Act.4
──程なくして、チューチューランドの最寄り駅に到着した。後はもう、この駅を降りれば間近にチューチューランドのアトラクションが見えてくる。
だが駅に着いた早々、楽に歩かせてはくれない。なぜなら……
「ちょっとバカ彩!兄ィにくっつきすぎよ!離れなさい!」
「嫌だ!私が最初にお兄ちゃんと手繋ぐんだもん!」
「そんなの誰が決めたのよ!大体、兄ィはあんただけのもんじゃないのよ。兄ィの独り占めは例え彩でも許さないから!」
電車を降りてすぐ、2人は人目も憚らず、どちらが俺と手を繋ぐかで言い争っていた。歩きながら大声で言い争っているためか、周りの目か痛い……
2人とも手を離してくれたのはいいが、今度は歩きながら言い争っている。…器用なもんだ。
「……ほんと、仲良いよね。羨ましいよ」
「まあな。ほとんど4人で暮らして来たようなもんだし。でも…だからと言っていい事ばかりじゃないぞ」
「どういうこと?」
「例えばちょっとでも帰りが遅くなったりする。そうすると、どこに行ってたの、とか何で遅くなったの、とか根掘り葉掘り聞かれたりとかするんだよ」
「あ~、それはもうなんというか…よくあるやつだね…」
「よくないだろ…」
彩と恵の2人は言い争っている為に俺と琴音が話しているのに気が付かなかったようだが、楓はそれを見逃さなかった。
「兄様、琴音さんと何を話しているのですか」
「楓ちゃんたちと拓也って仲いいよね~って話してたの」
「琴音さんはちょっと黙ってて下さい。私は今兄様と話しているんです」
「えー、いいじゃんちょっとぐらい。幼馴染なんだし」
「…この小悪魔女……」
「え?何?小悪魔?もしかして私褒められた?」
「どこをどう聞いたら褒められたって思うんだよ…」
「でも私、小悪魔っぽいってよく言われるよ?」
「そういう意味じゃないと思うんだが…」
「…話す気が失せました。それより、あのバカ2人は頭もバカなんですかね?普通は周りの目が気になるでしょうに。……気にならないんですかね」
「楓、そこまで言わなくても」
「大体、兄様も兄様です。普通にこんな場所で姉妹喧嘩などされたら周りの人に迷惑がかかるのに。どうして止めないんですか?」
「す、すまん……」
「とにかく、大声で喧嘩してると周りの人に迷惑なので、止めてくださいね」
「お、おう……」
俺は彩と恵の2人を説得してなんとか喧嘩は収まったが、2人ともばつの悪そうな顔をしていた。




