は、『遠洋マグロ漁船でも漁場にタンカーを呼び、パイプを伸ばして燃料補給をしつつ、ボートで食料のやり取りをするのだ。協力していただければ大変嬉しいが、無理でも自社でなんとかする。ヘリポートの一つでも備えておけば、物資だけでなく人も動かせて、安心安全の度合いも増すだろう』と、それほど強い期待は当初より持っていなかった。


 しかし、世論は政府へのパッシングへと発展してしまう。


 曰く、水産資源は日本国の重要な要素であり、食料としてだけでなく文化的側面も持つというのに、そのような重大事を一企業一個人の裁量に委ねて、何のための政府か。


 ……実体は、後追いでプロジェクトに噛んだり金を出したりしたくはないが、利益や名誉を秋津島グループに独占されるのは避けたいライバル企業の抵抗(いやがらせ)であった。


 豊国は、そんなせこいことを考えているから、うちに出し抜かれるんだぞと、一笑に付している。


 もっとも、うなぎの値段が下がって再び自分たちでも食べられるようになればいいと、純粋な気持ちで乗った者も多かった。本気で賛同してくれるならこれほど嬉しいことはないと、こちらの意見には豊国も素直に感謝している。


 また、国会内でもこの問題は取りざたされたが、野党連合はパッシング案件として用いたものの、内容が水産資源の回復であった為に、与党側は正攻法で受けて立った。


 すなわち、海上保安庁並びに海上自衛隊のプロジェクトUへの協力である。


 海上保安庁については、外洋向きの大型巡視船が少ない上に、昨今『何かと忙しい』故に常時とは行かないものの、海洋気象情報収集の相互協力や有事支援が約束された。


 自衛隊の行動には、武力攻撃に対する防衛出動や、海上における警備行動、地震や風水害から国民を守る災害派遣など、法に基づいた様々な種類がある。


 だが、自衛隊は有事にばかり出動しているわけではなかった。


 そのうちの一つに、民生支援活動というものがある。


 警察、自治体などから要請を受けた不発弾処理もこれに含まれるが、離島からの緊急患者搬送、音楽隊の訪問、地方公共団体からの要請を受けた行事への部隊参加など、文化活動も多い。


 専門委員による検討の結果、水産資源保護への協力は民生支援活動に当たると、与党は判断した。


 いわゆる、国民の皆様に愛される活動の一環である。


 世論誘導と国会での駆け引きに失敗した野党連合は、更なる話題炎上による与党の失策引き出しを狙い、『武装組織』を『出撃』させるなど言語道断とネガティブキャンペーンを行った。


 しかし折悪く、何某党主の国籍問題に絡む母国の指示書が週刊誌にすっぱ抜かれたり、デモ隊のプラカードの裏にシュプレヒコール用だと思われる異国の文字が書かれていたことをSNSに流されれたりと、これは失敗に終わっている。


 国会外での駆け引きは、何も投入された工作資金や工作員の人数だけで決まるわけではないのだ。


 支持層の厚さと支持者の熱意とは往々にして乖離していたし、『ウナギを食卓に戻す為に協力する』という表看板の健全性は、政治信条の発露による賛成反対よりも分かり易い。


 日本人がウナギを食べられない方が『お得』な人々は確かに存在するが、食べられる方がいい人々の方が、日本国内にはより多く存在するのだ。




 ▽▽▽




 漂流六十七日目。


「豊昭くん、ミルクとって」

「はい。……あ、慶子さん、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)の方、出ました。問題なしです」

「了解、こっちに回して」


 豊昭と慶子は、モニタールームが主な仕事場だった。シフトによっても異なるが、一日八回行われる特殊養殖水槽の水質点検とレプトケファルスの行動観察、そのうちの二回から四回は彼らの担当である。

 一番大事な仕事は緊急時の対応なので、今はモニターを切り替えながら、インスタントコーヒーを手に持って雑談に興じていた。


 定置モニターには各種水槽のほんの一部しか映らないが、有線水中ドローンも各水槽に配置され、自由な観察が行える。


 このドローンはプロジェクトU技術チームによる開発で、レプトケファルスを傷つけないように推進部が特殊な構造になっていた。

 主動力は一般的な電気式モーターだが、回転力を往復運動に変換、魚のヒレのようなシリコン素材をゆっくりぱたぱたと動かして推進する。


 推進力が弱い上に軽量とあって海中ではほぼ使えないが、有線故に情報通信量の大きな高精細カメラのリアルタイム映像を観測室で受信できる強みもあり、他魚種の幼魚水槽でも有効に使えそうだとウナギ研究者以外にも好評であった。


