凍える春の朝
メモ書き小説02より
ある朝に産まれた瞬間の子鹿のように震える。
凍えそうな身体を差し込む朝日が優しく照らす。
この肌寒い日に暖房が勝手に切れていたようだ。
春先の寒さは冬のそれに匹敵する日がたまにある。
まさに今日だが、暖房の自動でオフになる設定を切り忘れたことで、よりその寒さを実感する結果となった。
さっき急いでつけた暖房の効果はまだ少しだが、いつも通り学校に行く準備をする。
前日にやっておくという習慣はない。
俺の物語は今日、今この時からだ。
寒いし明日からにしようとか思ってないぞ!
こういうのは思い立った日に始めた方がいいんだ。
思いついたのは正確には昨日だとか細かいことは置いといて。
リビングでキンキンに冷えたゼリーを朝飯にする。
とても冷たい、がこれはこれで好きでもある。
「行ってきます」玄関を出る前、振り返って言う。
誰もいない玄関先に自分の声が響くを感じながら、外に出て空を見上げる。
寒い朝の日は、空が澄んで綺麗だ。
陽射しが視界に入って邪魔なくらいに。
何も始まらないのなら、自分がすれば良いのだ。
その逆もまた然り。別に頑張る必要はない。
だから俺の物語は、こんな端書きから筆を進めることにしよう。
寒々とした冬のような春の空を下に一人の男は決意した。
今ここから全てを辞めることにする。
俺は俺のため、俺だけに生きる。
ここから始める物語は、そんな彼の物語だ。