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寒慄せし彼らは寒明けの春を待つ

メモ書き小説18より

冬が続けば春に期待する。


始まりには季節の寒さを感じ、

しばらくして寒さが苦痛になり、

そして次の季節に期待が高まる。


小雪を楽しめる者が、

ずっと冬を楽しめるとは限らない。


そんな者が居たなら、

きっと冬が好きなのだろう。


ひんやりと冷たい空気が、

肌をそっとなであげながら、

そのまま勢いで通り過ぎる。


冬至から始まり、

小寒に冬を感じながら、

大寒に冬を疎ましく思い、

次の春の温かな心地に願いを馳せる。


春に始まった教室は、

この寒い冬時になっても、

その姿を全く変えることなく、

今も目の前に存在している。


変わったことは冬の寒さ、

それに暖かそうな冬服になった彼女だけか。


俺にとって、

ごく当たり前に、

あるものはそれだけしかない。


彼にとって、その他は他愛もないものだ。


寒さに思わず体を震わせ、

凍えるような空気に鳥肌を立て、

風が吹くたびに恐ろしささえ覚え、

雪がチラつく通学路を歩いてきた。


そんな思いをしてまで、

ここに来る理由はそれだけなのだ。


「どうしたの?」


じっと見ていたようで、

彼女が不思議そうな顔をして、

何故か少し嬉しそうな様子で問う。


「寒いな、と思って」


そうだね、という答えを聞かず、

彼がわざとらしく視線を泳がせる。


恥ずかしげな彼を見て、

私は可愛い反応に嬉しくなって、

ほんのりと顔を綻ばせているのかも知れない。




もっとも寒い時期が終わって、

春の雰囲気が少しずつ顔を見せ始める。


春夏秋冬を巡る彼と彼女、

その物語はもうすぐ一巡し、

また春に始まる時を待っている。


人は等しく長く続いた季節を見限り、

次に訪れる別の季節に期待するものである。


春が過ぎ去り、夏が訪れて、

夏が陰り始め、秋が始まり、

秋が色を落し、冬が蠢いく。


人はいつも季節に色を見て期待する。


立春を待つ彼らは寒明けの日を待つ。

期待に胸を少しだけ踊らせながら、待っている。


その日は二人の静かな希望の日なのだから。

メモ書き小説19へ続く。

挿絵(By みてみん)

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