「はあ、最初の頃はフィルターの目詰まりや水温管理に右往左往してたのに、ここのところは順調だねー」

「ですねえ。……生け簀がタンカーになるとは、思いませんでしたけどね」

「ましてや、職場になるなんて、って?」

「……それはもう、聞いた瞬間に諦めましたよ」


 くすりと笑って顔を見合わせたところで、スピーカーが無粋にも、がりっと入力音を立てた。


『船長より全乗組員へ、緊急! 不審な船舶が接近しつつあります! 本船は主機関を始動、離脱を試みます!』


『こちら研究本部! 全ての実験を一時中断、水槽の維持を優先! 各部署の担当者はデータを退避してくれ!』


 思わず二人、鏡合わせのようにごくんと息を呑む。


「急ぎましょ!」

「はい!」


 コントロールルームにいるウナギ先生の指示だろう、水槽の状態が素速く船内閉鎖系に切り替わるのを確認する。


「俺、こっちのPCからやります! 慶子さんはドローンを!」

「おっけ!」


 豊昭は、『Emergency U』と書かれたボックスを開いた。

 訓練でやらされたきりだが、指定された――赤丸のシールがついた外付けHDDを外し、ボックスに突っ込んで固定するだけの簡単なお仕事である。


 同じ仕事は他の部署でも行われているだろうが、あきつしまⅣの沈没までを考慮した対応だった。

 ちなみにこのボックス、防水はもちろん、耐圧耐衝撃に優れている上に浮力を持たされており、甲板に上げておけば浮き輪の代用品にもなる。


「ああもう、じれったい!」


 慶子はモニターを睨みつつ、複数のドローンを操作、特殊養殖水槽の船内水系へと繋がるバルブの目視確認を担当していた。


 複数機を切り替えながら命令を下すのは、日々のモニタリング作業で慣れている。


 だが、有線水中ドローンは構造上、足がとても遅いのだ。






 一方ブリッジでは、船長以下の運航要員が不審な船への対応に追われていた。


 基本は漂流するあきつしまⅣだが、補助機関によって推進機以外の全て、例えばレーダーなどは常時稼働させている。


「左舷十時方向、距離、七海里! 速力二十二ノット変わらず」

「国際VHF、依然応答なし」


 レーダーの探知距離は天候や波浪の影響も受けるが、設置された位置の影響も大きい。


 六千トンの海水を飲み込んでいる現在なら、送受信部の設置されたブリッジ最頂部の高さは約三十メートル、最低でも水平線までの約二十キロメートル――十海里ほどは探知できる。


 相手の船が大きければ一般的に背も高くなるから探知距離は伸びるが、絶対とは言えない。


「主機はどうか?」

「主機、安定まで一分三十秒」


 冷静に対処しつつも、不安が拭えない。


 主機のディーゼルエンジンは、大きいだけあって始動にもかなりの時間を要した。


 あきつしまⅣの最大速度は約十六ノットであり、いずれ追いつかれるが、接触までの時間は稼げるだろう。


 そもそも、民間船舶で二十二ノットが出せる船には、それぞれ理由がある。


 大きな出力を誇るエンジンは当然ながら高価であり、建造価格に跳ね返った。


 速度がステータスにもなり得るクルーズ客船、高速大量輸送を売り物にする大型高速コンテナ船、漁場を駆け回る速度が漁獲量に関わる漁船など、相応の理由がなければ、経済性を優先するからだ。


