一陽来復の理を彼に
メモ書き小説17より
小さな悪い事はよく起こる。
探し物が見つからなかったり、
曲がり角に小指をぶつけたり、
授業中に先生に指名されたりと。
ちょっとしたことは多くあり、
故にそれは少しずつ積み重なっていく。
秋の中に、
冬の雰囲気が漂い始め、
寒さが人を冷静にさせていく。
冷静になってしまえば、
よく悪い事に気づいてしまう。
一度でも見えてしまえば、
同じようなものはいくらでもある。
気にせずとも、
見つけることになってしまう。
悪い事が続いているように感じるのだ。
誰しもそんな時期があり、
暗い気分を持つことになる。
それは
一人の人間が、
溜め息多く過ごす、
生きる時間のほんの一部。
とても長く感じる、
過ぎ去って欲しい時間。
今、彼は彼の人生で、
そういう時間の中にいる。
溜め息混じりに、
教室で一人の時間を、
物足りなく思って、
泳ぐ視線は彼女を探す。
朝の時間も、
彼女がいなければ、
もうそれは足りない時間なのだ。
「…………」
彼女が学校を、
三日も休むことは、
今までにはなかった。
然る人に聞くと、
病気などではないらしい。
そして彼は、
また空を見上げる。
雲が残る、しかし青い空に。
悪戯っ子な心で、
静かに後ろに立っている少女。
彼が微笑む彼女に気づき、
その心の空にある雲を晴らすのは、
そう遠くないのことに未来になるのだろう。
新年にはまだ遠く、
冬はまだ終わらないし、
まだ始まってさえいない。
悪い事が続けば、
じきに良い方へ向かうものだ。
ただ今は、
一陽来復を願うばかりであり。