見かけ上の上面の上に
メモ書き小説06より
絶対に盾を破る矛と絶対に破れない盾がある。
ではもしも、その矛でその盾を突いたらどうなるのか?
この試行の結果は誰もの想像の中である。
もしこれを唱えた商人であるのなら、
その場から逃げ去るしかないだろう。
実に滑稽な話だろう。
商人は試行の結果を恐れたのだ。
良い結末は訪れないのだから。
故に試行は行われない。
その結果は空想の中にのみ存在する。
行われない試行は結果を確定されない。
矛盾は証明されないのだ。
その目に映らないものは認識できないし、
起こらない出来事は観測できない。
人はそうであるように。
俺も何でもは知ることはできない。
教室で行われている。
この瞬間の授業は一つ。
全く差異のない光景は絶対にない。
この世は、ないない尽くしってわけだ。
あれもない、それもない、これもない。
しかし確かに存在するものもある。
日が落ち始め、椅子に腰掛ける自分の影に目を落とす。
「…………帰るか」
光が触れれば、影が落ちるように。
何かがあり、故にそこにあるものがある。
あれもあるかも知れない。
それもあるかも知れない。
これもあるかも知れない。
俺がそれを見つけられたのなら、事が起こる。
学校にはクラスがあり、教室があり、机があり、椅子がある。
あれがあり、そこにあり、ここにある。
"ある"と"ない"は裏返しだ。
ひょっこり扉の影から顔が見えた。
「やっと帰り?」
「何故いる?」
ぴたりとすぐ隣に張り付いたように歩く彼女。
それはそこにある存在だ。
紙の上に書かれた幻想は現実だ。
「いつもいるよ?」
笑顔という現実を裏から見ることができたなら
どれほどこの世は生きやすいか。
見慣れない笑顔を隣に置いて
気にしないように彼は歩き出す。
その可愛い笑顔を横目に見ながら。