「ドローン班、どうです?」

「映像を見る限り……船長の仰るとおりで、間違いないでしょうね」


 運航要員ではないが、特に呼ばれてブリッジで仕事に励む海洋観測班は、船長を振り返って口をへの字に曲げた。


 中央のモニターに、海洋観測ドローンから送られた映像が映し出される。


 鋭角な船体は濃緑に塗られ、中央にはゴシック体で、大きくPisum sativumと書かれていた。


 過激なことで知られる環境保護団体、その名である。


 前方に突き出た船首は如何にも未来的で、某国の最新鋭ミサイル駆逐艦を思わせた。


 こちらもウナギという海産資源を保護する活動を行っているのだが、それが気にくわないらしい。

 彼らの言い分としては、ここまでウナギを減らした日本人にウナギを食う資格なし、代わりに牛肉を食えとのことだが、それにつきあってやる義理はなかった。


「艦橋頂部のレーダーの大きさなどから見て、一千トン内外ってところか?」

「ズムウォルト級の真似っこですかね? 一尉はどう思います?」

「波浪貫通型の船首……と思わせておいて、衝角(ラム)ってあたりかな」

「十九世紀じゃあるまいし、とは言えませんねえ。突撃なんてされちゃ、たまりませんよ」


 船長が、ため息を飲み込んで背後の二人を振り返る。


 先ほど、無線を借りにきた海上自衛官達だ。

 皆に聞かせる為なのか、場違いなほどに落ち着いたやり取りがこの場ではありがたい。


「お二方からは、何かありますか? 無線以外も、必要とあらばご用意できますが……」

「はっ、ありがとうございます。我々の使命、理念、任務は、突き詰めてしまえば、国民の皆様を守ること、これに尽きます。……可能でありましたら、万が一に備え、左舷側の人員の退避を、早めに行うべきかと具申いたします」

「ありがとうございます。おい、当直以外はそちらに当たれ。放送!」

「はいっ! 『緊急! 左舷側にいる乗員は、直ちに右舷または上層に避難して下さい』」

「三尉、行ってくれ。うちの連中にも協力させるんだ」

「了解!」


 勢い良く敬礼した三尉を含め、数名が駆け出すと、船長は帽子をあみだ(・・・)にかぶり直した。


「副長、アレに突っ込まれて、本船はどのぐらい耐えられるかな?」

「どうでしょうね。空荷のタンカーは、相当沈みにくいと言われてますが……」

「……ああ、聞いた覚えがあるな」


 過去、火災が起きたLPGタンカーを、海上自衛隊が撃沈処分した例がある。


 この事故からは様々な教訓がもたらされたが、水密区画の多いタンカーというものは貨物船に比べてとても沈みにくいと、一般にも知られていた。空のタンクが、そのまま浮力源になってしまうのである。


「不審船、更に接近! 距離五海里」

「船長、緊急!」

「どうした!?」

「不審船後方に、新たな船! 距離十二海里、速度、二十ノット以上!」

「ドローン、向かわせます!」

「頼みます!」


 海洋観測ドローンは市販品の改造機で、最大約八十キロ毎時のスピードを誇る。


 すぐに映像が出た。


 ……一隻目と似たような船である。やはり、あきつしまⅣを目指していた。


「畜生、二隻目か!」

「主機、定格安定!」

「よろしい、微速前進!」

「微速前進、よーそろー!」


 大きな船体を持つあきつしまⅣは、船体の抵抗が大きすぎて急激な加速が出来ない。

 停止状態から全力でスクリューを回転させれば、スクリュー羽根の限界を越えてしまうのだ。


 自衛隊の護衛艦のように、急激な加速減速も仕事のうちなら、高価な特殊鋼材をたっぷり使った専用設計のスクリューを装備することも可能だが、民間船では経済速力時にもっとも高効率を発揮するスクリューを使用する。


「前方十二時、正面に別の船影! 距離……十八海里!」

「十八で見えるとなると、かなりの大型だな。速度は?」

「速度……は!? さ、三十四ノット!」

「三十四!?」


 船長は、思わず背後の一尉を振り返った。


 大型船で三十四ノットなど……それこそ、種類が限られ過ぎている。


「前方船より通信! ……え、海上自衛隊? 護衛艦『あそ』!?」

「どうやら、間に合ったようですね」

「え、ええ……」


 マニアではない船長も、流石に最新鋭イージス艦の名前ぐらいは知っている。


 距離が遠すぎてあきつしまⅣからでは分からなかったが、この時護衛艦あそは、発光信号を点灯していた。




(ワレ)遣鰻(けんまん)艦隊。遅レテスマヌ』




 知ったからとどうなるわけではないが、後続の護衛艦も同様の発光信号を点灯していたという話を、後から聞かされたあきつしまⅣだった。

 乗組員の士気向上に必要だったらしいが、それで感謝の気持ちが揺らぐわけではない。


 護衛艦に割り込まれては、流石に分が悪いと見たのだろう。Pisum sativumの船は、百八十度回頭して引き返す航路を取った。


 護衛艦からはヘリが飛び立ち、しばらく追いかけたようだが、すぐに撤収している。


 様子を見つつ、護衛艦との通信に時間を割いた船長は、主機関を回したまま船内に事情を説明、緊急事態の解除を宣言した。


「えーっと、助かったみたいですね……」

「日本近海でもないのに、どうやって助けてくれたのかしら?」


 モニタールームでは、豊昭と慶子がほっとした顔で首を捻っていたが、最新鋭のイージス艦四隻などというとんでもなく贅沢な護衛が間に合った理由は、簡単である。




 最初から、『間に合わせていた』のだ。




 海上自衛隊の総司令部たる海上幕僚監部は、通常であれば日本近海の各海域で分散して行われる訓練をマリアナに比較的近い硫黄島近海の訓練海域に集中、常時数隻の艦艇を遊弋(ゆうよく)させていた。


 多少燃費は悪くなり、艦艇のやりくりは面倒になるかもしれないが、警察庁や公安調査庁からの『お知らせ』は無視できない。


 Pisum sativumのキャンペーン船……という触れ込みのテロリズム活動船の出航情報を確認した後の対応は、正に神速だった。


 情報収集衛星のみならず虎の子の早期警戒管制機まで動員されたが、その結果、訓練を中止した護衛艦群は、余裕を持って当該海域に先回り出来たのである。




 ▽▽▽




 サイパン島を出航して百九十七日目。


 その後はPisum sativum『他』の悪意ある接触もなく、あきつしまⅣは順調な漂流を続け、フィリピン近海に到達していた。


 台風の回避や、漂流位置を補正するため、幾度か主機関を作動させたが、特筆するような事件や事故はない。


 レプトケファルスも順調に成長を続け、特殊養殖水槽での生存率は概算で約六十パーセントと、小型の実験水槽を超える結果を見せていた。

 ごく一部ながら、無事にシラスウナギへと変態した個体も観察されており、研究者一同の顔も明るい。


 特殊養殖水槽が高い生存率を示した要因は、やはり巨大水槽と餌の質、この二点だろうと結論づけられている。


 外敵のいない環境下、餌が潤沢であれば必ず成功する……というものではないが、元より水研の実験水槽内で世代を重ねられていたのだ。

 プロジェクトUという支援があればこそだが、その規模が大きくなっただけと言い換えることもできた。


「第一次放流、いよいよですね!」

「ああ、本当に長かった……!」


 潜水服を着た研究者がそれぞれ特殊養殖水槽に潜り、外海に繋がるフィルターと水流低減を目的とした整流板を外していく。


 自動制御の機械式にしなかった理由は、レプトケファルスの泳力で巻き込まれると、取り返しがつかないからである。


 その放流だが、こちらも工夫が重ねられていた。


 デッキ上で折り畳まれていた長尺のパイプが、海水面にゆっくりと下ろされていく。


 放流時の衝撃でレプトケファルスが傷つくことがないように、排水パイプは長さを大きく取り、流速も極めて遅くなるように設計されていた。


「さあ、やってくれ!」

「放流、開始!」


 漂流も既に半年以上、少しぐらいの時間は、掛かってもいいのだ。


 フィリピン沖での放流開始には、当初反対意見もあった。


 だが、成長したレプトケファルスの食欲とマリンスノー採取量のバランスから、放流して水槽内の飼育数を減らさなければ、最終的には餌不足になってしまう。


 放流は即ち、特殊養殖水槽を使ったレプトケファルス~シラスウナギ養殖の成功を意味し、同時にプロジェクトUが資源独占を狙うものではないと、世界にアピールする狙いもあった。






 その後もあきつしまⅣは台湾沖、石垣、沖縄と順調に漂流を続けつつ、概算で二トン、約一千二百万匹の放流に成功した。


 これには小型実験水槽で養殖されたレプトケファルスも含まれていたが、プロジェクトUの事業全体から見れば、経緯は異なるものの、どちらも成功の証と言える。


 反省点も多かったし、第二次航海に向けた改良点の見直しもこれからだ。

 投資に見合う効果があったのかは、数年、いや、数十年経緯を見守らなければ判断できない。


 しかし、プロジェクトUは、成功と言えるだろう。


 少なくとも、当初の目的であるウナギの完全養殖までのツナギ、その為のシラスウナギ放流は達成していた。


「ほら、東京湾だよ、豊昭くん!」

「帰ってきましたねえ」


 出航した日と似たような、晴天に恵まれたその日。


「あ、護衛艦だ」

「お迎えに来てくれたのかしら?」


 十一ヶ月半にも及ぶ航海、その最後。


 護衛艦あそのエスコートを受けつつ、あきつしまⅣは無事東京湾へと戻った。




 ▽▽▽




 十年後の、とある日。


「この角を曲がった先ね」

「うん」


 豊昭は妻から娘を受け取りつつ、小さく笑みを浮かべた。


「おとーさん、どこにいくの?」

「鰻のお店だよ。今日は、パパとママの結婚記念日だからね」

「あ、あれだわ」


 妻の慶子が指さした先、路地の奥に、如何にも昔ながらの老舗という風情の鰻屋が暖簾を掲げていた。


「ま、つ……なんてよむの?」

「え、真理子(まりこ)、もうひらがな読めるの!?」

「よめるよ!」

「うちの真理子は天才か!? やっぱり慶子そっくりだからかな……」


 衝撃の事実が、豊昭を襲う。


 自分が三歳の頃なんてとても覚えていないが、絵本を読めたような覚えはない。


「あなた、真理子はもうすぐ三歳なんだから、絵本ぐらい読むわよ」

「そ、そうか……」


 慶子は呆れた様子で、豊昭の親ばかを斬って捨てた。






 あの航海から十年。


 あきつしまⅣは五度の研究航海を成功させたが、現在では海洋総合博物館として、川崎に新設された秋津島ミュージアムに係留されている。


 プロジェクトUは目的を達して解散したが、タンカーへと復帰させるには船齢がネックとなった。


 だが、船の一生としては幸運な部類だろう。

 補助機関を持っていたことも、その運命に大きく影響していた。




 事の発端であるプロジェクトUは、天然ウナギ資源の回復を試みつつ、完全養殖技術の確立へと徐々に比率をシフトしていった。


 商業完全養殖への道のりは大変に険しかったが、プロジェクトUと水研の合同チームは新たに海洋微生物養殖技術の研究を行い、ほぼマリンスノーと言えるレプトケファルス成長用の微生物由来ミールを安価に生産する技術の開発に成功、コスト面で大きく前進した。


 これが三年前のことで、シラスウナギの安定供給が可能になったのが一昨年である。

 多少高いながらも、完全養殖ウナギは去年から出回りはじめた。


 皆、驚喜乱舞した。


『ウナギが食いたきゃ金を出せ!』


 出せばウナギが食える時代が、またやってきたのだ。


 来年には値段も落ち着き、数年後には庶民の味に返り咲くだろうと言われていたが、それでも皆、うな重を、白焼きを、ひつまぶしを食べた。


 そしてようやく、今年。

 ワシントン条約の絶滅危惧種から外されたことを受け、日本政府はニホンウナギの漁獲割り当てをゼロから二トン――往時の数十分の一ながら、ゼロではない――に戻していた。


 つまり。


 国産天然ウナギ漁の解禁である。






 まつ風の暖簾をくぐった豊昭達は、カウンターで鰻重をかきこむ老人とそれを楽しげな表情で見守る店主を見つけた。


「へい、らっしゃい!」

「ひいおじいちゃん!」

「ん? おお、真理子か!」


 箸を置いて曾孫に向き直る豊国に、豊昭と慶子は微笑んだ。


「あのね、まりこ、うなぎたべるの!」

「そうかそうか!!」

「うなぎっておいしい?」

「おう!」


 ここのウナギは特別に美味しいんだぞと、豊国が大きく笑う。


 まつ風は二ヶ月ほど前に再開業し、予約制ながら客を受け入れていた。


 豊国は幾度も訪れていたが、豊昭は仕事も忙しく、すぐに駆けつけることは出来なかった。

 結婚記念日という理由を表に立てて有休を取り、今日のまつ風訪問に至ったのである。




『ウナギが食いたきゃ金を出せ!』




 この人が本当にお金を出す決断をしたから、俺も家族とウナギが食べられるんだよなあと、豊昭は改めて祖父を見やった。


 いや、その決断がなければ、プロジェクトUに参加することもなく、慶子と出会うこともなかったはずで……。


 得られたものはウナギだけではないのだと、頭を下げる。


 豊昭は口に出さず、心の中で呟いた。




 爺ちゃん、十年の歳月と総費用百八十五億円を掛けたウナギの味は、やっぱり最高ですか?



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― 新着の感想 ―
[一言] 全く持ってタイトル通り。ウナギが食いたきゃ金を出せ!ですよ。 安価で提供されればされる程、資源枯渇は加速します。牛丼チェーンやファミレスのメニューに鰻が無くても良いじゃないですか。 昔、実家…
[一言] 単に食い過ぎなだけなんですよねえ。 鰻なんて生命力の強い生き物なんだから禁漁してほっとけばまた増えます。 パッセンジャーピジョンの愚行の二の舞を踏もうとしているのが現状です。 ずっと食うな…
[良い点] ウナギ食いてぇが壮大な話になってること。 [一言] 金持ち怖ぇぇぇぇwww
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